0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かい - この投稿者のレビュー一覧を見る
螺旋プロジェクトの最後の未来のパートであり最後の作品でした。螺旋プロジェクトの文庫の中では5番目に読みましたが。海族と山族がどうなるかワクワクしました。
投稿元:
レビューを見る
二〇九五年、〈壁〉によって東西に分断された東京では、誰もが不眠に悩まされていた。睡眠薬開発を巡る攻防は、やがて「眠り姫」の謎にたどり着く……。
投稿元:
レビューを見る
螺旋プロジェクト第8弾。
未来の話。登場人物が多くて、それぞれがそれなり以上の重要な役割の人物が多かった。海族・山族の人物も多くて。苦戦しました。
これまでの螺旋プロジェクトの話と違って、海と山の対立はなくて、この時代より以前にあったっていう記述だけだったような。どちらかといえば、対立をなくすために協力していたって感じでした。海族が山族に協力するようなカタチだったような。
この時代になってようやく対立ではなく、海と山が「ひとつになりたいふたつ」として描かれていました。
超越した存在は、銭湯の大将の春三さん。口が悪くてがらっぱちな感じのおっちゃんやけど、優しく王子を導いてくれていたように思いました。
この春三さん、ウェレカセリっぽいなと思った。物語の途中でいなくなってしまったのも含めて。全部わかっていたような感じを受けました。
「人生はこれすべて(いまのところ)だ。」とか言うていたし。本当ですね。
螺旋やクジラ、壁、ラムネ、アイムマイマイなど、螺旋プロジェクトではおなじみのアイテムも登場して楽しかった。
最後、王子が姫と出会ってからエンディングへの流れはこの物語のエンディングであると同時に螺旋プロジェクト全体のエンディングでもあるなぁ、と思うと、感動して鳥肌もんやった。
王子と姫がひとつになって「おおる、おおる」となってハッピーエンディングでした。
マユズミ氏の書く、脚本の続き読んでみたいです。
そのマユズミ氏が「私に云わせれば、過去が未来なのだ」と言っていたので、実はこの「天使も怪物も眠る夜」は「ウナノハテノガタ」に続いていって一つの環になるんじゃないのかな?と思いました。それこそ手塚治虫の「火の鳥」のように。
「天使も怪物も眠る夜」は、苦戦しましたが、とても楽しく読みました。これで螺旋プロジェクトをとうとう読了しました。が、大いに楽しめました。ちょっと名残惜しい感じがするので、また読みたいと思う小説たちでした。
螺旋プロジェクトを読むならこの「天使も怪物も眠る夜」は一番最後に読むのが良いと思います。
投稿元:
レビューを見る
Amazonの紹介より
めくるめく未来版「眠り姫」の物語
――吉田篤弘が挑む、かつてない群像劇!
2095年、東京は四半世紀前に建てられた〈壁〉で東西に分断されていた。曖昧な不安に包まれた街は不眠の都と化し、睡眠ビジネスが隆盛を誇っている。
そんな中、眠り薬ならぬ覚醒タブレットの開発を命じられた青年・シュウは謎の美女に出会い――。
「螺旋プロジェクト」の未来編でしたが、東京が分断されたり、つまらない本がベストセラーになったりと独特な世界観でしたが、バラバラな関係性から段々と絡まっていく展開は面白かったです。
ただ、いかんせん登場人物が多いのと、それぞれのパートが多いためか、なかなか頭に入らなかったです。
途切れ途切れから読んでも、「これ、どのパートだっけ?」と思うところがあって、なかなか理解するのが大変でした。
「眠り姫」をめぐる登場人物達の物語でしたが、一つ一つのパートはおそらく大事な場面だとは思うのですが、個人的には蛇足感がある感じがしました。もう少しコンパクトに凝縮して欲しかったなというのがありました。
大きな盛り上がりがない分、ダラダラ感の印象が強く残ってしまいました。
段々とまとまっていく感覚はあるのに、点と点が結ばれただけで、繋がった!という感覚があまり感じない印象がありました。
他の作品を読んできた分、話をまとめる力が衰えたかなと疑ったのですが、他の方のレビューを見ていると、自分だけじゃないなとちょっとホッとしました。
ただ、「プロジェクト」ということで、他の作品を彷彿させるようなキーワードも散りばめられていて、色々楽しめました。
投稿元:
レビューを見る
螺旋プロジェクト 未来編。
面白かった。登場人物が次々に出てきて、パラレルに、小出しに物語が進む。読みにくいなあと思いつつも、読み進めてしまえるあたりが秀逸。
伊坂さんが何かの本のあとがきで「風呂敷を目いっぱい広げて、それをどう閉じるかが大変だけど醍醐味」みたいなことを言っていた。この作品を読みながらこのことを思い出して、風呂敷どこまで広げるんだろう?と思いながら読んだ。最終節で一気に種明かしされるのが爽快でもあるが、ここから逆算して各論を作り込み過ぎてるかなという気もした。エンディングは螺旋プロジェクト全体をまとめないと、という予定調和に縛られちゃってる気もするし。
小説家になりたいと漠然と思ってた時期があった。本読みだって自負はあったし、文章を書くこともできる方だと思ってた。でも大した努力もしなかったし、日々の出来事やその時の環境に流されて今の職業に至ってる。技術系ではあるけど、物書きのお仕事ではある。
で、この物語の中身自体が、未来のことを予測して役者?にその通りに演じさせる黒幕・裏方がいて仕掛けがあって・・・。これって、小説家ってまさにこうした作業をやってんだよね、たぶん。小説家ってプロだよな、と思わされた本でした。
投稿元:
レビューを見る
めちゃくちゃ面白かった!
クラフト・エヴィング商會によるブックデザインも、章ごとのタイトルが文章なのも、吉田ワールドで素敵。
海族山族の争いと聞くと、昔話のような作り話感に避ける方もいらっしゃるかもしれないけれど、
これは分断から生まれた争いの物語だ。
分断は、現実社会でも日々国内外を問わず生まれている。
世の中は、以前より分断することが多くなっているような気がする。
と言うより、情報獲得手段が増えて、あちこちの分断が見えるようになった。
同時に、自分自身が分断に加勢してしまう可能性もある。
戦争、災害、感染症、それらから派生したあれやこれや。
SNSがこんなにも世の中に浸透して、遠く離れた人や違う考え方の人達とも交流が可能となった分だけ、人の輪も生まれるが分断も生まれる可能性が増えた。
経験者と未経験者。
関係者と無関係者。
右か左か。
どちらが悪いわけでもなかったりするから、余計に複雑だ。
物語はグリム童話の「眠り姫」をモチーフにして展開してゆく。
寝際に語られるお伽話のようでありながら、時代設定が未来であることで、
有りそうな無さそうな吉田作品独特の世界観が活きていた。
原始を担当された大森兄弟さん同様、造語も楽しい。未来設定なので、発想のベクトルは違うけれど。
それにしても。
これまでの螺旋作品では、さりげなく差し込まれてきた一族の特徴や、螺旋、見え隠れするモチーフが、
本作はこれでもかと盛り込まれていた。
ラストを飾る作品だから、いっか 笑
正直、『螺旋プロジェクト』作品を読み始める前に「螺旋年表」を見て、
担当する時代によっては描き方が難しく、優劣が出てきてしまうのではないかと思っていた。
それは私の傲慢だった。
各作家さんならではの作風を活かしつつ、見事に共通ルールを落とし込んでいた。
今を生きる私達の殆どが経験している「平成時代」だからこそ、朝井リョウさんがリアル感たっぷりに描いていた。
今の私達の多くが経験している生きづらさやモヤモヤを託すには、朝井さんでなければならなかった。
どこか懐かしく、けれど勢いよく駆け抜けた「昭和時代」は、エンターテイメント性を持った伊坂幸太郎さんが魅せてくれた。
この怒涛の時代は、伊坂さんでなければならなかった。
大森兄弟さんの「原始時代」は、まだ動物的に生きる始めの人々を真っ直ぐ描いていた。
他の作家さんの作品を読んでいる最中に、何度「ウナノハテノガタ」が頭をよぎったことか。
他の作家さんの作品を読み進める毎に感動が増す作品なんて初めてだった。
「原始時代」は大森兄弟さんでなければならなかった。
完全に未知の世界である「未来」は吉田篤弘さんにぴったりだった。
吉田さんの持ち味であるおとぎ話のような、でもどこかに存在していそうな街や人物。
リアルと想像が絶妙の配分で混じった世界が、これまでのどの作品とも共鳴して、
この時代はやっぱり吉田さんでなければならなかった。
8作家さん各々が互いを補いあってい��からこそ完成する螺旋だった。
吉田さんの「あとがき」に鳥肌が立った。
この『螺旋プロジェクト』自体が、まるで何かに導かれていたようだった。
もしかしたら何年後かの夕暮れ時、どこかで何かが壊れ、新たな物語が動き出すかもしれない。
そう思ってしまうのは、読後の感動から覚めていないからかな。
「天使も怪物も眠る夜」は本作だけでも独立した小説として充分に楽しめる。
でも、吉田篤弘ファンだからと本作のみで終わらせるのは勿体無い!
『螺旋プロジェクト』の8作家さんの中に多少苦手な作風があろうと、初読みの作家さんが居ようと、少しでも気になったのなら是非全ての作品読了をお薦めしたい。
海族と山族の長い争いの歴史を、頭で理解するのではなく、心で深い感動と共に味わうことが出来るから。
例えばキリバヤシフウの唱えるおまじない。
螺旋年表上にその言葉を見つけて、コレかー!と思うのも良し。
だけど「ウナノハテノガタ」を読んでいれば、そのおまじないの後ろに、かつて原始の世を懸命に生きていたオトガイ達の物語が懐かしく甦る。
フウのおまじないだけではない。
登場人物の台詞に、景色に、アイテムに、何かがひび割れ壊れる様に。
読者の中に螺旋の歴史巻物が広がり、遥か彼方から繋がっている彼らの物語を感じる。
どの時代の人々も一生懸命に生きていて、その人生の長短や内容に関わらず、次の時代、更にずっと先の時代へと繋がっている。
皆、繋がっている。
発端があり結果が生まれ、その結果がまた次の発端となる。
頭で歴史を理解しているのとは違う、全ての作品を読了した者だけが味わうことの出来る感動が待っている。
私は文庫で読んでいるので、螺旋年表に沿って時系列に読み進めているわけではないけれど、
この読み方で良かったように思う。
今後も螺旋年表を行ったり来たりしながら楽しみたい。
そしてまだ先のことだけれど、全ての文庫が揃ったら、もう一度時系列に読み直したい。
以下、沢山の仕掛けに、私なりの注釈。(自分の為にも)
「グスコーとブドリ」
グスコーブドリと言えば宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」。深刻な冷害に襲われたイーハトーブの地を、身をなげうって火山を爆発させて救ったのがグスコーブドリだ。
「ロンリーハーツ読書倶楽部」
読んだ時の響きが、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を思わせるリズム。
「ドッペル」
「ドッペルゲンガー」の「ドッペル」だろう。
自分そっくりの姿を見てしまうという、あのドッペルゲンガーだ。
「レイド・バック」
音楽好きなら聞いたことがあるかもしれないが、「ゆったりリラックスして」という意味で使われる。
それを鑑みると作中では、
「便利さ等の機能性・先進性をあまりにも追及し過ぎたので、少しゆったりした流れに戻しませんか?
以前のあの頃も良かったですよね?
みたいな風潮が世の中に生まれた」ということを
「レイド・バック」と呼んでいるのかな?
「レイドバック以降の風潮で、いっときなり���ひそめていたドッペル・スタイルが復活し…」と、未来なので当然だが、まだ見ぬ歴史が普通に過去を振り返る。
「ツァラトゥストラ」はニーチェの代表作「ツァラトゥストラはかく語れり」からだろう。
添い寝屋の美冬や美衣を指す「ドゥーブル」はdoubleで、本来「二重の」とか「対の」「二つに折った」等と訳される。
「北北西に進路を取れ」でトオル達が吸う煙草は、実際に存在した煙草の銘柄だ。
保科が愛用してきたピアノの「レーニッシュ」も実在する。
ドイツの老舗ピアノ製造会社で、ラフマニノフなども愛用しているらしい。
そう言えばアップライト・ピアノって、最近、見直されてきてるらしい。
wonkの江崎さんが少し前に言っていた。
「メルシュトロオム 」
メイルストロムは実在する。ノルウェーの島周辺海域に存在する極めて強い潮流、又はそれが生み出す大渦潮を言うのだそう。
↑
『2023.8.18訂正』
これ多分、違いますね。
オルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」やジョージ・オーウェルの「華氏451度」を匂わせる設定があるのだから、これは伊藤計劃の「ハーモニー」に出てくる大災禍(ザ・メイルストロム)を意識したものではないだろうか。
「廿世紀浴場 」
かつて三ノ輪に本当にあった。検索すればネット上で外観が見られるので是非。
本が燃やされる、睡眠薬、表面上は穏やかな社会…これらはレイ・ブラッドベリの「華氏451度」を思わせる。
「東京が戦火で焼け落ちたとき、動物園の動物たちを安楽死させて…」は、
土家由岐雄の「かわいそうなぞう」が浮かぶ。
投稿元:
レビューを見る
読みやすかったけど、全部を把握できたかは自信がない。でも、すごくワクワクしながら読めた。登場人物みなそれぞれ魅力ある。モチーフとかネーミングとかがおもしろい。
このプロジェクトの他のも読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
中央公論の螺旋プロジェクトの一冊!
私にとっての螺旋プロジェクトの3冊目!
東京には人々を分断する壁が存在(伊坂幸太郎のスピンモンスターにて誕生)していた!
そして、都市に住む人々は不眠に蝕まれ、睡眠を供給する事がビジネスとして成立していた。
登場人物の一人であるマユズミは面白くない小説を書く事で睡眠を促す役割を果たし、ベストセラー作家となっていた。そして本来面白くあるべきエンターテイメントが禁止されていたり、行き過ぎた科学の進歩を止めるレイドバックの施行など、若干のディストピア感のある未来東京が舞台となってます!
そして、ストーリーの背骨となるのが『スリーピングフォレスト』
主人公のシュウは睡眠コンサルタント会社で働いていたが、ある日、睡眠とは真逆の極秘プロジェクトを任されることになる!?
『寝る事が仕事になったらいいのに』と言っていた後輩が居ました、本作の未来の東京ではきっとビジネスとして成立する事でしょう・・・
次は薬丸岳さんの作品を読みたいと思います!
投稿元:
レビューを見る
八人の作家による競作企画<螺旋プロジェクト>の最終章を飾る作品らしいが、今作以外は全て未読。著者の作品にしては比較的エンタメ色が強く、企画をかなり意識して執筆したことが強く窺える。十八番であろう群像劇のスタイルを活かした作品ではあるが、登場人物が流石に多過ぎて、消化不良の感は否めない。異なる一族の対立という企画のルールに縛られたであろう終盤の慌ただしさ、やっつけ仕事感が否めないラストシーンの呆気なさは企画全体を通さず、今作を単体として見た場合に見劣りするのではなかろうか。期待値が高かった分、ちょいと残念。
投稿元:
レビューを見る
吉田篤弘作品によく見る、たくさんのキャラクターが出てきてそれぞれが複雑に絡み合っていくお話。
というといつも通りなのだが、今作どうもキャラクターが多すぎるのとしかけが多すぎるのと、切り替わりが多すぎて途中でついていけなくなりがちだった。休憩を挟みながら読んでいると特にそれが起きる。
しかも「螺旋プロジェクト」の一環として、シリーズ全部に関わる海と山の対立やクジラというキーワードなどなど、気にしなきゃいけない要素もある。
そんなこんなで、ストーリーを追いつつ登場人物たちの関係を把握しつつ、プロジェクトの裏に漂う設定を探しつつとなってどれも中途半端なまま読み終えてしまった感じがする。
シリーズの最初にこれを読んでしまったのが良くなかったのかもしれない。他のシリーズも読んでみて、それから改めて読み直せばもう少し余裕を持って楽しんで読める気がしないでもない。
まあ、8冊全部読むのかどうかはちょっと怪しいけども…
投稿元:
レビューを見る
螺旋プロジェクトの近未来SF。
他の作品に比べて、対立よりも協調のイメージが強かったし、この共作全体の時間軸的なラストとしては良かったのかなと思う。
ただ、このジャンル自体がそれほど好みじゃないのと、登場人物が多くて、次々視点も変わるのでちょっと理解が追いつきにくいところもあったし、それぞれのキャラに対する理解も追いつかないまま物語が終わっちゃった感じ。
ちょっと伊坂作品に似ている印象も受けた。
投稿元:
レビューを見る
「螺旋」プロジェクトの4冊目。
語られる時代としては一番後ろになり、皆さんのレビューを見ると最後に読むほうが良いように書いてあったが、読み始めたものはしょうがない。
2095年、四半世紀前に建てられた壁で街を東西に分断されている東京が舞台。
そこは不眠の都と化し、睡眠ビジネスが隆盛を誇っているという設定のもと、巻頭に紹介されているだけでも25名+1匹、色んな人物が登場し、それぞれの周辺が描かれていく。
睡眠コンサルタントに勤め覚醒タブレットの開発を命じられたシュウが〈いばら姫〉の物語の謎を追うパート、〈眠り姫の寝台〉という本を巡ってシュウの姉で探偵のナツメと小説家のマユズミが動き回るパート、スキンヘッドの音楽家ホシナが曲のモチーフにする幻の酒〈ゴールデン・スランバー〉を探すパート、ポスターハンターのトオルがポスターで見た幻の映画の幻の女にこだわり続けるパート、これらの話が入り乱れ、それにコーヒー・バーの店主サル、生物学者のコドモ博士や特別調査機関の二等調査員ゴヤなども絡んで話は進む。
どのパートもが結構面白い話で次々と頁は捲れていくが、一方、登場人物が多くまた場面転換も早くて、これらが互いにどう繋がっていくのか、細切れで読む頭にはなかなか入ってこず、そこはいささか苦労した。
読み終えてしまえば、小道具も仕掛けも世界観も、どれもがこのプロジェクトの様々な要素を取り入れて物語が構築されているように思え、これまで読んだのはこの本を含め4冊だけなのだが、残る4冊も読んでいれば、もっと多くのことに気付けたのではないかと思わされた。
海と山との対立もなく、寧ろ、ひとつになりたいふたつの物語として、蒼い瞳と大きな耳が邂逅するラストは大団円に相応しく、確かに一番最後に読むほうが良かったように思った。
「おおる、おおる」と泣きつづける赤児の声は、作中の『ふたつの強きものが、勝利への欲望を捨てて、仲良く並び立てば、そのとき初めて、壁は消えて、たったひとつのALLが生まれる』と呼応し、なかなか感動的な幕切れだった。
投稿元:
レビューを見る
螺旋プロジェクト、未来編。吉田篤弘さん初読。
2095年近未来東京は、不眠が蔓延した街となっていた。不眠をめぐるビジネス、グッズの興隆。面白い本を焼き尽くす(眠れないからねー)焚書。東京を分ける壁。
同時進行とはいえ、プロジェクトのラストの位置となる未来。他の作品からの登場アイテムがあちこちに見られ、螺旋形状の表現も多々工夫されている。そして、海と山の民の未来の天使。やはり、最後に読んだ方が良いかも。
登場人物紹介が最初に25人あります。彼らが、それぞれアイテムを求めながら小説自体が螺旋のように構成されています。作中に人物像を描くほど書き込まれてないので(多いですからね)最初にぐっと覚えてから読んだ方がスムーズです。
それにしても、タイトルがカッコ良い。
投稿元:
レビューを見る
螺旋プロジェクトの最終話的なもの。
今までの海族と山族が近くにいたら気分が悪くなる、みたいな設定どこ行ったん?と思った。
仲良くなってめでたしめでたしかと思ったけど、伝承では東京がなくなる一因にもなったらしいから、結局また別の時代では争ったんだろうな、と思った。
個人的には、キャラ立ちしてる登場人物が何人も出てくるのが少し読みづらく「え?この人いつ出てきたっけ?」と見返しながら読んだ。
螺旋プロジェクトの全体を通しては、共通のシーンである『時は夕暮れ、何かが壊れる時──』っていうのが最後まで「ここか!」ってのが分からないまま終わってしまった(笑)
投稿元:
レビューを見る
螺旋プロジェクト(私の中で)最後の作品。
今まで読んだ他の7作品よりも、海と山の対立が前面には出ておらず、途中まで螺旋プロジェクトということを忘れそうになるほどだった。しかし終盤に行くほどその仕掛け(?)が分かり、これまでの7作品が紡いできた最終着地点として感慨深い作品となった。
登場人物が多く、文体も結構独特なので慣れるまで時間がかかったが、このワールドにハマると結構面白い。「未来」にうってつけだったのではないか。最後のあとがきを読むとまた一段と感慨深かった。
【最後に螺旋プロジェクト全体の感想】
このプロジェクトを知ってから1冊ずつ読み進めるのが本当にワクワクして面白かった。
同じ設定でも、作家さんによってこんなに変わるものかという面白さもあったし、初めて出会う作家の方もいて新鮮だった。
螺旋プロジェクトは8作品同時に連載されていたものを今回文庫化したようなので、1冊ずつ読んだ今回と、8作品同時にちょっとずつ読み進めたのではきっと感想も変わったと思う。特に本を跨いで出てくる共通のキーワードや描写などは、文庫だと1冊目に読んだ本では分からない。
第2弾もあるようなので期待したい。あー終わっちゃった!トートバッグが届くのが楽しみだ。