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真珠湾攻撃に参加したパイロットとその家族に焦点を当て、彼らがその後どのような人生を歩んだのかを知ることができる。とてもよく取材されていると思う。
関係者の証言に加え、個人の手記や家族に宛てた手紙が多く紹介されており、そこには敵味方関係なく、何千何万もの人生があったんだなと思い知らされ、やるせなく物悲しい気持ちになる。
今生きている意味を考えさせられ、真面目に生きなくては思わされる。
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真珠湾攻撃に参加した日本海軍パイロット約900人、そのうち半数は1年以内で戦死、生きながらえたのは2割という。不完全な搭乗員名簿から遡る隊員と家族の歴史。
筆者はNHKのディレクター、本書はBS1スペシャル「真珠湾80年生きて愛して、そして」をベースにしたもの。
真珠湾攻撃に参加した搭乗員を残り少ない生き残り、遺族等に取材を重ね、それぞれの人生と家族の戦後を振り返っていく。艦攻で3人、艦爆で2人。未帰還機の数倍の搭乗員の死。
巻末の真珠湾攻撃搭乗員一覧表が圧巻。各搭乗員の戦死場所、日時まで丹念に調べている。戦死者の割合もまた殉職者の多さもバイロットの儚い命を表している。何より簡潔な事実の圧倒的な説得力。
本書の中で紹介される搭乗員と遺族の戦後。無機質な歴史が実は一人一人血の通った人間のドラマであるという当たり前のことにあらためて気づかせてくれる。
澤地久枝「蒼海よ眠れ」を思い起こさせるドキュメント。スタッフの相当な取材への労力と苦労には強く敬意を表したい。
年末にして今年一番の一冊。
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大好評NHK BS1「真珠湾80年 生きて、愛して、そして」書籍化!
1941年12月、真珠湾攻撃に参加した900人。
その後、1年以内に半数が命を落とし、2割しか終戦を迎えられなかった。
死ぬまで戦わなければならなかった、それぞれの人生。
・開戦前日で途絶えた日記
・真珠湾攻撃隊の内実
・真珠湾から戻らなかった55人
・開戦後一年以内に半数弱が戦死
・海軍の人事制度への不満
・熟練搭乗員の命を奪った日本軍機の欠陥
・極寒の戦場から届いたラブレター
・硫黄島への特攻という絶望
・残された妻たちの生活再建
・チモール海での「再会」
日記、手紙、遺族の証言が明かす、真珠湾の「英雄」たちの「愛と死」の物語
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今から約80年前、日本海軍機動部隊はアメリカ太平洋艦隊の根拠地であるハワイ真珠湾へ殺到、わずか数時間でアメリカ太平洋艦隊を壊滅させた。それから3年半、文字通りの死闘をアメリカをはじめとする連合国と繰り広げ、最終的に本土は空襲により焼け野原となり敗戦。その激動の中、緒戦の真珠湾攻撃に参加した約900名のパイロットたちの大半は命を落としていった。この命を落とした約700名のパイロットたちとその家族を追ったドキュメンタリー番組の集大成ともいえる本が同書である。とかく勝ち負けや将官たちの活躍に目が行きがちである戦史であるが、実際は等身大の人間たちの様々な思いと時代の流れに逆らえず生き、死ぬしかなかった悲劇が、その基礎部分にある。
戦史にはほとんど出てこない人々とその家族たちの思いを、当事者の日記や回想で綴られた同書は、読書側に「戦争は決して遠い話ではないし、悲しみしかない」と改めて認識させるであろう。
現在(2023年)も進行しているウクライナでの戦争で同じような悲劇が発生しているであろうと思うと、暗澹たる気持ちになってくる。
同書では戦史や歴史の本では出てこない、個人の感情がたくさん出てくる。一人一人が翻弄されながら生きていた証を目の当たりに出来、よりリアルとなって感じられた。もし可能であれば、戦死した人たちやその家族の日記を翻刻していただき、後世に残してもらいたい。
ちなみに、わずか80年前ですらまともに記録が残っていなかった真珠湾攻撃参加搭乗員の氏名や攻撃参加後の状況がわかるリストがある。これまで幾人かの研究者たちが積み上げてきた調査をさらに更新した、最新のものであり、貴重な研究資料となっている。