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日本の候補者が選挙でどのような活動をしどうやって代議士になるか、を大分県のある代議士のもとでエスノグラフィー手法で記録した本。メインの内容について書く前に、この本を今買うべきだと思うということを書いておきたい。2009年版前書きにおいて、なぜ民主党が勝利し、自民党が敗退したかということを書いている。それは、ビジョン再設定の失敗、エリート官僚の崩壊、自民党代議士個々の集票マシーンの崩壊だと言う。
西欧に追いついた(Japan As No.1)となった80年代以後の明確なビジョン設定の失敗。地方のニーズの変化に気付かなかったこと。また、官僚の汚職報道、政策の失敗により、官僚の世間評価が変わったことと、その官僚に対して有効な政策を打てなかった。最後に、地方のコミュニティ崩壊、ニーズの変化に耳を十分に貸さなかったことが、自民党にとってアキレス腱となってしまったのだ。以上から、自民党は負けてしまったのだと言う。
さて、本筋の話。1960年代後半の自民党の一代議士がどのような方法で国会議員になるかを追った話。これを読んで思ったのが、組織票の強さである。著書自身が驚きとともに書いているのだが、
「ある地方議員の地元の村を訪ねた。~この議員と田舎道を歩いていると、向こうから議員の知り合いの農家のおじいさんが歩いてきた。議員は今度選挙があるので、佐藤候補(※著書が研究した代議士)をよろしく頼むと声をかけた。おじいさんの答えに私は驚愕した。自民党の集票マシーンをこの目で見た瞬間だった。おじいさんは「あなたに大変おせわになtっておるから、もちろん佐藤さんに入れる」と答えたのだ。」
確かに、このような考え方はもう存在しないよな、と直感的に考えてしまった。
つい最近テレビを見ていたら、著書が出ていて、菅政権について語っていたが、やっぱこの人面白かった。
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かつて出されたカーティス氏の著作の復刊。2009年の政権交代直後に出された。まえがきの「政権交代は何故起きたのか」は自民党が敗北した理由を選挙制度から議論をスタートさせ、かなり鋭い分析を加えている。
この本は著者の博士論文が元になっており、当時の選挙活動の実態が事細かに記されている。現在は中選挙区制から小選挙区制へ移行したために、このような選挙活動は一部行われなくなったとは思うが、一部の記述はおそらく現代でも当てはまるだろう。
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著者は本書の主人公ともいえる新人立候補者の佐藤文生氏の家に一年近い期間居候し、佐藤氏がどのような戦略で票を集めていたのかを詳細に記録している。本書は、フィールドワークの傑作と言われているが、その詳細な記述には驚くばかりである。今であればこれだけ自分の陣営の手の内を見せるようなことはできないだろう。
本書は、半世紀も前に上梓された本であり、情報としては古いものである。選挙区は中選挙区から小選挙区比例代表並立制になり、農業従事者や自営業者の減少など当時とは状況が大きく異なってきている。しかしながら、代議士がどのような考えで選挙に臨んでいたのかを知る一級の史料であることには今後も変わりないだろう。