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2020年に安野さんは亡くなった。
それから3年。
かなりご長命でいられたので、もうすぐ生誕100年にもなる。
本書は80代に入って生涯を振り返ったもの。
故郷の津和野の様子。
宿屋を営んでいた家族のことなどの他、土地の人々のことも書かれている。
貧しい家に生まれたけれど、立派に子育てをして幸福を築いた幼馴染のつえ子さん。
「げんきでヘンヨウせいよ」という伝言を残して突然転向した山本虎雄君。
「過ぎたことはみんな、神話のような世界」と安野さん自身も言うが、しかしどこか味わい深い。
司馬遼太郎の「街道をゆく」の取材に同行したこと。
ダイアナ妃来日時のレセプションに参加したこと。
『ABCの本』が海外でも読まれ、英語圏の人々からさまざまな意見が来たこと。
そんなことが飄々とした文章でつづられていく。
昭和四十五年の年賀状の話は傑作である。
その年賀状は収録されているので、そこだけでも十分見る価値がある。
顰蹙を買う可能性もあるけれど、ユーモアのセンスがない自分には、こんなことができる人はうらやましくて仕方がない。