投稿元:
レビューを見る
まずはこの言葉を引用したい。
「人間は自分に与えられた職業を通じて世の中のために少しでも尽くさなければならない。それが人間の義務である。」三船敏郎 小林 淳 著「三船敏郎の映画史」
様々な職業を描いた絵画を通じて、その時代背景を解説していく。
描かれている職業は
闘牛士
侍女
香具師
宮廷音楽家
羊飼い
女性科学者
道化
警官
思想家
ファッション・デザイナー
大工
看護婦
政治家
修道女
船頭
異端審問官
傭兵
女優
子どもも働く
天使も働く
となっている。
雑多な感想
アリーナは砂という意味。闘技場の血を吸うために敷いた砂からきたという。
ヴィンターハルター「女官たちに囲まれたウージェニー皇后」このドレス、肩ずり落ちないのか。この人、エリザベート描いた画家だよな。
ユーディドって「ユダヤの女」という意味なのか。個人名だと思っていた。いや、個人名なのか?中野さん、アルテミジア・ジェレンティスキのユーディドが好きだよなあ。それともジェレンティスキが好きなのか。
バッハ次男、転職おめでとう。いや、そりゃ、フルート奏者とクラヴィーア奏者でそんなに給料に差をつけられたら、誰でも嫌気がさすよ。
ヒュパティアという女性科学者が古代にいたことを私は知らなかった。調べてみようと思う。マリー・キュリーがガヴァネスをして姉に仕送りをしていたのは有名だが、そこの家の男性と恋愛関係になり失恋した、ということは知らなかった。それも切っ掛けの一つとして、マリーがフランスに旅立ったのだから、人類には良かった、というのは言い得て妙。マリーがパリに出て、たった12年後にノーベル賞を受賞する。ガヴァネスとして雇っていた家はどう思ったか、12年だったら、覚えているのではないだろうか。高校の時にマリーの結婚生活の文を英語のリーディング課題で読んだことがある。女性の英語教師がピエール・キュリーを散々罵っていた。その英文には子育てで大変なマリーにピエールが「夫の世話はしないのか!」みたいなことを言っていたからだ。マリーはうまく宥めていたけど、やはりマリー超人だと思ったことを思い出す。
道化が職業になるのは今と意味合いが全く違うように思う。この書では触れられていないが、私の大好きで強烈な印象を持っている絵にベラスケス「宮廷道化師セバスティアン・デ・モーラ」がある。見世物小屋がかつて日本にもあったことから人を嗤うのは、もう人間の本能なのかもしれない。映画のジョーカーのような化粧がいつからなのか、考えてしまう。
ラ・トゥールと言えば、「いかさま師」と思っていたので、「大工ヨセフ」がラ・トゥールの作とは思えなくて、びっくり。ろうそくの光の描写が見事である。
表紙にも使われている「じゃあ君が最後にお父さんを見たのはいつだったの」。
物語の一場面のような絵。少年の純粋さと狡猾な笑みを浮かべた男性の対比が凄い。慈悲深いと言われる神に仕えるのに、異端者には残酷になることが出来る���宗教に疑問を感じる多くの人が不思議に思うことの一つではないだろうか。
世界最古の職業は男は傭兵、女は娼婦。その傭兵で有名だと言われた「スイス人傭兵」。大変派手である。ハイジのおじいさんが元傭兵、というのは「トリビアの泉」で知っていたけれど、スイスが傭兵供給国から金融国になっていくのは面白い。