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ネイチャーライティング。
しっかりと根付いたものがなければ、渡ってはゆけない。生きることの厳しさ、だけれども超えてゆかねばならない道。
静かな中にも熱い火が点り、著者の伝えたいことが感情の波が押し寄せてくるようなエッセイ。なかなかに辛辣でまた違った一面を見る。
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渡り鳥や自然にまつわるエッセイ。
自然に分け入っていく楽しみが伝わってくる。
章の最後の丁寧な鳥の解説も、わくわくしながら読み入りました。
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渡りをする鳥たちの跡をおって、「案内人」の導きで北海道を歩く。
バードウォッチングの話かと思いきや、
それだけにとどまらない。
茸の話、戦争の話、それぞれの「案内人」に導かれ、その跡をおう。
広くて深い。
章のあとで、本文中に出てきた鳥について解説が書かれている。
それが、またいい。
「動物図鑑」にあるような学術的な無味乾燥な内容ではなくて、
観察をしている梨木香歩さんの個人的な思い入れも反映されています。
鳥にあまり関心がない人にとっては、とても分かりやすいし、
ほほえましい内容が、うれしい。
大好きな梨木香歩さんの作品です。
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梨木香歩のエッセイは難しいです。でもただ単に難しいのでなく、実に面白いんです。咀嚼するのに時間が掛かるだけ。それだけ読み応えのある1冊です。
渡り鳥の観察を通じて「渡るもの」たちへ想いを寄せる。単なる自然観察エッセイに留まらず、鳥たちの想いを想起し鳥たちへの畏敬の念と親近感を抱かせる。そして話は鳥たちに留まらず渡る(移民する)人々へも広がっていく。作者の観察眼が客観的でありながら、対象を自分の元へ引き込み想像たくましく想いを寄せる術が実に面白いんです。そのため、今まで興味を全くもっていなかった鳥たちをしっかりと感じることが出来ます。それはそれぞれの鳥たちの解説にも表れており、学術的な説明だけでなく作者の私的感想を織り交ぜているのがいいです。これが小説を成す作者ならではの表現なのでしょう。
作中にある「生物は帰りたい場所へ渡る」という言葉が印象的でした。これはきっと物理的な「場所」だけじゃないんでしょうね。
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鳥の渡りを追うエッセイ。この作者さんならではの濃やかな感性と観察眼がなんともいえず魅力的。わたしはエッセイに関してはあまりいい読者とは言えず、普段はもっぱら小説(それもフィクション)を主食として読んでいるのだけれど、この方に関してはむしろエッセイが小説以上に大好き(小説も好き)。
北方に渡る旅に発つオジロワシやオオワシに会うための、知床への旅。営巣中のオオワシを探す、カムチャッカへの旅。(鳥の渡りというものをその眼で実際に見るというのは、すごい体験だよなあ、と思うのだけれど、自分で真似してみるだけのガッツと資力がない……)
鳥たちそのものについての観察と思索はもちろんのこと、挿入される現地の人々のエピソードもまた印象深い。戦時中のアメリカの、忠誠登録とノーノーボーイの話。北海道の開拓民の話。アリューシャンを旅したときのカヤックの話が面白かった。地形のせいで次から次に押し寄せるはげしい波を乗り越えるために、昔のアリュートが作りあ上げていったカヤックには、十二個もの骨がついていて、前後の柔軟性とねじれ剛性を高めているという話。人々の暮らしと、そこに流れる時間。
ワタリガラスの神秘性、ヒヨドリの逞しさ、渡りをやめた鳥たち、公害に伴う鳥の減少。
本作のようにそれを主題にまとめたものでなくても、梨木さんのエッセイにはよく鳥の話が出てくる(それから植物のことも)。それを読むたびに、鳥を見ない自分を省みる。実際のところ昔より数は減っているにせよ、身近にも鳥たちがいないわけではない。耳を澄ませば声がするのに姿を見つけられず、声を聞いても名前がわからない。ああ自分は貧しい暮らしをしているのだなあ、と思う。金銭的なものではなく、心が。鳥の名前を知り、その渡りの航路を知って思いをめぐらせ、ああ今年もまた彼らがやってきたのだなと目を細めて暮らすことができたなら、どんなにか……と思う。
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渡り鳥をめぐる素晴らしい紀行記録。静謐な文章と澄んだ感情で記録されるその語りに、思わず感動せずにはいられない。
特に「道を違える」の章は心の深いところに届いた。福島潟に梨木さんが来ていたとは知らなかった。
この本を読んだ後、鳥を見る目が変わった。がんばってるんだな、お前ら。
北海道へ行きたくなること請け合いの1冊です。
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基本は渡り鳥たちを見に行く旅。だがその中には、生きること、還る場所のこと等と鳥を通した作者の考察が散りばめられている。自分の行き先を見失いやすい時代だからこそ、この本が渡り鳥が渡りの頼りとする星の位置のように、輝いている。
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渡り鳥の足跡を辿ったエッセイ。
鳥の生態や渡り鳥と関わる人、北海道の開拓の歴史、ロシアの探検家の案内人の話、太平洋戦争の時のノーノーボーイズの話など、ページ数の割に内容は多彩でいろいろなことを考えさせられます。
面白かったけど、梨木さんはエッセイよりも小説の方が好きだなぁ…と思いました。
2013.03.18
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可能であれば。
渡り鳥の飛行ルートや、各章末ごとに記載されている鳥の説明に挿絵などがあると良かったかなと思う。
梨木さんの文章は感性を鋭敏に働かせながらも、その中でできるだけ客観的であろうとしているところも好きなのだが、いかんせん鳥類に詳しくない人間が読む場合には、挿絵や図解があった方が分かりやすいと思う。
ま、自分で調べろってことか(笑)。
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梨木さんは筋金入りのバードウォッチャーなんですね。読んでると鳥に興味を持ってくる。かっこよさそう。知床も行ってみたいな。
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まさか梨木香歩に対して「かわいいい」ともだえる日が来るなんて思わなかった。
...何を言ってるんだ私は。
人間が生きることを、どこまでもまじめに、真摯に追求するのが梨木さんだ。うっかり通り過ぎてしまいそうな気持ちを拾い上げて形を与え、途方に暮れてしまう問いかけも少しずつ言葉を探して近づいてゆく。一緒に遠回りしていると、いつのまにかとても深いところへたどり着いている。そんな読書体験ができる。
「春になったら苺を摘みに」の文庫版の解説で「あまりにもすきを見せまいとする用心深さに、時折わずかな隔たりを感じる。もっと正直に自分をさらけ出したって大丈夫だ、梨木香歩なんだから。」というようなことが書かれているのを読んだ時、思わず心の中で反論した。
それがいいんじゃない、梨木さんは、と。
私含め断定を使いたがる人は多い。言い切ることは気持ちがいいし、わかりやすい。
でも、おのれ一人の意見のみで言い切ってしまえる事なんて、世の中にいくつあるんだろうか。考えるのをめんどうくさがっているだけじゃないか。
梨木さんは決めつけない。自分の中に沸いた気持ちにさえ、本当にそれだけか?と懐疑的な目を向ける。考え、悩むことを諦めない。だから梨木香歩は「信頼できる」と思う。上から目線にすぎるだろうが、そういうところが本当にいいなあと憧れ、読み続けている。
そんな私がこの本で一番好きなところ。
131頁、「カルガモ カモ目カモ科」の説明。
「カモ類には珍しく、雌雄がほとんど同色で(大抵のカモは雄の方が派手。オシドリの雌雄の違いは特に目立ち、到底同じ種には思えないほど)、見るたび、それでもちゃんと種は途絶えずにかわいい雛も生まれるのだという、感慨を新たにさせてくれる。」
あの梨木さんが、人を(鳥だが)、いじっている!
さらっと書かれているけど通勤電車で声をあげそうになった。「心の中では大騒ぎ」ですよ(P33参照)。
これは、愛だ。並々ならぬ愛を感じる。
ここだけではない。全般的にカモには遠慮がない。
「ヒマラヤの雪男をロシアの貴婦人に仕立てたような」鳥(ぜいたくな比喩!)、ミコアイサに出会った興奮で、
「定住の管理人、カルガモ、苦労もありましょうが、皆さんをよくおもてなしして」(P129)
カルガモ、お世話係に任命されました。親戚なみの気安さである。
「ホオジロガモ カモ目カモ科(略)頬に白斑のない雌までホオジロガモと呼ばれるのはどうだろう。ホオジロガモ家、ということか。屋号なのか。」(P133)
いや、何を言ってるんですか。(梨木さんに突っ込む日が来ようとは)
こんな楽しそうな梨木香歩を見たことがあるか。
そうかー、カモには気を許すのかー。
人類のことも忘れないでくださいね?と寂しくなるのはなんか違う気はするのだけれど。
というか、私が梨木香歩に夢を見すぎなのかもしれない。
現実の梨木さんは、そりゃいつも難しい顔をして考えごとばかりしているわけではないだろう。
本の中で軽口を叩き、目を輝かせて野鳥たちとたわむれる姿は、見た事がないほど楽しそうだった。
その一方で、これまで以上に大きな問いも立てられている。問題の深刻さに、圧倒されそうになってしまったりもする。
すぐに答えを出さない、ずっと悩み続けるということは、ものすごく疲れることだ。
梨木さんがあえてそれをするのは、大好きな鳥たちに関する大事に見てみぬふりをしたくないからかもしれない。
好きなもののことだからこそ、もしかしてもう取り返しがつかないかもしれなくても、目をそらさないのかもしれない。
梨木さんは人類に関しても、まだ諦めない。
まだ私達はもっと良くなれる可能性があると思い続けている(ようにしている)。
それは鳥に対するのと少し違うけど、人間にも愛を持っているから、ですよね?と思いたい。
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環境問題とは何か。実は簡単ではないことを著者と共感する。
案内人という視点面白い。鳥たちにとっては太陽と星座だという!
ノーノーボーイ
侵略と越境。鳥の視力
門間あや子さんは私も好きになった
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エッセイ。
鳥の話だけでなくノーノーボーイと呼ばれる第二次世界大戦にアメリカで収容所に入っていた日系の人のことや
知床の開拓団の人々の話など
梨木さんらしい目線のエッセイだった。
書かれてる鳥の写真とかがあったらいいなって思う。
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渡り鳥を題材に、自然と人間との関わりや、人の在り方、物語についての考察が記されている。著者の、鳥たちへの眼差しがとても親密。ただ優しいだけでなく、まるで人間観察するように表情を読み取る。
文章は静かで濃密。読み進むうちに、心が静まるように感じる。
(2014.3)
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生物は帰りたい場所へ渡る。自分に適した場所。自分を迎えてくれる場所。自分が根を下ろせるかもしれない場所。本来自分が属しているはずの場所。還っていける場所。たとえそこが、今生では行ったことのない場所であっても。
生き物はみな、時が来れば渡ってゆく。その旅の途中で、力尽きるとしても。
命がけの旅をする鳥たちを追い、その足跡を訪ね、著者は知床、諏訪湖、カムチャツカへ――。わずか数百グラムから数千グラムの体に秘めた、旅立つ本能と衝動とは一体なにか。さらにそのまなざしは、海峡を越えて新天地へ、また故郷へと向かった人々の歴史へも向けられる。
あなたの庭に訪れる小鳥も、近所の池や川に飛来するカモたちも、命がけで海峡を渡り、大陸を横断し、奇跡的に辿り着いているいのちのひとつかもしれない。そう思うと彼らを見る目がかわりませんか?