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素敵な装丁に惹かれて手に取りました。1930年代のお話だし、翻訳ものだし、二段組だし、読みきれるかな、、と不安になりましたが、全くの杞憂。最初から最後まで、読みにくさも感じることなく物語にのめり込んで読了しました。
4人の主人公たちはみんな親を亡くした子供たちで、本来ならば大人に守られるべき存在。しかし彼らの周りにはすべてを奪う非道な大人たちがいて、自分たちの力でなんとか進んでいくしかない。
僅かな希望の光である"我が家"を目指す旅のなかで、出会いと別れ、希望と絶望を繰り返しながら、それぞれの心は成長していく。アルバートとオディの深い兄弟愛に感動したり、インディアンのモーズの自身のアイデンティティと向き合う姿に苦しんだり、3人にとっての妹であるエミーの愛らしさに癒されながら、一緒に旅をしている感覚で読んだので、最後に終わってしまうのが悲しいくらい。
家族、宗教、差別など、色々な要素が、音楽とともに彼らの旅に詰まっていた。読後感もとても良く、読書ってやっぱりいいなぁと思えるような、素晴らしい物語でした。日本でももっと話題になってもおかしくないと思う。
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少年の冒険ものだけど、人々の交流に重点が置かれているように感じた。人間の様々な面を、少年は幼い純粋な心を通じて体感する。だが、その経験は厳しさと言うよりも、温かさのように感じた。
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1932年夏、ミネソタ
物語の舞台は大恐慌時代のアメリカです
主人公は12歳の少年、オディ。
ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院で暮らしていた。
施設の中で唯一の白人である孤児のオディと兄のアルバートは、ある事件から施設に居られなくなり、逃亡することになる。
親友でスー族のモーズと、竜巻で母親を失ったばかりの幼いエミーと共に、兄弟の叔母がいるセントルイスへ向かう。
4人はカヌーで川を下り、ミシシッピ川を目指すのだが…
ひと夏の冒険物語なんて甘い話じゃない
これは本気で命懸けなんだ
私はこの本を読み進めていくうちに、アメリカの歴史的背景についての様々を知ることになる。
彼らが受けてきた虐待、ネイティヴアメリカンに対する人種差別、大恐慌という困難で貧しい時代等…
知れば知るほど苦しかったが、旅の途中で出会う人々の優しさ、交流を通して成長していく彼らの逞しさに胸がいっぱいになる。
彼らが出会った人々は、自身も困難な生活をしているにも関わらず、手を差し伸べ、導き、家族の大切さを教えてくれた。
どの登場人物も魅力的で、まるで私の目の前に存在するかのように生き生きと描かれているのが印象的。
これはおよそ90年も前のアメリカの物語だが、現代の日本に住む私達にとっても決して遠い国の話ではないと思った。
*大切な場面で、オディのハーモニカが出てくるのだけど、それらの曲をYouTubeで聴いてみました
より物語に入り込めるのでオススメです*
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すごく読みやすくて深く没入でき、爽やかな読後感。
子どもがその年ごろになったらぜひ読んでもらいたい話でもある。
頼れる家族、仲間という括り、どんなに大変な環境でもへこたれず、他人に手を差し伸べられる人々(逆の人もいるが)、勇気をもらえる話だと思う。
1930年代のアメリカのことは無知だったが、インディアンなど、急に生きづらくなった人が多かったんだなぁ、、
あと過去が見えたり未来が見えたりという人もいるが、最初こそ"リアルさとは…"と思ったが、だんだん抵抗がなくなっていく不思議。
折を見て読み返したい。
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1932年、ミネソタ。ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院。施設の中で、唯一の白人である孤児のオディとアルバート兄弟は、生意気な態度で日頃から院長に目を付けられていた。ある日、横暴な管理人をふとしたことから殺してしまったオディは、兄のアルバート、親友でスー族のモーズ、竜巻で母親を失い孤児になったばかりの幼いエミーと共に、教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。オディとアルバートのおばが住んでいるというセントポールに行くため、四人はカヌーで川を下り、一路ミシシッピ川を目指す。旅の途中、出会いと別れを繰り返した四人が知った秘密とは―?
著者の作品を読むのは、「ありふれた祈り」以来。少年たちの成長物語として、強くお勧め。
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・あらすじ
1932年大恐慌時代のミネソタ州が舞台。
孤児であるアルバートとオディ(オデュッセウス)の兄弟はリンカーン救護院というネイティブインディアンの子供たちが集団生活を送る施設で暮らしていた。
横暴な施設長や管理人から支配され、鞭を振るわれる日々。
そんな中オディは横暴な管理人を殺してしまい、兄のアルバート、スー族のモーズ、孤児になったばかりのエミーとカヌーにのってミシシッピ川を下り兄弟のおばがいるセントポールを目指す旅に出る。
・感想
「ありふれた祈り」の姉妹作らしく「祈り、信じ、ゆるすことの大切さ」という明確なテーマがあった。
川を下る中で様々な人々(家族)と関わりあい12歳の少年オディは成長していく、正統派な成長冒険譚。
住む場所と家族をもたない「さすらい人」である4人の子供たちは旅を続ける中で、理解し合い反発し繋がりを深めていく。そして自分の土台となる「家族・居場所・自分の家・ルーツ」を見つけていく。
現代日本では宗教というか信仰心は割と敬遠されるものではあるけど「信じるものは救われる」という精神性自体は大事なものだと思ってる。
自分の土台となるもの、根をはれるものがある人はやっぱり強いとおもうし。
特にエピローグがジンときた。
「広大で不可解な大きな流れがあってその流れは捻れていたり澱んでいる。それらをコントロールしようとしたり、流れる先を心配するのは無意味である。」
一種の諦観ではあるけど、だからと言ってやるべき事から逃げたり目を逸らすのではなく、人々がお互いを助けあい「信じて、祈り、ゆるす」事が大事だと説く作者の一環した哲学があった。
時代的に大恐慌、貧困、ネイティブインディアンへの迫害など様々な社会問題になすすべなく振り回される市井の人々もかかれている。
登場人物たちも個性的でよかった。
好奇心旺盛で無鉄砲な行動力のあるオディ。
年長者として責任感をもち思慮深く、弟を大事に思うアルバート。
幼少期に過酷な経験をしたにも関わらず大らかで優しいモーズ。
不思議な力をもち、天真爛漫さで3人を癒すエミー。
子どもたちが辛い目にあうけど、過酷な施設生活の中で味方となってくれたハーマンや生きていく上で必要な知識を授けてくれたボーイスカウトのミスターサイファーがいてくれて良かったー。
あと登場時怪しすぎてお布施目的のエセ新興宗教団体に思われた「神癒伝道団ギデオンの剣」のシスター・イヴも強い信念を持った誠実な人だった…割と終盤まで怪しんでてごめん。
おばの家に辿りついてからももう一展開あって、黒い魔女まじで最悪な種類の人間だなって感じだった。
解説のおかげでこの作品がより深く理解できた。
主人公の名前がオデュッセウスだしホメロスの一大英雄叙事詩「オデュッセイア」のテーマが「故郷への帰還(らしい)」なので、そこにオディの動機があるのも納得。(ただ私の知識は世界史の授業とFGOから得た偏ったものw)
ミシシッピ川と4人のさすらい人が描かれた表紙のちょっと切ない絵も良かった。
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“ひとりじゃないから”
“ぼく”ことオデイら4人は、孤児院から脱走してミシシッピ川をカヌーで下りセントルイスへ旅をする。
その道中でさまざまな出来事と遭遇し、やがて4人はそれぞれの道を探し始める。
少年たちの成長を描くロードムービーとして、王道を進む物語だが、さすが「ありふれた祈り」の作者で読み進めることに飽きさせない。
ネイティブ・アメリカンの処遇や世界恐慌がもたらした農民たちの貧困と流浪など、20世紀初頭の出来事が挿入されており、読後感は濃厚。
ただ、同時代を描いたスタインベック『怒りの葡萄』と比べてしまい、力強さに物足りなさを感じた。
でも、面白かったです。