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ウォークの謎追い(証拠集め)と、姉弟の生活の変化と、交互に展開される。ずっと自分は無法者だと言い聞かせ、様々な出来事に耐えてきたダッチェスが、パーティーから帰り、ハルに報告してやろうとうきうきしているまでは物凄く嬉しかったが、そこからハルの死で生活が変わり、里親が見つかるまでに与えられた仮住まいの家族には除け者にされる。姉弟にはソーセージ1本ずつ皿に乗っていたが、ロビンがもう1本あったらいいなと言ったのでダッチェスが残ってないか聞くと、無いと言われ、ふと見ると、当の家族の子供の皿にはソーセージが三本ずつ乗っていた。自分の皿からまだ食べていなかったソーセージを取って、貰ってきたよ、とロビンに渡すダッチェス。切ない。
ハルにはずっと、おじいちゃんなんて呼んでやらないよと、悪態を突き通していたのに、じわじわと心が解れ、パーティーをきっかけに、普通の家族になれそうだったのに。
結果として、姉弟は離れてしまったけれど、あたたかい終わり方だった。
読み終えてから、しばらく表紙の絵を眺めていた。
古い西部劇を見たり本を読んだりして、人生というのは復讐心にあまり染まりすぎると、その人の持っていた善良さを食いつくしてしまうことがあるのを学んでいた。p355
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英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作。
『ミステリが読みたい』海外篇 第1位。
「それが、ここに流れてる
あたしたちの血。
あたしたちは無法者」
アメリカ、カリフォルニア州。海沿いの町ケープ・ヘィヴン。30年前にひとりの少女が命を落とした事件は、いまなお町に暗い影を落としている。自称無法者の少女ダッチェスは、30年前の事件から立ち直れずにいる母親と、まだ幼い弟とともに世の理不尽に抗いながら懸命に日々を送っていた。町の警察署長ウォークは、かつての事件で親友のヴィンセントが逮捕されるに至った証言をいまだに悔いており、過去に囚われたまま生きていた。彼らの町に刑期を終えたヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還は、かりそめの平穏を乱し、ダッチェスとウォークを巻き込んでいく。そして、新たな悲劇が…。苛烈な運命に翻弄されながら彼女たちがたどり着いたあまりにも哀しい真相とはー?
(以上、単行本うらすじより)
まず、ダッチェスの母の妹のシシーを誤って轢き殺してしまったヴィンセントは刑期を務めるために生きてきたという一行があり、なぜそこまでするのかと思いました。15歳の子どもが犯した罪です。
そして、幼なじみが起こした事件を解決しようとする刑事のウォークの苦悩。
6歳の弟のロビンを思いやる、わずか13歳の少女のダッチェスの愛情の深さ。
ヴィンセントは一体何を隠して罪を被っているのか…など不思議でならなかったけれど、思いもよらない結末。
ヴィンセントの真実がわかったときは、ため息がもれました。
大きな賞を獲る作品とはこういう作品なのだと思いました。
家族の大きな愛の物語だと思いました。
皆さんのレビューを再拝読してみると、ダッチェスやウォークを讃える声が多いように感じましたが、私は一番愛情深い人物は他ならぬヴィンセントだったと思い涙しました。
なんで、こんな悲劇が起こってしまったのか。
ダッチェスの未来が明るいものであることを願ってやみません。
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いや〜〜〜読み応えたっぷり!!
原題は「We begin at the end 」〜人は終わりから始める、これをこの邦題「われら闇より天を見る」にしたのって、秀逸なセンスだなあと思う。
この作家さん、まだ作品数は少ないようですが、個人的には、キング作品を読んでいるような世界観を感じました。
正直、前半は読み進むのに、ちょっと時間かかったのですが、途中からはもう夢中で一気!
とにかく、ダッチェス!
たった13歳?の彼女の頑なさと、その乱暴ともいえる強い行動力と信念、怒り、母と弟への愛、そして哀しみ。なんだかもう、苦しくてハラハラしつつ…。
改めて「無法者とはなんぞや?」なんて思う気持ちが、読んでる間中、頭の隅にありました。
彼女が初めて「おじいちゃん」と呼ぶ場面、自らを『調子にのっていた』と罵る場面。私はここで一番涙が溢れた。わかる!本当はそうではないのだけれど、人は強い悲しみにあうと自分の何かがいけなかったからだと思うのだ。
そして、ウォーカー!
ラドリー家を見守り、親友を思い、マーサのそのままを愛する彼が、後半、病魔で痩せていくあたり、私個人としては、キングの「ミスター・メルセデス」シリーズのラストの方のホッジスのイメージとダブってしまいました。
事件の真相を追う、という意味ではミステリーではあるけれど、それよりも『人は誰しも人生のどこかでは苦境に出会うし、誰しも大なり小なり間違いを犯す。そんな中でどう行動し、どう生きていくのか』ということを、どっぷりガッツリ描いた作品だと思いました。読んでよかった。
ネタバレしない程度に、印象に残ったところ少し。
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すてべか無かでなくたっていいじゃん…沈むか泳ぐかでなくたって。たいていの人は水に浮かんでるだけだけど、それで充分じゃん。
牧師は…神はまたひとり新たな天使を必要となさったのだと、神に召された当の悩める魂のことなど何ひとつ知らないかのように説いた。
まもなくおれは闇と星とその衛星になる。世界はおれが指を一本持ちあげれば隠れちまうほどちっぽけな、取るにたらないものになる。
三角形はいちばん強い形なのだ。そう数学で教わった。
おれはそれでかまわないんだと思ったんだ。それでかまわないと…きみらのあいだにそんなことは存在しない。そんなものは他人に話さなくてかまわないんだ。きみはただ…そのままでいいんだと。
逆境にもめげず、運命にいかさまをされても、人生を生きている。
人生というのは復讐心にあまり染まりすぎると、その人の持っていた善良さを食いつくしてしまうことがあるのを学んでいた。
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また時間が経ったら読み返してみたい。この作者の他の作品も手に取ってみたいです。
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一つの事件をきっかけに、絡み合った幾つもの愛憎。罪を犯すことと償うこと。無私の行為。
あまりにも深いテーマだが、ぐいぐい読ませる筆致。雄大で美しい自然が、厳しく時に優しく包む。
この作品の素晴らしさを伝えたいが、何を書いても陳腐になってしまう。とにかく読んでみてほしい作品。
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シングルマザーで精神的に弱ってる母親のスターを支えつつ、まだ幼い弟のロビンを必死に守りながら生きている自称無法者の娘ダッチェス。
まだ14歳の彼女の身に次から次へと降りかかる試練。
その厳しい運命の翻弄のされ方には読んでいてズット心が苦しかった。
幸せな日が手に入るかも…と思いかけた所で闇の中に落とされる。
ただ、この本のタイトルの様に闇の中から這い上がり、そしてまた1歩ずつ進んでいく。
取り返しのつかない事もあるけらど、終わりから始める事も出来る。
運命に翻弄され続けたダッチェスが、最後に放った一言に全てが詰まってる…そう感じた。
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家族と友情のストーリー。家族の絆が壊れて家族のように見えなくなってしまったとしても、友との絆を断ち切ろうとしても、時は人を本来あるべきところに連れて行き、絆は簡単に消えたりしない。
不器用なダッチェスと天使のようなロビンのたどるロードムービーのようなアメリカ西部の南から北への荒涼さが際立ってくる景色や最終的に全てに決着がついていく書き込みも印象的な抒情サスペンス。
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とにかく、13歳の少女。意固地で頑迷。大人の目線ではひたすら面倒くさい。そんな少女が少しずつでもこころを開いていくんだけれど、やっと、と思ったら、また地雷が炸裂。半分あたりまではページがなかなか進まない。でも、そのあたりからうねりだす。読み終えて良かった....。
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ミステリーとしては進行が遅く、なかなか展開しないもどかしさのため、のめり込めずちょっと残念。ダッチェスが自分を無法者と言わざるを得ない境遇にあるのが辛いです。ロビンとなんとか生きていこうとするのがほんとに健気、、。悪態ついててもそうしなければ生きていけないのがわかるだけに、胸が痛みます。この姉弟には、ほんとに幸せになってほしいと祈らずにはいられませんでした。
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ダッチェスが不憫でならなかった。それぞれの心の謎を解き明かすミステリー小説で,愛が故に起こってしまう辛いお話でした。ラスト1行ジーンときました。
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レビュー評価の良さに惹かれて手を取る。
イギリス作家なのに舞台はアメリカ…。何でだ~、と思ってたらあとがきにありました「犯罪小説を書くものにとって理想的な舞台だから」さすが、銃の悪魔(チェンソーマン参照)の産まれた国です。
さてさて、肝心の内容ですが、時間軸とか用意された舞台とか、まあ、壮大。そして例によって簡単にに引き起こされるティーンエイジャーの軽犯罪。さすが、犯罪小説に向いた国。前半はなかなか話が進まず翻訳小説苦手人種には辛い展開ですが、主人公ダッチェスが心開き始めるあたり(すでに200ページ超え)からはなかなかの展開で苦手人種にも割と行けます。しかし、この幸せボタンの掛け違いがどうにも満足感を得られず、無念の★3。どうか、みんな幸せになって欲しい。
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読んでいる間は、まあまあ面白いですし、文量が多い割にそれを感じさせないのですが、いざ読み終わってみると、そこまで記憶に残らず、よくあるサスペンス風ヒューマンドラマ映画を見終わった感じで、なんだか読後感はイマイチでした。
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ホロヴィッツを超えてこのミス海外1位ということで読みました。
読んだ感想としてまず感じたのが『ザリガニの鳴くところ』を読んだ時と同じような感覚だなと。
ホロヴィッツのミステリ的な面白さとは全く違った感じですね。
ハードボイルド的な香りも感じさせる人間ドラマは徐々に引き込まれ、中盤あたりからは夢中で読みました。また最初の事件がどう関係してくるのかが全く予想できませんでしたが、結末が主人公の想いと繋がっていくところにも涙でした。
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家族を守るためにならなんでもする“無法者”を名乗る13歳の少女ダッチェスと、海沿いの町、ケープ・ヘイヴンの変わらなさを大切にする警察署長ウォーク。30年前の一人の少女の死に囚われた人たちの物語。
とにかくすごい。心を揺さぶられる→
小さい弟ロビンのためになら何でもするダッチェスがとにかく読んでいてツライ。この子もまだ子どもなのに。変わらないことを求めるウォークもまたツライ。二人とも一生懸命守ろうとするのにその方法があかんやろ、って見えちゃうのがツライ。
後半はとにかく泣きっぱなし。小説でこんなに泣いたのは→
たぶん初めて。
魂が揺さぶられる感じがした。
帽子のくだりはマジ号泣。あかんやん、そんなん無理。
ラストもよ。それは考えなかった。
原題がWe Begin at the Endなんだけど、これを「われら闇より天を見る」って邦訳したのもすごい。
川出正樹氏の解説も良い。最高の一冊だと思う。
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ミステリー書評
読書レベル 中級〜上級
ボリューム 503頁
ストーリー ★★★★★
読みやすさ ★★
トリック ★★
伏線・展開 ★★★★
知識・教養 ★★★★★
読後の余韻 ★★★★
一言感想:海外作品が好きで、ミステリの中でも「ストーリー重視」という方にオススメです。このミス2023の海外部門1位に輝いた作品です。ストーリー重視という観点では「ザリガニが鳴くところ」に近く、人物の相関関係を頭に入れながら読み進める必要があります。登場人物も非常に多く、さらにその人物や背景の描写がとても細かいため、スラスラ読み進められる作品ではありません。少し上級者向けの作品ではないでしょうか。
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想像以上に良い作品。
海外ミステリは初めてなので、登場人物の多さや、訳本特有の言い回しに挫けそうになったが、事件の起こり以降は先が気になりすぎて、わりとすぐに読み終えてしまった。
われら闇より天を見る。終わりから始め?。
登場人物たちの運命に心動かされたり、ままならない展開に歯噛みしたり、大変面白かった。
ミステリだけれど、ヒューマンドラマ部分も比較的きちんとしていて、映画作品になったら面白そうだと感じた。そしてたぶん、ジョジョ好きにはささる。