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面白い、面白すぎるぞ!中国SFブームの火付け役、ケン・リュウによるアンソロジーであり、収録作品はいずれもハイレベル!現代中国SFの層の厚さを感じることができる。『折りたたみ北京』に続く第2弾の作品集だが、熱量は全く落ちていない。あちらがアイデアに重きを置いているとしたら、こちらは中国の歴史や情緒を強く意識しているように思う。
お気に入りは「おやすみなさい、メランコリー」「月の光」「金色昔日」「始皇帝の休日」「未来病史」。中でも表題作の「金色昔日」が素晴らしい!近代史の時系列を逆転させ、時代に翻弄される男の人生を描く。一読、味わった事の無い感覚に襲われ、流した事の無い涙が込み上げてきた。
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近年スマッシュ・ヒットを飛ばし続けている現代中国SFのアンソロジー、2019年に発売された「折りたたみ北京」に続く第二弾が満を侍して発売。SF者の期待感を表すかのような分厚さ。「折りたたみ北京」の1.5倍ぐらいになっている・・・(^_^; 早川書房さん、紙の文庫本は上下巻に分かれても構いませんので一冊あたりの厚みを抑えていただけないものでしょうかね〜。紙の文庫本にとって、「携帯性」ってとても重要なポイントだと思うんですけどね〜〜。
閑話休題。
一通り読んでみて、「折りたたみ北京」を読んだ時ほどの衝撃は、正直感じませんでした。読むこちら側の期待値の違いかもしれません。「よーし、面白いSF読むぞー!」と鼻息荒く読み始めたら、肩透かしを食った感じ。SFというよりも、「幻想小説」または「実験小説」といった趣の作品が多い印象です。
ただ、面白くないわけではありませんので念のため。SF風味は薄めかもしれませんが、ひとつの小説のとしての完成度はどれも高く、読後感は良いです。これ、中国の商業作家たちが、クロスオーバーにレベルの高い作品を輩出し続けている、ということですよね。中国の文壇は今、とてもエキサイティングな状況にあるのだと思います。SFの枠に囚われることなく、もっと読まれても良い作品集だと思います。
鴨的お気に入りは、劉慈欣「月の光」、宝樹「金色昔日」、張冉「晋陽の雪」あたり。いずれもSFとしてレベルが高いです。そして、やたらとインパクトがあったのが馬伯庸「始皇帝の休日」。「どこの野崎まどだよ」とツッコミを入れたくなる斜め上のぶっ飛びぶりで、どのような心構えで読めば良いのか最後までよくわかりませんでしたヽ( ´ー`)ノ
いやー、相変わらず肩幅広いですねー。中国SF、当たり外れはありますが、この先も引き続きチェックしていきたいです。
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作品紹介・あらすじ
北京五輪の開会式を彼女と見たあの日から、世界はあまりにも変わってしまった――『三体X』の著者・宝樹が、中国の歴史とある男女の運命を重ね合わせた表題作、『三体』の劉慈欣が描く環境SFの佳品「月の光」、春節シーズンに突如消えた列車の謎を追う「折りたたみ北京」著者の郝景芳による「正月列車」など、14作家による中国SF16篇を収録。ケン・リュウ編による綺羅星のごときアンソロジー第2弾。解説/立原透耶 本書は新☆ハヤカワ・SF・シリーズ『月の光 現代中国SFアンソロジー』を改題・文庫化したものです。
〈収録作品〉
序文
ケン・リュウ
夏笳(シアジア)「おやすみなさい、メランコリー」
劉慈欣(リウ・ツーシン)「月の光」
糖匪(タンフェイ)「壊れた星」
韓松(ハン・ソン)「潜水艇」「サリンジャーと朝鮮人」
程婧波(チョン・ジンボー)「さかさまの空」
宝樹(バオシュー)「金色昔日」
郝景芳(ハオ・ジンファン)「正月列車」
飛氘(フェイダオ)「ほら吹きロボット」
張冉(ジャン・ラン)「晋陽の雪」
吴霜(アンナ・ウー)「宇宙の果てのレストラン――臘八粥」
馬伯庸(マー・ボーヨン)「始皇帝の休日」
顧適(グー・シー)「鏡」
王侃瑜(レジーナ・カンユー・ワン)「ブレインボックス」
陳楸帆(チェン・チウファン)「開光」「未来病史」
エッセイ 王侃瑜/宋明煒(ソン・ミンウェイ)/飛氘
*****
中国SF短篇集で「折りたたみ北京」に続く第2弾とのこと。
色々なタイプの作品が収められているので玉石混交なのだけれど、僕にとっては玉の方が多かった。
「折りたたみ北京」は積読状態だし「三体」は長編過ぎて読むのを躊躇しているのだけれど、俄然読みたくなってきた。
ただ700頁を超える文庫なので、上下巻に分けても良かったような気がする。
読んでいてちょっと手が疲れてしまった(体力付けろ! ってことだろうか)。
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明記はされていないようだが(迂生は見つけられなかった)、訳者の顔ぶれからしておそらく英文からの重訳。そのせいか英米SFの翻訳を読んでいるような手触り。ローカリズムを売りにしているわけではないから当然かも知れない。収録作品のレベルは文句なく高いが、(編者が宣言しているように)アラが目立つ作もあるし、文化の違いか、一読して隔靴掻痒の感を覚える作もある。それも味かも知れない。
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時間をテーマにした作品が目立つのが興味深かった。時の進み方は相対的なんだよ、と諭されてるようで。また、多次元宇宙というのは昨今の流行りなのかな。
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全体的に見てやや分かりにくい作品が多い印象。『折りたたみ北京』の方が分かりやすく面白い。だからマストバイとは言いにくいのだけど、糖匪(タンフェイ)「壊れた星」の一編だけは怪奇SFとして至極の出来なのでぜひ読んで欲しい。お気に入りは「壊れた星」「金色昔日」「開光」。
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『金色昔日』は良かった。
この手法で読ませるストーリーになっている。
『月の光』もありそうな未来で面白かった。
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アンソロジー集なので
合間あいまに拾い読みしてました。
いろんな作家さんがいることがわかって
楽しかったです。
好みなのは
『おやすみなさい、メランコリー』
『鏡』もテイストが近い。
『月の光』『正月列車』は
なんか星新一のようにニヤリとする。
表題作の『金色昔日』も哀しいけど良かった。
ひとつの家族の一代記なんだけど
途中である違和感を感じてから先は
胸が締めつけられつつ読んだわ。
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・ケン・リュウ編「金色昔日 現代中国SFアンソロジー」(ハヤカワ文庫SF)は「折りたたみ北京」に続く中国SFの第2弾である。登場人物等、さすが中国である。カタカナでではなく、漢字の名前が多い。ま づこのことに感心してしまつた。それほど私が中国とは無縁の読書生活を送つてゐるといふことである。さういふ内容の作品もあればさうではない作品もある。実に様々である。「本アンソロジーには、全部で十四名の作家による十六篇の作品が収録されて」(「序文」12頁)をり、「作品渉猟の場を拡大する方向に目を向けて」(同前)編まれたといふ。ただし、「本プロジェクトは、中国現代SFの代表的な作品を集めるという意図は」(同13頁)持つてゐないといふ。私にはいかなる作品が「中国現代SFの代表的な作品」か分からない。「中国SFと呼びうる作品の多様さと中国SF作家界の雑多な構成」(同前)といふことは、中国SFといつたところで、決して一つにくくれるものではないといふことなのであらう。
・表題作宝樹「金色昔日」はおもしろい作品であつた。私は現代中国の歴史を知つてゐるわけではないが、 それでもこの作品が現代中国の歴史をさかのぼつてゐることは分かる。主人公の「いちばん古い記憶はオリンピックの開会式だ。」(222頁)といふのが北京五輪であれば、彼は私達の同時代人であると言へる。 「三年生のときに感染症のSARSが流行し」(226頁)た。次にサダム・フセインやビン・ラーディンが出てくる。例の9・11もある。かうして様々な出来事があり、ゴルバチョフがソ連邦を作り、「?小平の計画経済改革が失敗し、経済は悪化の一途をたど」(243頁)る。さうして共産党内部抗争から天安門事件が起きる。主人公は学生側の指導部に加はるも、最後は軍隊に掃討される。……ここまで書けば十分であらう。この作品は歴史を改編しつつさかのぼつてゐる。従つて、最後は日独伊の三国同盟対米ソ同盟であ り、この中国側の動きとして国共内戦と国共統一戦線による抗日闘争である。この間に幼なじみの恋人が登場する。この女性の運命は歴史に弄ばれてゐる。最後は日中戦中に主人公に会ふことかなはず死ぬ。「ある意味で本書の作品中最も中国的な物語であ」(ケン・リュウ解説218頁)り、「人民共和国の歴史を知れ ば知るほど、この物語の意味もはっきりと見えてくる。」(同前)といふ。私に見えたものが宝樹の見たものであるなら、これが中国国内で発表できるのかと思ふ。「最初の公式な出版が英語版と」(同前)なるさうである。原典には"No Chinese publication"とある。中国語版なし。訳者はケン・リュウである。「公式な出版が英語」であるなら、非公式な中国語もあるのであらうか。中国国内で出せないから英語版を出したのではないのか。中国の現状を見る限り、危険を顧みずに敢へて出版するとは思へない。宝樹はいかなる人かと思つても、フリーライターであるらしいとしか分からない。web上 にもこれ以上はなささうである。この人、中国で現役の作家としてやつてゐるのだらうか。天安門事件や文革を描き、?小平の経済改革を失敗といふ。かういふことが許されるのなら、中国は今少しまともな国にな つてゐさうでる。しかしさうではない。あくまで習某の中国である。かうして日本語版が出るからには、この人の現在を心配する必要はないのかもしれない。もちろんこれは例外的な作品である。本書は普通のSFばかりである、とは語弊があるか。しかし、ここに様々な傾向の作品があり、様々な内容の作品があると知れる。おもしろい作品集であつた。
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愛用ブックカバーでは包めない、脅威の700ページ超えということもあり、図書館の力を借りました。やはり、図書館は偉大…。
『折りたたみ北京』に続く中国SFアンソロジーということで期待していたけれど、全体的に見ると『折りたたみ北京』収録話の方が好みでした。
中国のSFは日本人も感覚的に理解しやすい寓話的なものから、サイバーちっくなものまで幅広く、未経験の人にはぜひ読んでみてほしいです。
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「折りたたみ北京」に続くケン・リュウ選の中国SFアンソロジー第二弾.
時間が遡る中での男女の愛を描く表題作「金色昔日」が秀逸.すごく幅があるのだが,始皇帝がゲームをする話なんかは,日本の同人誌でマンガとして書かれてそうだ.
巻末に中国SFの歴史に関するエッセイが3編掲載されているが,非常に興味深い.少し前に福島正実の「未踏の時代」を読んだが,21世紀初頭の中国のSF界は,あの時代の雰囲気にとても似ている.そういった時代が中国にやって来るのが政治のために30年遅れて,現代になって一気に花開いているようだ.