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二段組はとにかくボリューミー。
オディたち四人の成長物語だけど、おとなに振り回されたかわいそうな子どもたちのはなしとも思った。
結局、オディはどの場面がいちばん幸せだったんだろう。
過去を回想したはなしなわけだけど、みんなで黒い魔女から逃げてカヌーにのって川を下った冒険の日々は忘れがたい思い出として、孫たちに語り続けていたんだから、やはりアルバート、モーズ、エミーの四人でいたときが辛くても幸せだったんだろうと思った。
黒い魔女がオディの本当の母親を恨んでいたから復讐のためにそばに置いていたり、本当に腹が立つこともたくさんあるけど、気に入ったのは多種多様な人たちが出てくるところ。
ユダヤ人コミュニティーのはなし、インディアンのつながり、宗教のこと、どれもアメリカぽいなーと面白く読めたところは良かった。
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ゲラ読みモニターに当選し、一足に読ませていただく機会に恵まれた。2段組約470ページという長い物語だけれど、4人がカヌーで川を下っていく間、ずっと一緒にカヌーに乗っていたような気がする。善い人にも悪い人にも出会い、ひどい目にあったり助けられたりしていくので、成長物語として、冒険物語として面白く読んでいけるけれど、ラスト30ページほどは、彼らが生き抜く現実の圧倒的な展開に驚く。決して軽くはないけれど、後味はちょっと風が吹いたような。
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教護院から抜け出し、ミネソタからセントルイスまでのお話。旅の途中で幾多の困難に遭遇しつつ、仲間と協力し合いながら成長していくある意味王道な筋運びなので安心して読めます。ハーモニカとアメリカ民謡が大事な要素として出てくるので、是非曲を聴きながら読みたいところ。今の時代サブスクでもなんでもですぐ探せるので。
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1932年に冒険へと出た少年たちの物語。孤児であるオディと兄のアルバート兄弟。兄弟と同じ教護院で暮らすモーズと母を亡くし孤児になったエミー。教護院での苦しい生活から逃げ出し目的地までの四人の旅が始まる。カヌーで川を下り野宿をしたり人と出会ったり。そして教護院の追手から逃げる。たどり着いた場所で出会う人たちとの交流と別れ。その中にある家族への想いや恋。生きていくことの厳しさ。大人を信じられない少年たちが徐々に見つけていくもの。感じ取っていくもの。読み終わってもオディが吹くハーモニカの音が残り続ける。
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1932年のアメリカを舞台とするロードノベル。
“インディアン”の子供達が集団生活を送るリンカーン教護院に、オディとアルバートの白人兄弟がいた。ある日大変な事件が起き、2人は友人のモーズ、孤児のエミーと共に脱走し、セントルイスを目指すが……。
12歳のオディはその生意気な言動で様々なトラブルを起こし、なかなかに苛つかせてくれる。でも憎めない少年だった。軽く超自然要素も入り、読み応えのある大作だった。タイトルは皮肉か真実か悩む。
『ありふれた祈り』の姉妹編らしいが未読。本作がとてもよかったのでそちらも読みたい。
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ロードムービー見ているよう。少年と少女が川を下り、町にたどり着く。そこでの人との出会いでいやおうなく成長する、風景やハーモニカの音を背景に壮大なストーリーが繰り広げられました。第6部の展開に胸を打たれました。エピローグも大変印象的。こんな少年たちに出会うことはないだろうけれど、手を差し伸べられる大人でありたいと思いました。
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『ザリガニの鳴くハックルベリー・フィン…みたいな』
早くも本年の最高傑作が…
『ザリガニの鳴くところ』が好きな人にオススメの一冊!
表紙もどことなく似てますね…
4人の子供たちの大冒険、是非、ご堪能ください!
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オディッセウスが、イサカへと帰る物語。キュキュロプスは院長なのか?
先住民や宗教団体の話も単なる挿話でなく語られるので、ちと長い。
初だったので、姉妹編という作も読んでみる積りだが、メインたるシリーズ物の翻訳が途絶えていて、手を出しにくい。
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この長く苦しい子どもたちの旅に最悪を想像し、現にそうなりつつある場面に何度も遭遇したけれど、最後は報われたことでこのタイトルにも合点がいった気がした。読み終えた今はただ、胸がいっぱいだ。
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素敵★5 幼く貧しい少年少女たちの逃避行… 人生と家族について学び多き物語 #このやさしき大地
■あらすじ
1932年のアメリカの小さな街。ある教護院でネイティブアメリカンや孤児たちが、貧しくも辛い労働を強いられる暮らしをしていた。主人公の兄弟と友人たちは、問題を起こしてしまい教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。
彼らは自分たちの家族を見つけるため、密かにカヌーで川を下っていく…
■きっと読みたくなるレビュー
めっちゃいい話★5
さすがはアメリカ産のミステリー、物語として完成度がバチクソ高い。彼らの人生をずっと傍から見ていたくなるような素敵な小説でした。
本作の良いところをあげるとキリがないのですが、もっとも私の心を打ったのは家族と仲間の描き方。主人公の少年少女たちはもちろん、この物語に出てくるすべての人たちが大事にしている価値観。
こんな不遇の時代、辛く貧しい環境だからこそ、大切な人と寄り添って、それこそ必死に生きていく。いま我々が生きている豊かで個人至上主義の時代では忘れがちな、とても重要なことを教えてくれます。
そして主人公である少年少女たちへの想い…
彼らを応援したり、生活を支えるなど何かをしてあげるというよりも、私はただ手を握ってあげたくなりました。
〇児童虐待
私がこれを許せない理由は二つ。
・暴力と恐怖によって子どもたちの主義主張を奪い、未来が閉ざされてしまうから
・力の強い者が全て正しいという理屈を子どもたちが学んでしまうから
古の時代も、現代も、これから未来も、絶対に許したくない。
〇人種差別
アメリカのリアルな歴史を学ばせていただきました。
何処の国でもある社会問題ですが、偏った価値観に縛られずに、話し合い助け合うことが不可欠です。
〇経済格差
いつの世にも存在する、その時代や環境に馴染まない人たち。
特に現代では顕著な、自分だけが得をすれば良いという考え方…手を取り合って生きていけないものなんでしょうか。
〇豊かなキャラクター
登場人物の全員が個性をもって生き生きと描かれていてスゴイ。
強みや弱み、後悔している過去、恨み… ひとりひとりの人生をまるっと感じることができました。
〇仲間との関係性
それぞれが大事にしている価値観や信条。仲間を大切に思いながらも少しずつすれ違っていく。子どもたちが新しい人との出会いや環境変化によって、どれほど影響をあたえ、成長に寄与するのか。
微妙な心の揺れが胸を打ち、ただみんな幸せになって欲しいと願いました。
■推しポイント
人は何のために生きているんでしょうか。
本作の主人公である彼らは、川を下りながら、街を転々とし、様々な人々と出会い、別れながら生き抜いていく。そこには楽しいことばかりでなく、むしろ辛いことや悲しいことばかりで、涙を流すことも多い。
しかし人が苦労しながら暮らしているこの大地は、きっと優しさに包まれている。何故なら、苦労している人のとなりにも、また人がいるから。
やっぱり私は、人の笑顔を見るために生きていたいな。
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1932年の米国、白人で孤児のオディとアルバート兄弟は、ネイティブアメリカンの子どものための教護院で暮らしている。暴力的な管理人にムチ打たれ、もとは監獄の独房だった反省室に入れられたり、過酷な労働をさせられたりしていた。そんな管理人に殺されそうになった時、逆に管理人を殺してしまう。兄弟は仲の良いモーズと竜巻で母親を亡くした幼いエミーとともに、教護院から逃げ出す。4人はカヌーで川を下り、兄弟の唯一の親戚であるおばの住むセントルイスうを目指す。
エミーを誘拐した犯人として警察に追われながら4人は様々な出会いを経て川を下る。著者自身が「ハックルベリー・フィンの冒険」のアップデート版と書いているが危機感迫る冒険である。時代背景を差し引いても、なかなかハードだ。ミステリーとの紹介文もあるが、これは4人の冒険物語だ。
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長きよき物語を読ませてもらった。アメリカの歴史には詳しくないし、寒い時代を肌で感じたこともないせいで、本当にこんなにひどかったのだろうかという、平和ボケした違和感にはつきまとわれた。ただそれ以上に、目的地に向けての逃避行と、それにまつわるいくつかの出会いはどれも面白いものだったし、子供なりの誤解や失敗も隣り合わせでスリリング。ともすればオディとアルバートの兄弟の関係が薄く見えそうなほどに、いい四人組のきょうだいだった。
それにしてもモーズが(エピローグで成人してからも含めて)いいやつすぎてもう。
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1932年、ネイティヴアメリカンの子どもたちが集団生活を送るリンカーン教護院の施設から逃げたオディと兄のアルバートにモーズとエミーの4人。
彼らが、オディとアルバートのおばさんが住むセントポールを目指して、カヌーで川を下り旅に出る。
劣悪で過酷な労働を強いられた苦痛から逃れ、新しい人生へと希望を持っていた旅であったが、行く先々でもさまざまな試練があった。
冒険ということばよりももっと深くて重くてそして、貴重で価値がある体験のようだ。
いろんな家族や大人たちと出会うたびに彼らにとっては敵なのか見方なのかを探りながら、助けたり援助してもらったり、そして導いてもらいながら成長していく姿は感動でしかない。
終盤からは予想外の展開になり、読む速度も増す。4人の絆の深さに凄さを感じながら時には対立し、離別するのかと思ったがラストは良かった。
時折挟むオディの物語やハーモニカのメロディが情緒を増して人生の旅という感じがした。
どんなに厳しい環境であっても諦めずに進んで行くという力強さやお互いの思いやりなどの優しさ、信頼関係などたくさんのことを気づかされた。
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アメリカ、大恐慌時代、4人の少年少女がインディアン救護院を抜け出し、カヌーでミシシッピ川を下ってセントポールのおばの家を目指す。黒い魔女と過酷な暮らし、虐待、神は竜巻。酒の密造、家族を失った農夫、癒しの伝導団、農園を失った家族、女の家。
歴史小説なのですね。記憶に残る人がいるくらい、現代に近いように思えましたが。
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これは超絶好きなやつ。
アメリカ中西部を舞台とする、悲運にまみれた少年少女達が旅路の中で過酷な現実をくぐり抜けつつ逞しく、そして眩しいほど真っ当に成長してゆく物語。
いわゆるロードノベル。
似たような雰囲気の作品でぱっと思いつくのは『東の果て、夜へ』なのだけれど、あれは前半がいまいちだったのに対して、本作はもう最初から最後まで胸を掴まれっぱなし。
いじらしい展開、残酷なまでの運命の悲劇という点では『われら闇より天を見る』の色合いも持っているが、あちらよりも幾分穏やかな心持ちで少年少女の顛末を見守ることができる。
時は1932年ミネソタ。
幼くして父母を失った兄弟(兄アルバートと弟オディ)は当時先住民達の浄化政策としてアメリカ各地に設立された寄宿施設のひとつであるリンカーン救護院に身を寄せることになる。
行儀よく生活するアルバートをよそに、オディはイタズラや懲りない言動で心無い悪徳職員に目をつけられ、余計な難癖を自ら呼び寄せるような日々を過ごす。
徐々にではあるが悪化の一途を辿る生活の中、一縷の光が見えたと思いきや、絶望的な嵐に見舞われ大切な人とつかの間の希望を失う。
さらにはふとしたはずみで悪徳職員を殺めてしまう。
表面的にはいい子ぶっているが誰よりも弟思いで機械にめっぽう強い兄アルバート、親友で先住民をルーツとするモーズ、嵐で母を失った不思議な力を持つ妹的存在のエミーと共に、セントルイスへと続くギレアド川を下り逃亡する生活が始まるさすらいの4人。
もうとにかく行く先々で出会う困難、過ち、悟り、裏切り、真実との対面、ときに甘酸っぱい恋の展開が秀逸。
彼らの境遇を寓意で包み込み、美しく核心的な”おはなし”に仕立て上げるオディの語り、オディが奏でるハーモニカから溢れる音楽が物語の魅力をさらに引き立てている。
『名探偵のいけにえ』で感じた、史実をベースとするフィクションに対するエクスキューズの違和感についても、「私が語った話のうち、ある部分は真実であり、あとは…そう、薔薇の茂みに咲いた花と呼んでおこう。」なんて巧みな表現をしてくれており、何もかも満足。
この物語を執筆するきっかけとなった『ありふれた祈り』もおすすめ。