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がっかりしていた
ダイオウイカはマッコウクジラと闘っているのだと思っていた
最終的に敗れ、マッコウクジラに食われるとしても、それは崇高な闘いの末の誇り高き死だと思っていた
まったく違っていた
真実は、単に食い食われるだけの関係だった
マッコウクジラはいつか倒すことを目指す対戦相手ではなく、ただの捕食者だったのだ
この『深海の生き物超大全』によるとダイオウイカには食われるか、逃げきるかの二択しかないそうだ
しかもダイオウイカは逃げ切るために体を進化させてもいるようだ
とてもとてもがっかりしていた
ダイオウとしての誇りはどこにあるのか
〜その日の夜〜
ホワンホワンホワンポワワワ〜〜ン
「ひまちゃん、ひまちゃん、起きて」
「う〜ん、ムニャムニャ…あれ?ダイちゃんじゃん、どうしたの?」
「ちょっと小耳に挟んだんだけどさ、なんか昼間ひまちゃん誇り高き死がどうのこうの言うてたらしいやん」
「そうだよ!正直ダイちゃんにはがっかりだよ!闘いもせず逃げるだけなんて!恥ずかしいと思わないの?」
「ひまちゃんにはかなわんな〜w」
「笑いごとじゃないよ!怒ってるんだよ」
「でもな、考えてみぃや、そもそも誇り高き死ってなんやの?死んだらしまいやで?誇りもなにもない。そこで終わりや」
「うんまぁそうだけど…」
「こうしてひまちゃんに会いにくることもできひんのやで?ひまちゃんはそれでもええんか?」
「いや、それは…嫌だけど」
「せやろ?わしもいやや。だからわしは逃げる。誇りなんかなくてもええ、恥ずかしかろうがなんだろうが、逃げる。逃げて逃げて、そして生きる。生きて家族や友だちと仲良うするんや。それがわいの誇りや」
「そうだね、そっちの方がいいや」
「せや!そやな…言うなれば誇り高き生やなw」
「うん、誇り高き生だ!ふふふふ」
ホワンホワンホワ〜ン
「あれ?ダイちゃん?いない?夢?」
そうだ、そうなんだ!この世界に誇り高き死なんて必要ない!
逃げろ!逃げろダイオウイカ!誇り高く!