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マイ癒しその③、と、軽率に書くことを少々躊躇う。
梨木さんのエッセイは、私にとって大きな安心である。乱雑にくくればやはり「癒し」が該当するのだが、よく一般に言われるような手軽なそれでは決してない。
機械や文明に頼りきりの人間たちによる想像などより、はるかに過酷な生きかたをしているいきものたち(そのことを、かれら自身は過酷とは思っていないだろうが)を思うと、背筋がいつしか、すっと伸びていることに気付く。また、自然の持つ要素から、ありがちな、安心やセラピー的なものだけではなく、険しさ厳しさも拾い出してくれていて、さらには人間(同じ人間に対してさえ、どこまでも非道になれるもの!)が環境を変異させていることをも語ってくれている。自然動物と絡められながらなされる表現に、過剰な擬人化は、私の見た限りでは感じられない。
それにしても、変異、つまり一部の人間の勝手を、自然(地球)は受容していくのだろうか。声の小さなものは、いつだって、耐えるか、抑圧されて消えるかしかできないのだろうか。暗澹たるというか、むしろ夜の砂漠に吹く風みたいなさみしい気持ちになってしまう。
さらにいうのであれば、気のせいだろうか。自然に密着しない、土と水から離れたものほど残酷になれるように思える。あたたかさのなかに厳しさを含む自然こそが、わたしたちの生かされている場所であるのに。
梨木さんのエッセイで息を吐くことができるのは、たぶん、かのじょが、きちんと自然の空気を吸ったうえで文章を綴っているからだろう。私はかのじょの文章に接したひとが、日々の生活にかき消されがちな小さな声を聞いてくれることを望み、また、声や警告を発することなど思い及びもせずほろびていく(私たちも含めて!)ことに注意を払ってくれはしないか、と願ってしまう。
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自分の庭に毎年来ているジョウビタキが、実はいつも同じ個体で、夏にはシベリアにいる、これを知ったときの感動、はい、わかります! 梨木香歩 著「渡りの足跡」、2013.3発行(文庫)です。「おつかれさま、よく来たね」心からそう思います(^-^)
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渡り鳥の実態や飛ぶルートをより詳しく紹介して考察する本かと思ったら、そこは学術本ではないが故にタッチしないことにされているのか、はたまた明らかになっていないのか「〜なのだろうか」という投げかけに終始している。本当の鳥のドラマを知りたかったんだけどなあ(だからこそ『コースを違える』のA33の話は淡々としていながらも心に残った)。
ご自身の著書含め他の本を引用して色々考察されていて、人の「渡り」という切り口は面白かったが、話があっちこっち飛んで、個人的にはあまり読みやすいタイプのエッセイではなかった。
背表紙の「この鳥が話してくれたら、それはきっと人間に負けないぐらいの冒険譚になるに違いない」、この文は本の紹介としてはすごくワクワクした。
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再読。梨木さんが渡り鳥を追いかけて綴ったエッセイ。カヌーに続き、梨木さんのパワフルな行動に驚かされた。たくさんの鳥の細やかな描写もすごいが、鳥を見つめる目がそのまま自分の内面に向かっていく道筋にも引き込まれる。私のぼんやりとした感想を解説の分析が隅々まで言語化してくれているので、これ以上書くことがない。
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これまた素晴らしい一冊だった。日本のネイチャーライティングの到達点とあった。
外部を、自然を探索することが、自らの内面を探る旅であるということが、渡り鳥の定位のメカニズムを通じて語られる。
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梨木さんのネイチャーライティング、エッセイ集。
渡りをする鳥たち、周りの自然。
とても深い知識に基づいたエッセイだけど文学的表現に富んだ、読み応えたっぷりの一冊。
「街の機嫌」
「ノーノーボーイ」
「存在」は移動し、変化していく。生きることは時空の移動であり、それは変容を意味する。それが「渡り」の本質だろう。
梨木さんの世界観に魅せられる、そんな一冊でした。
これも手元にずっと置いておき、また何度も読み返したいと思います。
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自然に造詣の深い著者が、渡り鳥を追って冬の北海道~カムチャツカ半島へ。渡り鳥だけではなく、自然と共に生きる遊牧民や戦中戦後に「渡り」として生きるしかなかった日系人についての考察も。
全体を通して、生真面目な梨木さんらしい一冊だと思いました。自然について、「渡り」について考えるいい機会になりました。