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2022年9月22日初版
水島爾保布による表紙とカラー挿絵が巻頭、文中の挿絵が随所にあり、豪華。
『人魚の嘆き』
清王朝時代南京の貴公子が主人公。贅を尽くしたが現状に満足せず、張り合いのない退屈な日々を過ごしていたが、いよいよ人魚を買うことになり有頂天に。人魚の美しさの形容が饒舌な谷崎氏の表現でめまいがしそう。香港からイギリス行きの汽船に乗った春に哎呦(がいゆう)一声して水中に沈む人魚との一瞬の再会。
人魚に関心を持って、他にも人魚を題材にした作品があるらしい。
『魔術師』
中性的な魅力の魔術師に惑わされる様子が迷宮のような公園で迷子になるような動悸を感じて読み進めた。結末はあっという間。
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人魚に恋をする貴公子、魔術師に魅せられ半羊神と化す幻想世界に遊ぶ名作。水島爾保布の挿画を口絵まで完全収載。〈註解〉明里千章〈解説〉中井英夫/前田恭二
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2作品とも、どこか絵本や民話のようなお話。この世のものとは思えない美しさに魅入られる人間。
旧仮名文字のまま収録されていて、今はほぼ使われていないような美しい言葉にどきどきする。注釈はあるが自分で意味を予測しながら読むのも楽しい。
また、水島爾保布の挿絵が美しすぎる。水島氏に関する解説も丁寧なのでとても良い。谷崎はやっぱりおもしろい。
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水島爾保布によるカバー画・口絵・挿絵を収録した『人魚の嘆き・魔術師』(春陽堂、1919年)を文庫で再現したもの。
若くして莫大な資産を受け継いだ中国の貴公子がオランダ商人から人魚を買う『人魚の嘆き』、美貌の魔術師が操る魔術を見に行く『魔術師』は、どちらも耽美的な作風の大正六年(1917年)の短編。仰々しい漢語が多いのが少々読みづらい。ビアズリー風の水島爾保布の絵は作風にマッチしていて、とくに肉感的な人魚が印象的。巻末の水島爾保布小伝も興味深い。
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物凄く表現が多彩で頭の中に浮かぶ映像の解像度がどの本よりも高かったと思う。人魚への恋と魔術師への羨望、2つの非日常に魅せられ結末は全く別の方向へ。注解は多いけど、気にならないぐらい続きが気になってページを捲る手が止まらなかった
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かなり良かった。丁装と挿絵が美しいだけでなく、日本語の美しさも際立っていた。「人魚の嘆き」「魔術師」どちらのお話も主人公が美しさに魅せられるお話なので、どこをとっても美しい本、という感じだった。
谷崎潤一郎は「痴人の愛」を読んだことがあったのだが、文体が古い(固い)割にスルスルと読めるのが特徴だなと思う。
実際には本の1/3程が註解と解説なのだが大満足だった。