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杉田久女がモデルの「菊枕」が読みたくて購入。傑作短編集なので、他の収録作品もよかった。ひとつ難を上げると、シビアすぎて、読後、人生は落とし穴ばかりと思ってしまうことでしょうか。
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清張の作品は格別です。堅い文面であるが面白い内容でぐいぐいと引きつけていく。受賞作ではあり、清張の入門として最適では。
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松本清張の本って、どこか冷たさというか、ひんやり感があって、最後まで気が抜けない。
短編集だから読みやすかった。
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松本清張の本って、どこか冷たさというか、ひんやり感があって、最後まで気が抜けない。
短編集だから読みやすかった。
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収められているのは12編。
その多くの作品に共通するのは、非凡な才能を持ちながら世間から正統な評価を受けられない人を描いている点である。
評価されないのは生まれ、貧乏、学歴、身障の故である。
貧乏な家に生まれて、高等小学校卒業後すぐ働きに出て、苦労しながら小説を書いた氏の境遇が色濃く反映されていると思える。
その思いは相当深く鬱積しており、屈折しているようにも見える。
怨念といってもよいだろう。この劣等感にも似た想いの深さが氏をして原稿用紙に向かわしめたのか。
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図書館でひょっと手にとった松本清張文庫。或る「小倉日記」伝。松本清張はこの作品で芥川賞を受賞し文壇に登場した。主に推理小説を数冊読んだ程度。「砂の器」が映画化された折、映像の美しさと内容に深さに号泣したことがある。忌み嫌われた業病ゆえ、ふるさとを追われるように放浪の旅に出た親子の姿に、同じくふるさとを離れ母と暮らした心もとない歳月が重ね合わさったのだろう。四季にわたる流離の旅が美しい映像で表現されていた。
国鉄蒲田操車場で二人を結びつける老人の死体が発見されるところから物語は幕を開ける。
戦後の高度成長期の最中、息子の邪魔になってはいけないと四国の隔離所でひっそりと沈黙を守って生きる父がいた。いまわしい過去から逃げるため戸籍をねつ造し別人となって生きる息子がいた。四国の隔離病棟に住む父親と大都会で華々しい出世途上にある息子。音楽家として栄光の頂点に至る途上に現れた一人の老人が彼と父親を再び巡り会わせることになる。それは、この世では二度と再び出会うことのない邂逅だった。次第に明らかになってゆく人間模様。なぜ、老人は殺されねばならなかったか、なぜ父は息子に会おうとしなかったのか、息子は一度として父に会おうとは思わなかったのだろうか。松本清張の作品に底には人の世の悲しみの河が深く静かに流れているように思える。今年来年にかけて全作品を読んでもいいかなと、そう思った。無意識に手にした一冊の本が世界を広げてくれる、そういうことだってあるだろうさ。
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この短編集に入っている「或る『小倉日記』伝」「菊枕」「石の骨」「断碑」の4編は、いずれもモデルが存在する実話です。人は誰でも弱点やコンプレックスを持っています。しかし、そこから生まれる怒りや恨みを放っておくと、猛獣のように荒れ狂って、結局、自分自身が滅ぼされてしまいます。そのことに気がついた松本清張は、4編の主人公に自分を重ねながらも、人間が落ち入りやすい悲劇を見事に描いています。就活に、そして人生に、必読の1冊です。
(九州大学 大学院生)
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実話を元にした作品もあるとのこと。境遇に翻弄され、脱却できない人たち。「砂の器」の描く「宿命」にも通じるように感じる著者の作風。11.1.25
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これは素晴らしい短編集。特に「石の骨」でふみ子が残す「うれしいわ」という一言に至る流れは涙なしには読めない。どの作品を見ても、読み終わってからも着々と心に根付き、消えていかない。
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「昭和十五年の秋のある日、詩人K・Mは未知の男から一通の封書をうけとった。差出人は、小倉市博労町二八田上耕作とあった。」
とは、
なんとまあ、愛想のない書き出しだろう。
カッコよさ・オシャレ感ゼロ、難しさもあざとさもゼロ。
しかし。
しかしである。
ええ?!なに?なに?それで一体なにがあったの?!ここからなにが起こるの?と、ものすごく気になるではないか。
「或る『小倉日記』伝」とは、大体、タイトルからして、まったく愛想がない。
でも、つかまれてしまう。それで?それで?と、どんどん引き込まれていく。淡々と事柄を重ねていくだけなのに、ぐいぐい引っ張られ、最後まで連れて行かれる。
そしてこのラスト。
無常感とわずかな感傷。
これがごく初期の作品だったのだから、なんとも恐ろしい新人だった、と言わずにおれない。
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松本清張デビュー作にして芥川賞受賞作だそうです。作者は若い頃から転職を繰り返し、新聞記者から作家に転身。その文章技術と経験から多彩な世界を描けるのだと思いますが、アンダーグラウンドな舞台の多さから作者自身の生きてきた本当の世界が私は気になります。
本作のラストにはびっくりしました。
追記) 看護、介護問わず福祉に関わろうとする者なら一読の価値はあろうと思います。
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重苦しい。信念はあるのに人格や運が災いして認められない学者。読者の心を抉る劣等感。少ないページ数で濃密に描かれています。障害や学歴は人生を狂わせ権力や見下げる視点は事実を歪ませる。気に入らない、面倒だと捨てられた側の否応なしの現実が辛いです。
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初期の短編集。社会派推理小説というより純文学に近いのだろうが、非常に読みやすい。
テーマは殆ど共通しており、研究者や芸術家の世界における権威主義への挑戦と敗北、というところである。現在でも同様な傾向にあるのかもしれないが、当時は決して越えることのできない壁であったのだろうと思う。著者自身、学歴がないことに強烈なコンプレックスを持っていたと聞いたことがある。
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人間の辛さ(からさ)、人生の辛さ(つらさ)が、しみじみと身に染みる。しかし、そこがいい。
松本清張は10代の頃に『点と線』と、あとアンソロジーに収録されているものをいくつか読んだだけだった。今になってこの短編集を読んで驚く。面白い。10代に読んだ時よりも、格段に面白いと思ったのだ。
嫉妬、愛憎、自負、そして劣等……
すさまじいエネルギーである。けれど、その根本にあるのは一個の人間の脆さ、いっそ儚いほどに切ない人間の等身大のちっぽけさである。
ガリガリの自負心≒虚栄心を描いたものは私自身、身に覚えがありすぎるだけに読んでいてとても辛く、ああ、自分はこういうものにもっとも「痛み」を感じるのか、とひりひりした。
それだけに、仄かにでも哀愁が感じられるもの、たとえ憎しみと半ばしていたり嫉妬に狂ったりしていても、素直な愛が感じられるものの方が物語として好きだと思った。作品名で言うと、「或る「小倉日記」伝」「喪失」あたり。
最後の「箱根心中」も、切々とした悲しみが最後まで抑えた筆遣いで描いてあり、余韻が尾を引いてラストにふさわしかった。というか、最後までガリガリのコンプレックスや虚栄の世知辛さを書かれてはやりきれないな、と心配していたので、正直ほっとした(^^;)。
物語にはやはり、ほんの少しでいいから、お話の神様の慈悲が欲しいものなのだ。
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初めて読んだ松本清張の本。或る「小倉日記」伝が目的だったが、最近読んでいる、ある意味読みやすい日本語とはまた違った、重みのある文章の良さにドキドキしながら読みました。どの物語も嫉妬。読んでいて苦しくなるような文章であったけど、これが人間らしい。人は喜びに対して貪欲だし、その代償なのか、人は自分で自分の身を滅ぼしていく。これは誰のせいでもないのだなぁと思う。それを受け止めながら、正直に生きていく、まともに。自分に正直だからこそ自分勝手な人たちについて行く相方もまた強さを持っている。私なら逃げてしまうと思うけれど、辛抱強く人を支えるのもかっこいい生き方な気がした。
或る「小倉日記」伝、私は耕作は幸せな人生の最期ではなかったかと思う。長生きして、もっと聞いて回りたかっただろうと思うけど、彼の書き上げる小倉日記を読んでみたかったけれど、小倉日記の発見を知らずにいられたことは幸せだったと思う。耕作が聞いて回った話を知りたい。きっと鷗外自身の書くものと違う話があっただろうから。