紙の本
もしもあの時…
2001/05/23 16:27
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投稿者:上六次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの時こうしておけば、今ごろは別の人生を歩んでいたのではないか。そんなことを考えたことが誰しもあるのではないか。進学や就職、結婚といった大きな節目となる出来事を思い浮かべる人もいるであろう。だが実際にはもっと些細なことを考える人のほうが多いのではないか。あの時彼女に電話を架けておけば、あるいはあの時あいつと道で偶然会わなければ、といった瞬間が思いつくのではないだろうか。
本書は十八年前の電車事故に関わった人たちの物語である。忌まわしい事故の起こる直前にとった行動がもし違っていたらどうなっていたのだろうか。過去に遡って人生をやりなおせたらどうなんるのだろうか。北川と秋間という高校の同級生を中心に話は展開していく。
よくタイムマシンが出てくるようなSF小説などで歴史を歪曲することは許されないような話が出てくる。しかし普通の人が何をしようとも時の大きな流れは変わらないのかもしれない。だけど自分の人生においては歴史を動かす事件よりも、もっと大事な分岐点がある。そして今の自分とは違う自分がいるはずなのである。
「もしも、あの時…していれば」は禁句であるとともに、希望でもあるのである。
本書はサスペンスとSF、そして恋愛小説をミックスした欲張りな一冊である。
紙の本
小説はなぜ書かれるのか、そしてなぜ読まれるのか
2002/04/03 23:25
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐藤正午の小説は、ほぼ九年前、芦原すなおの『青春デンデケデケデケ』と一緒に『個人教授』を読んだのが最初で、それ一冊だけ。その時の感想が「村上龍の『69』以来の楽しめる青春小説」(これは『デンデケデケデケ』と共通の感想)と「村上春樹の世界を思わせる知的に乾いた叙情」で、村上春樹のことは『Y』を読んでいてもやっぱり(『リセット』の北村薫とともに)連想した。つまり、これは上手い小説であり、私の好みの作品であったということ。
18年分の記憶をもったまま18年前の自分に戻り、二度目の人生を送った男から、一番目の人生で友人であった男(主人公)あてに届いたフロッピー・ディスク。「Y」というのは時間の分岐をあらわす記号で、フロッピー・ディスクに綴られた「作中作」のタイトルでもある。この小説にはたぶん、時を彷徨う男の三番目の人生(それは主人公にとって、もう一つの別の人生である)を構成することとなる人物(たとえば、女性の新聞記者)や素材がそれとなく描かれている。小説はなぜ書かれるのか、そしてなぜ読まれるのか。これがこの作品の隠れたモチーフである。
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うまく言葉にできない感動がありました。
2001/05/28 23:10
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投稿者:どしどし - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生を生き直すという男の話で、その生き直す男の視点ではなく、その男の前の人生での親友が主人公。だから主人公にとっては見知らぬ男だし、その男の話も最初は作り話としか思えない。しかし、その話を受け入ていく過程や、自分が生きてきたこれまでの人生が違ったものに見えてくる感覚がぼくにはとても感動的で、ラブストーリーという側面よりも、主人公から見て「親友だった見知らぬ男」という存在に強く惹かれるところがありました。一般的な感想ではないでしょうけれど。
かなり気に入った作品です。
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物語の発端は、主人公「秋間文夫」のもとに掛かってきた一本の電話。相手は「北川健」という男で、高校の同級生であり、かつて秋間文夫の親友だったと言う。しかし、秋間にはまったくそんな記憶はなかった。
数日後に、秋間は北川が書いた物語を代理人から手渡される。
躊躇しつつも読み進めるうちに・・・という感じの始まり。
設定が、最近読んだ「七回死んだ男」「ライオンハート」と似た印象を持ったなぁ。
あぁ本当にこういう題材の話ってよくあるんだと思ったけれど、やっぱり面白く読んでしまった。
こういうのが好きってことなのかも。
半分くらい読んだところで家事をするために手を止めて、食器を洗いながら今後のストーリーをあれこれ考えてみたりしてました。
ちょっと近い展開になったから何となく嬉しくなったり。
でも意外な事実もあったりしたので、最後まで楽しんで読めました。
裏表紙の説明には「時間を超えた究極のラブ・ストーリー」と書いてあったけど、それはちょっと違う気がした。
どちらかと言うと、友情とか縁とかって要素が強いかも。
ラストの後に起こる北川健の人生が気になる!
この点で、かなり余韻を残された作品でした。
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アルファベットのYという文字、何に見える?あの時、もしこうしていたら・・・と思ったことがある人は、絶対いないはず
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とある本屋さんにて見かけたポップには純愛小説とあったのだけど、私にはうーん???そうかなーと疑問の1冊。たらればを言えばキリがないよというのが率直な感想。星は2.5ってとこでしょうか。
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すんごい面白かった。引き込まれた!これはオススメ。もしもあの時こうしていたら…?そうYなんですよ人生はーーー!(意味不明)
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Y
という題名に惹かれて購入しました!
すごく時間軸の書き方が・・・!文章の書き方はそんなに固くもなく男声らしい綺麗な書き方で、ちょっとあこがれました。
のちほどYの意味が明らかになるのですが読み終わってみて面白いな、不思議だな、すげーとか軽くわくわくの残った本ですよ。
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8月の雨の晩に突然かかってきた男からの電話。彼は自分を”キタガワタケシ”と名乗り、高校の同級生だったというが、私・秋間文夫には全く覚えがない。何かの勘違いだろうと思ったが、そのキタガワタケシはしつこく、「物語を読んでくれればわかる」と言い、電話を切った。そして数日後、秋間はキタガワの代理人だという加藤由梨から、貸金庫に入っていたフロッピーディスクと、現金500万円を渡されることになる。そのフロッピーに、キタガワの言う物語が入っているというのだ。
特に選んだわけでもないんだけど、これもタイムスリップものだった。頭の中を整理しながら読まないと、途中でついていけなくなるが・・・最後で全てがつながり、このストーリーのせつなさに気づく。あの時こうしていれば、というのは誰でも思うことがあるだろうけど、だからといって、彼のような行動ができる人物はなかなかいないだろう。
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「あの時あちらを選んでいたら」という過去を
みんな持っていると思います。
そんな「もし」のお話。
もしその場面に戻れたら…。
でもきっとどちらを選んでも、結局自分は
あまり変わらないのだろうな〜。
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とてもおもしろい内容だと思う。SFっぽいのにくどくない。重松清の『流星ワゴン』を思い出す。
人のつながりは偶然なんだけど、どこかで道を間違えても、結局は『縁』によって何かしらの形でつながるという話。
たとえ過去に戻っても自分で変えられたことなんてほとんどないんだと感じた。計画的偶発性に満ちているんだ世の中は。
僕は今のままでいいや。過去に後悔はない。全部が自分を作ってくれたんだから。人生の分岐点は自分の人生の全部の時間だと思う。
『無意味な発言を取り上げ、そこから意味を見出そうとする』
『かけがえのない人間の代わりなどどこにもいない』
『運命だと思えばあきらめもつく』
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ある晩、秋間文夫(私)の元に北川健という男から電話がかかってくる。彼は私の同級生で親友だったというが、私には全く覚えがなかった。
彼は私に自分の書いた物語を読めと言う。読めば全てが判ると。
彼はその物語を書いた1枚のフロッピーと現金500万。そして西里真紀の名義で作られた9桁の金額が印字された通帳を私に残し忽然と居なくなった。
彼の残した物語の中には、私も、そして彼がその死に責任を感じている人物(女性)が登場する。そしてその女性は私の良く知っている人だった。彼は物語の中の私に、時間が逆戻りをして行く事実を説明していた。
ありえないことだった。今の私はそんな物語の記憶は無い、だが彼はその物語が事実だったと言いたいらしい。そんな馬鹿げたことがあるのだろうか……。
すいません。粗筋がはっきり言って滅茶苦茶です……。書きづらい内容なんです(言い訳)
でも、この小説は個人的に絶賛します。
時空を飛ぶ話は何点か読んだことがあるが、その中で一番のお気に入りで秀作。イチオシ。
何がそもそも良いのだろう?と知人と話していたのだが、その一つの理由として、主人公が時空を飛んだ側では無くて、残された(という表現が正しいか疑問だが)側だという事。
その残された側に居ながら、時空を飛んだ彼が居るという事を認識して行き、信じてゆく。
この設定は、物凄く書きづらいんじゃ無いだろうかと、とても思った。
この小説を何に分類するか?となると凄く難しい。SFでありファンタジーであり恋愛小説。私はあえて恋愛小説と分類したい。
北川が体験した前の物語(人生)の中にも秋間は居るが、それは今、秋間が送っている物語とは異なる。だが、その秋間が送っている今の物語は、北川があえて望んだ物語でもある。だが、それを望んだにも関わらず、北川にとってそれは哀しい物語になってしまった。この物悲しさがなんとも良い。
とてもわかりづらい文だが、パラドックスが生じる話なので、こういう書き方しか出来ないです……。
でもって、冒頭の1節。
(本文抜粋)↓
【無数の雨滴は、まるでグレープフルーツの透明な果肉が散らばって窓に降りかかったように見えた。】
この比喩がたまらなく好き。宮部の【風の神様がクールミントガムを噛んでた〜】に匹敵するぐらい好きな一文です。
そして、この冒頭はスゥィーティーではなくグレープフルーツにあえてした、と、タイトルを「Y」にしたという作者のそのセンスが好きです。
ただ難点を言えば、締りが悪い。結の締りがどうも甘い感じがした。
もっといい場面で終われるのでは?と。
じゃあ、どこで終わるのが一番いいのか?と問われると――
私的には、北川が最後に残したメッセージにインパクトをもっと与えて、そこで終わるのが綺麗だと思うのですが。
最後の北川のこのメッセージに今ひとつインパクトに欠けるのが残念。
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3ヶ月ぐらい前に読んだ。
どうも印象が薄い。
確か、つまらなかったというほどでもない。
ただ、読んだ当時体調不良だったことも手伝ってか、この時空が錯綜するストーリーに十分入り込めなかった。
それに、ヒロインがだんだん魅力的じゃなくなる(フロッピーの中ではキュートな娘なんだが、こちら側の世界ではなんだかな・・・)というのは少々辛いものがある。
「ジャンプ」同様、男性より女性の方が決断力に富んでいる。なにか、佐藤正午の信念でしょうか。
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ある晩かかってきた一本の奇妙な電話。北川健と名乗るその男は、かつて私=秋間文夫の親友だったというが、私には全く覚えがなかった。それから数日後、その男の秘書を通じて、貸金庫に預けられていた一枚のフロッピー・ディスクと、五百万の現金を受け取ることになった私はフロッピーに入っていた、その奇妙な物語を読むうちにやがて、彼の「人生」に引き込まれていってしまう。この物語は本当の話なのだろうか?時間を超えた究極のラブ・ストーリー。
初めての佐藤 正午作品。
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人生の中での岐路は誰にでもあります。
その時、何を選ぶか、どう選ぶか、すべて自分の選択だと思います。
選べなかった道に心を奪われ、抜けられないもどかしさが
どうしても残りました。