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難しいけれど、読んでいて何処か心地よくなる文章 何回か読んで良さを味わいたい
哲学を学んだ人は絶対すきな本だと思う
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全体としてとても面白かったけど、どれかピックアップして読むなら『血を分けた子ども』と『恩赦』がスリリング。
以下はいくつか作品のまとめと感想。
●血を分けた子ども
テラン(人間?)が、トリクというでっかい虫みたいな生き物に、奴隷的に囲われながら暮らしいている世界の話。過去は一方的な支配だったらしいが、今は共存の道を探る一派がトリクの政権で力を持ってるらしい。とはいえ、トリクはテランの体に卵を産みつけて幼虫を孵化させないと繁殖できず、そのためにテランの体が解剖同然の大きな傷を負うことは避けられない。テランの少年がその事実を目の当たりにし、大好きなトリクの子を自分の身に宿してあげるかどうか悩む、なんとも官能的な話。好き。
●夕方と、朝と、夜と
癌の特効薬の副作用により、癌よりも酷い遺伝性の病、デュリエ=ゴード症がうまれる。2世たちの病との向き合い方について。この病気の暴力的な症状、遺伝の仕組み、発症のルール、患者に共通する特性、その中でも特別な患者の存在、発症を抑える意外な発見。それらのアイデアがどれも魅力的だし、その事実に直面する若い患者二人の葛藤の描かれ方もとてもよい。
●話す音
脳の言語野周辺を損傷するとみられる病のパンデミックにより、世界は北斗の拳状態。言葉を失い、理性レベルが下がり暴力的な人々で溢れ、殺人も日常茶飯の中、程度の軽いもの同士が出会い、ささやかな幸せを願おうとするが、それも一瞬で壊されてしまう。そんな中、病の影響を受けていない子どもたちに出会い、希望を見出す。
作者にとって、希望とは言葉そのものなんだな、と沁み入る。
●二つのエッセイ
何かに向かって頑張ってる人、特に今うまくいかなくて悩んでる人は読んだらとても元気が出ると思うし、頑張ろう!って活力がわくとおもう。そういう意味でとてもよいエッセイ。
「閃き」など忘れること。習慣のほうが当てになる。閃きがあろうとなかろうと、習慣は自分を支えてくれる。--『書くという激情』
●恩赦
地球に植民してきた異生物と共存していくに至る過程をある定点から見る話。
異生物の見た目の設定がいいし、地球に降りたってから人間を知るためにやって来たこともとても納得感があっておもしろい。それに対する人間の対応の残忍さ、愚かさの描かれ方も辛いけど、物語を重層的にしてる。
主人公はこころざしの高いすごい人物のように読めてしまうんだけど、最後にどんでん返しが待っていて、その落とされ方、絶望感というか、それもとてもよい(?)です。
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以下は、この作家のテーマを表現していると思えた部分を二つ引用。
私は貧しい黒人で、しかも女性で、私を産んだときの母は十四歳でろくに本も読めなかった。子ども時代の半分は自分の家もなかった。あなたの目には、それで底辺に見えるのかしら?--『マーサ記』
不正を働いたという証拠もないまま、人は職も自由も剥奪され、名声を踏みにじられるということに、私がまだショックを受けることができたころの出来事だ。--『恩赦』あとがき
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図書館の新しい本のコーナーにあったこの本を何気に借りて読んだ。
風変わりな流れ、登場人物の繋がりが分からず30数ページを読み切ってももやもや感だけが残った。でも愛を感じた。これが評価されたSF小説なのか、この本以外の本も読んでみたいと思った。
書くという激情の短編で、閃きより習慣が大事で、粘り強さを実践する事、大事なのは「粘ること」、この編とあとがきが印象に残った。
二つのエッセイは示唆してくれる。
火星探査機の火星着陸地点に著者の名前でネーミングされたと記載された箇所を見つけ、アメリカにおける著者の存在の大きさを知った。黒人女性SF作家としての先駆者、開拓者として記憶に残るだろう。
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「血を分けた子ども」★★★
「夕方と、朝と、夜と」★★★★
「近親者」★★★
「話す音」★
「交差点」★★
「前向きな強迫観念」★★★
「書くという激情」★★★
「恩赦」★★★★
「マーサ記」★★★
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「血を分けた子ども」kawade.co.jp/sp/isbn/978430… 前情報ゼロで読んだら想定外のジャンルだった(何回目) 知ってたら手に取らなかったからうっかり読めて良かった!社会問題や実際の事件に想起した作品もあるそうだけどとにかく想像力が爆発してる。トーンはディストピアなのに不思議と愛や温かみも感じる
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過去の短編とエッセイ、新作短編をまとめた本。
表題作はネビュラ賞、サイエンス・フィクション・クロニクル賞、ローカス賞、ヒューゴー賞を受賞した、バトラーの短編の代表作。
エッセイ二篇はどちらも「書くこと」について書かれていて、特に『書くという激情』はプリントして持ち歩きたいぐらい沁みる。大事なのは「粘ること。」
短編の方では新作短編のどちらも好きだけど、特に『マーサ記』がよかった。神に選ばれたマーサが、人間にひとつだけ変化を与えて「いまほど破壊的でなく、より平和で持続する生き方」をするよう、神と対話しながら考える。到達するのが「眠るたびに見る夢に現実味を持たせ、個人の希望や興味を叶える夢を見させて、自尊心や満足感を与える」ということだったのも、よく考えられていると思う。
あと、神とマーサとの会話がステキすぎる。後半でツナサラダのサンドイッチを神に勧める辺りなどもう悶えるぐらい。ドラマ版『ウォッチメン』のドクター・マンハッタンとシスター・ナイトの関係性や会話のようなロマンチックさがある。
各作品の終わりにそれぞれあとがきが付けられていて、執筆に至る背景や着想を得たものなどについて書かれていて、それも興味深かった。
目次で「新作短編」の文字列を読んでご存命とばかり思っていたけど、著者は2006年に亡くなっている。
訳:藤井光
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短編集5編、エッセイ2編、新作短編2編
表題作のゾッとするような生理的に無理と感じる宇宙人との共存、生殖。そしてそこに生じる理解と絆のようなもの。人間に似た宇宙人ではなく全く思いがけない形で現れるバトラーの宇宙生命体に驚き、そのコンタクト相互理解の不毛と少しの希望が絶望感を救ってくれた。
SFとしてはもちろん哲学倫理として面白い。エッセイもバトラーの書くことへの決意表明のようで力強い。
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『筆者の解説付きで二度おいしいSF短編集』
筆者の様々な体験、問題意識を主題として描かれたSF短編集。テーマは多岐に渡り、全体的に暗い雰囲気の中にも温かさが感じられる、経験したことのない様々なSFの世界が楽しめた。
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作者はアメリカの数少ない黒人女性SF作家。
今作は、1980年代から晩年に至るまでの短編およびエッセイを収録した作品集である。「血を分けた子ども」と「話す音」はヒューゴー賞やネビュラ賞を受賞している。
暴力による支配や性搾取についての問題意識。言語や身体を通じて、物語を物語ることの意味。それらのテーマから紡ぎ出された物語は強い信念を感じるものだった。
表題作は一人称の短編SF。「保護区」で生活する「ぼく」と、人間を支配下に置く多足類の生き物「トリク」の物語。支配・非支配の関係性は様々な階層のメタファーを内包しており、切実な問題意識を読者に与える。残酷でいながらどこか官能的な筆致も斬新である。
本作の面白さは力関係の逆転劇を描くことではなく、覆らないその関係性からどんな感情が起こり、どう身体が反応するのかを描いている点だろう。男性の妊娠という本来とは逆の関係性から、その暴力性や主従関係を暴き出していた。
各作品の終わりに付いている作者による解説や、エッセイも面白く、作品理解の役に立つ。暴力的、あるいはグロテスクに感じる描写はあるが、そこにこそ作者が伝えたいメッセージがあるのだと思うと痛切な気持ちになった。
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ジャネル・モネイが崇拝する、とかいうのが目に入って借りてみた。やっぱ黒人女性だった。「すげーぶっとんでる」とか「ありえないほど繊細な表現」とかそーゆー感じではない。なんだかSFを読むのも書くのも「必要ないしがらみ」があるような気がしていて、なんならそれしかない本も過去に何冊か手にしていて、この人の作品はそういうめんどくささを省いてるので、読みやすい。それ故、説明がないとわかんないーところもあるんだろうが、説明(言い訳)が入るとSFに関してはキリがないジャンルなので、いっそのことこの人のように書くのが理想。
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途中まで読みました。SFをしばらく読んでない身としてはなかなかハードな一冊でしたが、久々に空想の世界に旅立つことができました。またここに戻ってきたい。
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SF。短編集。
SFでない純文学的な作品やエッセイもあり。
地球外生命体と人類の奇妙な関係を描いた2作品、表題作と「恩赦」のインパクトが凄まじい。世界観に圧倒された。
「夕方と、朝と、夜と」も雰囲気は違うが、とても面白い。
エッセイも良い。
傑作。今年読んだ小説のベスト3には入る。
アフリカ系女性の書く小説、好きかも。
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SL 2023.3.18-2023.3.20
SFは自分で世界を創り出せるからなんでもアリだなと思っていたけど、この短編集では、その創り上げた世界は作者の考え、主張、訴えたいことが根底にあり、しかも今の時代の出来事を下敷きにしているんだと気づいた。
地球外生命体や遺伝性疾患、伝染病によって、極限状態で人間性はどうなるのか、そもそも人類とはどういった存在なのか。作者は自らの経験も踏まえてSFの世界にそうした主題を描き出そうとしているのだと感じた。
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なんといっても表題の「血を分けた子ども」がよかった。いろいろな解釈ができそうな、異形の生物との関係性。映像化したらおもしろそう。(リアルなCGじゃなくてアニメ希望)どの短編も最初、世界観や設定を理解するのに時間がかかった。それぞれのあとがき(作者コメント)や、作者の出自を踏まえると、なるほどと思う。
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ヤマシタトモコ先生が読まれていたので読んでみた。
久しぶりにSFを読んだので、最初は世界観や人物関係を理解するのに苦労した。
表題作の「血を分けた子供」では特に読み進めるのが難しかったが、少しずつ不思議な社会システムが理解できたところでテーマである愛が浮かび上がってきて圧倒された。
自己破壊的な遺伝病に苦しむ「夕方と、朝と、夜と」は精密な設定で読み応えがあった。作者が後書きでお薦めしていた本もいつか読んでみたい。