紙の本
期待はずれ
2022/08/11 20:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:てく - この投稿者のレビュー一覧を見る
人口と経済の関係性についての骨格と大筋については理解できるが個別の章の論理構成がめちゃくちゃで(訳の問題?)何故そうなるのかどうしてそういう帰結になるのかの説明不足。スッと落ちる理解にならない内容で読んでて不愉快になりました。とても研究者とは思えない文章。
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第1章 イントロダクション
第2章 中国:歴史的動員の終焉
第3章 人口構成の大逆転と将来の成長に対する影響
第4章 依存、認知症、そしてやってくる介護危機
第5章 インフレの再来
第6章 人口大逆転における(実質)金利の決定
第7章 不平等とポピュリズムの台頭
第8章 フィリップス曲線
第9章 「それはなぜ日本で起こっていないのか?」:修正論者による日本の変容の歴史
第10章 世界的な高齢化を相殺できるのは何か? インドとアフリカ、労働参加、そして自動化
第11章 債務の罠:回避することはできるのか?
第12章 デット・ファイナンスからエクイティ・ファイナンスへの方向転換
第13章 将来の政策課題:高齢化と課税、金融・財政政策の衝突
第14章 主流派の見方に抗して
追記:新型コロナウイルス後に加速してやってくる理想的ではない未来
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人口構成とグローバル化の大逆転が、インフレを引き起こす。
未熟練労働者の増加で実質賃金が低下したこと、労働組合組織率の低下で交渉力が低下したこと、によってデフレ圧力が強く働いた。
出生率の低下で、労働力はひっ迫、高齢者介護が増える、グローバル化の減速、などで厳しい時代がやってくる。
デフレ傾向からインフレへ、名目金利の上昇、不平等は改善される。
フィリップス曲線はフラットになったように見える。
労働者の交渉力が低いほど自然失業率も低下する。
債務の罠=債務比率が高いため金利上昇を引き上げられない。
中国の労働力が減少する。高齢化で貯蓄が低下する。自国のイノベーションが起きないと生産性が向上しない。
人口構成が逆転する。すでに65歳までの労働参加率は高いので、その上昇で生産人口減を補えない。年率1%程度に落ち込む。
依存人口の増加、認知症の増加、介護危機。依存人口の増加はインフレ圧力になる。賃金が落ち着いているのは、自然失業率の低下によるもの。民間部門が赤字になるが政府部門が黒字にはできない。その結果、インフレで解決するしかなくなる。
民間部門は省力化投資のため赤字になる。
成長率が低下する中で、実質金利を低く維持できるか。家計部門は寿命と退職年齢のギャップで貯蓄が減る。巨大な人口を抱える中国で顕著になる。
公的部門の赤字も続くとすると、実質金利が上昇することになる。
短期金利は采配できるが長期金利は上昇する。
日本の逆現象の理由は、世界の労働需給が緩和していたから。生産性は上がっていたため物価が上昇しなかった。国内投資は海外での旺盛な投資に変わった。すでに65歳以上の高齢者の労働参加率は25%近くで、OECD諸国ではトップクラス。
日本の労働人口の減少は、世界という出口を持っていた。
世界的な高齢化は、インドとアフリカの労働人口増がカギを握る。自動化投資が期待できるが、投資は金利上昇に結び付く。
債務の罠から脱出する方法=家計は住宅投資の減少によって。公的部門は増税によって。
経済成長によるものが一番好ましい。インフレによって債務解消を図る。債務契約の再交渉=長期化、エクイティファイナンス化。債務不履行、債務恩赦祝典、など。
デッドファイナンスからエクイティファイナンスへ転換する。住宅ローンをLTV比率の住宅ローンに変える。学生ローンを学生のエクイティに基づくものに変える。
国境税=仕向け地向けの付加価値税=財サービスの最終消費地の企業に課税する。
企業経営者の短期的インセンティブを改革する。内部者と外部者に分けて、内部者への報酬を連帯責任とする。
法人税の基礎改革、土地課税、炭素税、仕向け地主義キャッシュフロー課税、などで増税が必要。
マネタリストとケインジアンの対立。インフレは貨幣的現象であればなぜインフレ目標が達成できないのか。
家計貯蓄の未来について悲観的である。労働力の減少が投資の減少を招くのではなく投資を必要とする。
コロナによって引き起��されたインフレは、それまでの30年間のデフレ時代と今後20年間のインフレとの境界線になる。
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興味深いものの経済理論の基礎知識のないものには難解です。翻訳は良くない。文意はわかるが、専門用語の和訳を繋いでいるだけの、専門書の翻訳書レベル。また図が原書でカラーなのをグレースケールにしていて、グラフが判読困難で難解。
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12767289525.html
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高齢化がインフレ、実質金利も上昇させる上昇させという事象がなぜ日本で起こっていないのか、世界に先駆けて高齢化社会に突入し、労働力を海外から調達することができたという、グローバルな視点で結論を導いている点が興味深かった。
各種のグラフが提示され興味深いのだが、モノトーンだと読み取りづらく、残念であった。
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かなり重要な事が書かれているが、いかんせん文章が読みづらいし、表やグラフも見づらい。原著自体がそうなのかもしれないが翻訳にもっと工夫を加える等して一般人にも読みやすい内容にしてくれたら良かったのにと思った。
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過去30年間の世界経済をグローバル化と人口構造の視点から分析し、今後中国を含めた多くの国々で高齢化が進むことで、世界の経済トレンドが低成長・インフレ・高金利へとシフトすることを予測する経済書。
著者は、中国の安価で豊富な労働力がグローバル経済に組み込まれるとともに、世界各国の労働人口割合が高かったことが、過去30年における世界的な経済成長と国家間の不平等の縮小だけでなく、デフレ傾向や低金利といった「理想的な経済状況」が維持された要因でもあり、その状況は、先進国の中でいち早く高齢化と低成長の時代に入った日本においても、終身雇用という特殊な労働慣行と相まって維持されてきたのだと分析する。
その上で、今後は中国を含めた多くの国々で高齢化が進む一方、インドやアフリカ諸国はかつての中国と同じ役割を担うことは難しく、各国でイノベーションによる生産性向上を相殺する医療費コストの増加や高齢世帯の貯蓄率の低下、労働人口の減少に伴う賃金上昇圧力などにより、世界経済のトレンドはインフレ・高金利に転換すると予測し、著者はその対処策として新たな土地課税や炭素税の導入、デット・ファイナンスからエクイティ・ファイナンスへの転換などを提言する。
章によって門外漢にはやや難解な経済専門用語が多く理解に苦労するが、そういうところは読み飛ばしたとしても(最悪の場合、イントロダクションと訳者によるあとがきだけでも)、中長期的なマクロ経済環境の見通しを大まかに掴むという意味では、十分に読む価値のある一冊。
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https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/22/04/27/00132/
カラーのグラフが多用されているのにかかわらず白黒印刷であることに悪評ふんぷんですが、出版元がこちらにカラー図版をupしています
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原著の出版は2020年だが、原稿のほとんどはパンデミックより前に書かれたとのこと。ほとんど誰も高インフレがやってくるなど思っていなかった頃である。2020年時点でもパンデミックが引き起こしたインフレは一時的だと思われており、2023年にもなって欧米でこれだけ利上げしてなおインフレが高止まりしている状況を見通している人は少なかったろう。もちろんパンデミックがインフレに火をつけたのはたまたまだし、インフレがパンデミック・ウクライナ起因なのか構造的変化のせいかはわかりにくくなっているとも言えるが、本書が予言を当てたような格好になりつつある。
本書の命題は世界的な高齢化によりインフレが進むとの議論だが、いまのところ最大の反証と言える日本の例について、なぜ高齢化とデフレがこれまで同居してきたのか説明(デフレの輸入&労働参加率up)を与えている。
また本書は、これから来る高齢化・高インフレの時代への処方箋についても考えてくれている。債務の罠を逃れるためにデット・ファイナンス優勢からエクイティ・ファイナンス優勢の経済へ切り替えるべしとして、そのための具体的な税制(株式課税控除、仕向地主義キャッシュフロー課税)について書いているあたりは興味深く読ませてもらった。
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2023年24冊目。満足度★★★☆☆
今後、世界経済は過去のデフレからインフレに転換する。その原動力は、過去30年における豊富な若い労働力の時代から、今後は少子高齢化による労働力不足の時代へと世界経済が大転換するということ
これが本書の一番の結論でありコアのメッセージ。そして、我々は過去にあまりにも長いデフレの時代を経験してきたので、これに十分な備えが出来ていないと
第9章全てで日本について解説している箇所があり、ここが興味深い
なお、著者の一人はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)名誉教授
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人口動態を基に近い将来に始まるインフレを予測した本。
過去30年は日本に限らず世界的にデフレだったそう。これは中国の市場開放による生産増の影響が大きかった。一方で今後は世界的な少子高齢化により生産量<需要量となるため、物価高(インフレ)へ変化することを予想している。
本書の特徴として、論旨の一つ一つに向けられる反論に対し丁寧に回答を示す構成になっている。例えば、高齢化がすでに進んでいる日本で何故インフレになっていないのか?インドやアフリカ諸国などこれからも人口が増大する国々は中国の役割を担えないか?など。
経済や環境、技術など分野を問わず、将来の変化を予測することは非常に難しいと思う。しかし本書は過去現在のグローバルな環境を丁寧に分析し、説得性のある論拠を持って演繹的ではない将来の状況を予想しており、たいへん面白かったです。
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主題は説得力があった。あと、日本に対する分析も、巷で流布されているものとは異なり、新鮮だった。それ以外は、洋書特有の無駄に長い文章なので、何が言いたいのかだけ押さえてしまえばOK。100ページくらいにまとめられると思いますw
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人口大逆転、、、変な日本語だが、
要は人口ボーナスから人口オーナスへ転換した国で何が起こるか、
これを真っ先にその状況、すなわち高齢社会になった日本をモデルにして考察する、
というユニークな本。
本来高齢化社会になって労働人口が減ると、高金利、インフレが起こるはずだが、
日本はならなかった。
その理由はグローバル化にあったと解説。
日本は労働力を海外に求めた。現地生産という形で。
結果インフレはおこらず、日本自体が低賃金国になったのが現在。
日本もさることながら、中国もその入り口に来ていることに警鐘を鳴らしている。
それだけ世界経済における中国の影響が強くなったということだ。
この本はコロナ前、2019年に書かれている。
コロナ後にインフレが加速することまで予見していて、しっかりした本だ。
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「大逆転」といったタイトルでもあり、異説、新説のような雰囲気だが、読み始めると、これが王道だと感じるほどに説得力がある。主張をひと言で述べるならば、"人口構成とグローバル化が今後30年ほどインフレ圧力をもたらす”ということ。少子高齢化は、経済の衰退とデフレを齎すという論説への反論本である。・・・が、インターネットを検索すると「少子高齢化がインフレを齎す」という論説も多い。異説でも新説でもないし、そもそも説得力があるものだという事を少し残念にも思いながら、気を取り直して、その両端の考えを読み解いていく。
中国の台頭と東欧の世界貿易システムへの参加は、世界貿易における利用可能な労働力に、巨大な供給をもたらした。さらに先進国では、団塊の世代が労働力に加わったり、女性の労働市場への参加が増大したりという2つの変動要因が加わり、1991年から2018年の27年間に先進国の実効的な労働力の供給量は2倍以上も増えた。これにより、労働者が溢れ、交渉力が弱体化した。
端的に言うと、高齢化により労働者が減れば、交渉力が復活するという事。更に、商品は輸送できるが高齢者の介護のようなサービスは輸出できず、労働力の自国確保の必要性が増す。実証的にも、高齢化はインフレ圧力を生むことが知られている。また、グローバル化は、国際分業により世界的な格差を縮めたが、国内の不平等は数多くの国において拡大してきた。安価な国に製造業の生産が移り、労働者の競争相手がグローバル化されたためだ。
「では、なぜ日本が当てはまらないのか」本著の真髄はここから。
少子高齢化が顕著である日本が、デフレ下にあったのはなぜか。著者は幾つかの論点を挙げる。一つは、日本企業は国内の労働力不足を相殺するために、グローバルな労働供給を利用する行動をとった事。1987年から海外関連会社の数は5倍以上に増え、海外投資、海外生産比率共に長期に上昇傾向にあった。海外市場を開拓して安価な労働力を利用しようとすることで、結果的に国内のインフレ抑制に影響与えていたのだ。また、バブル崩壊に続く複数の銀行の倒産、アジア危機。これらの時期に失業が増加し、賃金が低下した。
もう一つ。日本の社会的価値の中で、雇用保障が最優先事項となっている。雇用者による解雇(雇い止め)は、非難の目で見られるものであり、不明誉で好ましくない行為である。そのような厳しい社会慣行のもとでは、他の国々と違い、経済の成長鈍化が失業率の上昇に伴わない事は、驚くべきことではないという。
日本だけ特有の理由と言われると確かにその通りだと思う。中国が隣国にあり、生産工場を移管した企業は多数あったし、日本に逆輸入するメーカーも存在した。こうした要因を無視して、これからの景気動向は語れない。読んで良かった。