紙の本
女性のシベリア抑留
2022/09/07 10:46
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
シベリアに抑留されたのは軍人だけではなかった。一般人も女性も収容されていたのだ。
中立条約を結んでいたソ連が終戦間際に突然満州に攻め込んできた。ソ連が軍人だけでなく一般人、そして女性にまで牙を向ける。陸軍病院にいる日赤から派遣された看護婦や満州で勤労奉仕で集められて結成された菊水隊の看護婦も避難を始めるが、ソ連に捕らわれ、収容所に入れられる。収容所で何があったのか、帰国した女性たちからの証言を集め、シベリア抑留の生活等の事実を丹念に拾い上げられた作品。
シベリアで抑留されたのは軍人、戦争に参加した一般人だけだと思ってました。自分の無知を嘆きます。すべての事実が表面化されることはないのでしょうが、取材は続けてほしいと思います。我々、日本人はもっと過去の歴史に目を向けるべきだと思います。
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【大きな反響を呼んだ「戦争と女性」に迫るノンフィクション】シベリア抑留者の中に女性捕虜が存在したことは、長く歴史の影に埋もれてきた。戦後七十年以上沈黙してきた女性たちの貴重な証言集。
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女性の抑留について本を読むのは初めて。
自分が何故抑留されなくてはいけないのか、いつ日本へ帰れるのか、明日は生きていられるのか、この状況下がどのようなものであったかのか抑留生活について語られている。
戦争に関する本を読んで少しだけほっとするのはそんな中でも国籍を超えた人同士の繋がりがあったということ。
本を読み人を思いやる、互いの気持ちを想像することが大切なことなのだと学べたかな。
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2022年12月9日に映画「ラーゲリ-より愛を込めて」が上映され、パートナーと鑑賞した。シベリア抑留の過酷さを今に伝える感動の作品であったが、残念ながら映画では女性が抑留されたことには触れられなかったように思う。
本書は、2014年8月12日NHK「BSスペシャル 女たちのシベリア抑留」の取材をもとに書き下ろされた書籍である。シベリア抑留は、実は女性も抑留され、厳しい強制労働や生活環境で生死を彷徨った。ソ連のハバロフクスの近隣で旧満州・佳木斬(ジャムス)等で働いていた日赤などから派遣された戦時救護員や近隣の民間人から応召された女性たちがソ連の捕虜となり、過酷な労働や生活環境の中でもたくましく生き抜く様を、語りたがらない生存者にも挫けず丹念に取材を続けて証言や手記などの取材記録を丹念に読み解き、女性被害者名簿を作成するなど気が遠くなる取材による書籍となっている。女性がソ連や満州にいたことで、性被害等の偏見から、社会でひっそり暮らし、過去を語りたがらない女性も少なくない。抑留中、ソ共の「アクチブ」となり、帰国を「天皇島への敵前上陸」と呼び、出迎える家族の手を振り切るようにして東京代々木の日本共産党本部に向かい入党した者もいた一方、「反動分子」とされた人々や、民主運動に否応なく巻き込まれ人々は、民主運動を牽引したアクチブへの批判を強めた。特に本書の最後に紹介される村上秋子の調査については、政治犯等が送られる極寒で最も劣悪な収容所で生き延び、日本への帰国を固辞し、ソ連で生涯を終えた女性の背景と経過の検証は息をのむ。
ソ連の崩壊や日本軍の記録の隠滅などもあり、今なお全容解明には課題も残るシベリア抑留を調査した著者に敬意を表したい。
捕虜の取扱に関する国際条約であるジュネーブ条約を知らない日本軍属や民間人は、時の軍政に言われるまま「生きて虜囚の辱めを受けるなかれ」と信じ込まされ、日本軍や民間人が捕虜になった場合の取り扱われ方を知らされなかったとする自己責任論で良いのかと考え込んでしまう。
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シベリア抑留というと、旧日本兵のことが念頭に来るが、これはシベリアに贈られた女性にフォーカスした作品。
確かに、歴史の狭間に存在を消されたのかもじえない。
敗戦ということがいかに重いものなのか思い知らされる。
現代でも同等なことが起きてると思うと胸が痛い。
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シベリアに抑留されて
いた祖父が帰還して、
私の母はこの世に生を
受けました。
つまり祖父がシベリア
で斃れていたら、
母はむろん私も私の娘
の存在も無かったわけ
です。
ところでシベリア抑留
は、
男たちの試練だったと
思い込んでいました。
しかし実は多くの女性
たちが、
同じく遥か極寒の地に
抑留されていたという
真実。
戦争に翻弄された彼女
たちの儚き運命。
その怒りの矛先をどこ
に向ければよいのか。
戦争が生み出すやり場
のない哀しさです。
そして今、七五年前の
満州と同じ状況が・・・。
百万人超のウクライナ
国民が、
シベリアやサハリンに
強制移送されていると
いう事実。
そう、本書に登場する
女性たちが現在進行形
で生まれ続けている。
この事実にどうやって
向き合うべきか。
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乏しい資料から何とかシベリアに抑留されていた女性たちの実態に迫ろうと取材を尽くしたことが分かる。
満州開拓や引き揚げを描いた小説は何作か読んできたが、ノンフィクション、しかもシベリアに抑留されていた女性たちがいたという、初めて知る事実にページをめくる手が止まらなかった。
世間の偏見に屈せず証言をした女性たちに敬意を表したい。
もともとはドキュメンタリー番組制作のための取材だったとのこと。機会があれば見てみたいと思う。
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シベリアに送られた女性たちがいたとは、想像を超えた体験をした方々とそれを丹念に、取材した人たちにただただ 敬意を
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小柳ちひろ(1976年~)氏は、同志社大学卒、映像製作会社テムジン勤務。2008年よりNHKの「戦争証言プロジェクト」に参加し、戦争に関わる数々のドキュメンタリー作品を製作。複数の作品で、放送文化基金賞優秀賞、ギャラクシー賞テレビ部門選奨、ATP賞グランプリ等を受賞。
本書は、2014年8月に初回放送されたNHK BS1スペシャル「女たちのシベリア抑留」(文化庁芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞、ギャラクシー賞テレビ部門奨励賞、放送文化基金賞番組部門・テレビドキュメンタリー番組奨励賞、ATP賞テレビグランプリ ドキュメンタリー部門優秀賞等受賞)の取材をもとに書き下ろしたもので、2019年に出版、2022年に文庫化された。
私はノンフィクション物を好み、太平洋戦争に関しても、これまで様々な作品を読んできたが、シベリア抑留については、石原吉郎『望郷と海』、辺見じゅん『収容所から来た遺書』、栗原俊雄『シベリア抑留』、また、満州からの引き揚げの実体験を描き、終戦直後に映画化もされた、藤原てい『流れる星は生きている』等を読んでいる。(尚、本書のもとになったNHKスペシャルは、不覚にも見ていない)
読了して、太平洋戦争に関わるある程度の知識があれば、このような事実があったことは、(妙な言い方にはなるが)比較的容易に想像できるし、大きな衝撃はなかった。太平洋戦争は、一般に知られる範囲でも、前線における戦闘(更には、病気や飢餓)、特攻、沖縄戦、原爆投下、そしてシベリア抑留、等々、あまりにも不条理かつ凄惨なものを残した。
戦争に限らないが、これまで歴史とは、敗者ではなく勝者が、弱者ではなく強者が作り、それを「正史」として残してきた。そうした意味で、太平洋戦争の敗者であり弱者であった、日本の女性たちの声を拾って、永遠に埋もてしまったかも知れない「女たちのシベリア抑留」を明らかにした本作品の意味は、極めて大きいと言える。(それでも、事実のほんの一部なのであろうが。。。)
著者も「文庫版によせて」に書いているように、ロシアのウクライナ侵攻により、100万人を超えるウクライナ人が捕らえられ、シベリアに送られているという報道は、今この時も、本作品に登場した女性のような人々がいるということを、我々に知らしめる。
戦争は、人間の行為の中で、最も愚かなもののひとつである。
我々には、その悲惨さを語り継いでいく義務があることを、改めて認識させてくれる一冊といえる。
(2024年2月了)