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表題作の『走馬灯のセトリは考えておいて』がとても面白かった。
人が死んだ後にライフログをもとに自分の分身を残せるようになった未来の話。
2023年時点においてすでに故人の生前のライフログやアーカイブを元に、あたかも亡くなった人が目の前にいるかのように再現できる技術が生まれていることから、そう遠くない未来に、終活に向けて自分のアーカイブを整理するという行為が当たり前になるのかなと思った。
自然言語処理のAIの台頭により、故人の受け答えの癖を再現できるAIのような存在も現実味が増してきていると感じる。
本書においても、技術の進化と共に死との向き合い方が変化してきていることの説明や、ライフログから試写を蘇らせることによる葛藤が描かれていて色々と考えさせられる内容だった。
巻末の解説では、アイドルに対する「推し活」の心理と、宗教における「信仰」の類似性から本作品の構造を説明しており、作品を理解する上で非常に参考になった。
“葬儀とは死者の人生に生者が意味付けをするための宗教的儀式であり、それ自体が他者を重み付けする「推し活」である”(解説より)
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これはおもしろい。それに読みやすい。SFならではの難解な世界観や描写は抑えられていて、民俗学的な要素が物語の奥行きを広げている感じ。
AIや異星人など、生身の人間ではないものを主体にすることで人間らしさを浮かび上がらせるのが絶妙に巧い。
■オンライン福男
感染症の拡大の影響から新年の福男をオンラインで決める話。話が発散して無茶苦茶になっていく。コロナ禍を思い出す一話。
■クランツマンの秘仏
深い信仰には質量がともなうというエセ科学?に囚われた男と、その男の名誉を回復したい子どもたちの話。これは事実なのか?と思わせるノンフィクションのようなスタイルに引き込まれる。
■絶滅の作法
人類が絶滅した後の地球で、人類のようにふるまいたいロボットが米を育てたり寿司を作ろうとする話。昔に想いをはせるようなノスタルジックな味わいがいい。
■走馬灯のセトリは考えておいて
故人の生前を再現するAI「ライフキャスト」でバーチャルアイドルのラストライブを作っていく物語。最期の近い「中の人」の想いに胸が熱くなる。
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信仰や死といった概念が科学技術の進歩によってどう変化してゆくのかというテーマの短編集。人間の根幹にあるこの概念が人間たらしめる変わらなさを感じた。
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2023-11-30
柴田勝家、実は「ニルヤの島」は今ひとつのめり込めなかったが、「アメリカンブッダ」や本作はかなり好き。想う事の構造の思索と外抽が刺さる。
特に表題作と「クランツマンの秘仏」は表裏一体の物語。
ニルヤは物語に捕らわれすぎて、そこまで読めていなかったのかも。
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本書を知るきっかけは『世にも奇妙な物語』
そして、作者が柴田勝家!
柴田勝家さんの本は二作品目になります。
本作品も、近未来っぽい世界のSF短編集になってます。
オンライン福男:お正月に走る福男をオンラインでやってみたら・・・
クランツマンの秘仏:秘仏研究科の人生を追う物語、開帳しない秘仏って本当に入っているの・・・
絶滅の作法:人類が滅亡した地球で暮らす異星人達の話!?異星人達は地球人の文化に触れる事で!!!
火星環境下における宗教性原虫の適応と分布:宗教の成り立ちと布教についての新解釈。
姫日記:一番サクサクと読めた!主人公は毛利元就に仕える軍師、クソゲーの話!?実話?
走馬灯のセトリは考えておいて:人が死んだ後に自分のライフログを素に『ライスキャスト』を作れるようになった世界!ライフキャスターの『イノル』は末期の患者からバーチャルアイドルのライフキャストの作成を依頼される!?
→本作が世にも奇妙な物語でやってました!
表題作で、連作短編か長編小説を読んでみたいと思いました!!!
因みに、帯に書いていたのですが、柴田勝家生誕500周年らしいです!
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新時代のSF。私が20歳くらいならもっと面白かったのかも。
解説がとてもわかりやすい。別に難しい小説ではないのだけど、世代が世代なのでVtuberを本気で推す気持ちをするりと理解することは難しく、解説を読んでからもう一回読み返してやっと気持ちがついていく感じ。
推し活を信仰ととらえるのはやっぱりちょっと抵抗があるが、つまりこれが加齢なんだろうな…