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自分を育てた両親の卵子と精子から自分が生まれた。
それが、当たり前だと思っている。
なのに、ある日突然、「あなたはAIDで生まれた」と、言われたら。。。
親が信じられなくなるのも無理はなく、本当の父親を知りたいと思うのも当然だと思う。
それが、今の日本では難しい。
1人の子供、いや、1人の人間を守る上で法制化は必要だと感じた。
その法制化が。提供者側にデメリットが出てくるのも確かではあるが、人間を守るという意味で、生まれた側の権利は必要だと思う。
世界的に提供をしているクリオスという企業があることは初めて知った。
自分は、もう子供を持つことはない。
でも、この問題があるんだよってことは、認識しておきたいと思った。
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「出自を知る権利」は、AIDのような第三者の精子・卵子の提供によって生まれた子供が、生物学上の親の情報を知る権利のことで、日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」にも謳われている。(154頁)日本では1948年からAIDが実施されてきた。大人になってAIDで生まれたことを知ると自分の存在が不確実に感じられ、両親を信じられず、遺伝的な病に怯えたり、見ず知らずの生物学上の兄弟姉妹と婚姻関係になる確率を考えるなど、私の想像を超えた悩みが生じるケースを知りました。
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AID(非配偶者間人工授精)で生まれた子に、出生の告知をすべきか(肯定)、いつすべきか(小さい頃から)、出自を知る権利についてどう考えるかなどについて考えるためのルポタージュ。
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私の半分はどこから来たのか
~AID[非配偶者間人工授精]で生まれた子の苦悩
著者:大野和基
発行:2022年11月30日
朝日新聞出版
初出:「ドキュメントAID」(「G2」vol.7、2011年、講談社)、「出生告知」(同vol.18、2015年)、「AIDで生む3組5人の選択」(「AERA」2019年9月16日号)
ちょっと視点の定まらない印象の本だった。AIDで生まれ、自分の出自の半分が分からない人の苦悩から始まり、それでずっと通すのかと思いきや、アメリカで精子ドナー(=生物学上の父親)に会えた事例、精子ドナーに会える制度を確立したオーストラリアのヴィクトリア州の話、そして残り3分の1ぐらいは世界最大の精子バンク(デンマークの会社)の成功物語となり、日本の法整備が遅れていることを嘆いて終わる。たまにテレビに出てくるジャーナリストだけど、文章もそんなに上手いとはいえないし、、、、
横浜市立大学病院の感染制御部長をしている加藤英明先生のことだと思われる。コロナの飛沫実験でマスコミにも名前が出ている人。最初の事例はこの人で、横浜市立大学医学部5年の病棟実習が臨床検査部だった。それで自らと両親の血液を調べたところ、父親との親子関係が否定された。母親に聞くと、父親側に問題があって慶応大学病院で提供を受けた精子を注入し、AIDで生まれたことが分かった。自分のアイデンティティーの半分が宙に浮き、自分は何者なのだろう、どこの誰だろうと思ったという。以後、勉強が手につかなかった。
日本のAIDの元祖は慶応病院で、1949年に初めて赤ちゃんが生まれている。匿名を条件に3年~6年の医学部生が精子を提供していたという。加藤氏は慶応に行って自分の担当医を聞き出し、今は開業医をしている医師に会う。会いに来たのは君で3人目、みんな最後は感謝して帰って行く、と言われた。本人の深刻さなどまるで分かってもらえず、生まれてこられてよかったなあと言わんばかりだったようだ。
自分の出自を知ることには大きな意味がある。一つは遺伝病、もう一つは近親婚。その担当医は、精子提供の学生には家系図を書かせて遺伝病がない学生しか選んでいないし、近親者が問題を起こしていないかも調べた。慶応医学部の学生だから素性はよく知れているよ、と笑った。加藤氏は、当時、凍結ではなく生精子を使っていたから、女性と付き合うときに年齢差が4歳以内の女性は避けているそうだ。
イギリスでは2008年1月、別々の家の養子となったAIDで生まれた双子の男女が、しらないままに結婚してしまい、その後、分かって裁判所から婚姻を無効とされたケースがあるそうだ。
アメリカの事例では、AIDで生まれたライアンは、母ウェンディから父親は死んだと言われていたが、実は離婚していて、しかも生物学上の父親は別であることを知り、親のエゴだと思った。彼ら親子は、サイトを立ちあげて当事者を登録させた。2022年8月で8万人余り。これまで、精子ドナーとマッチしたのは2万2850人。マッチングにおいて、利用した精子バンクも登録するが、ある精子バンクは1人の提供者からは10人以上の子供ができないように精子を売っているとしていたが、実際には75���もの子供が生まれたケースも。こんなにいたら、近親婚もありえてしまう。
世界に先駆けて法制度を整えたのは、オーストラリア・ヴィクトリア州。精子提供に関する法律の第一号を1984年に制定し、1988年に施行した。ドナーや提供を受けた親に関する全ての情報を記録することを義務づけた。その後、何回かの改正があり、非常に民主的に出自を知る方法が確立されている。会ってもよい、会うのは嫌だが身元は教えても良い、など当事者の希望に沿った設定ができる。少なくとも、子供の側には出自を知る権利を保証している。
このように法律が制定されることにそなえて、いつでも提供できる記録を残すのは、もはや世界の潮流である。匿名を条件に精子を提供していたのに情報開示されるかもしれないとなると、養育の義務などが発生するのではと心配になる提供者も少なくない。そういう中でやはり若い提供者は減っていき、年齢は少し高くなったそうだ。慶応病院では、2017年から精子ドナーが集まらなくなり、現在では提供を中断している。
日本では法整備の先送りなどで、なかなか手こずり、批判も大きくなりつつあるようだ。そして、トラブルもいろいろあるらしい。2021年12月に起きた訴訟では、都内30代の女性が、SNSで知り合った男性から精子を提供されて出産したが、男性が国籍や学歴を偽ったことで精神的苦痛を受けたとして、3億3千万円もの損害賠償を求める訴訟を起こした。その上、女性は生まれた子供を引き取らず、児童福祉施設に預けているという。男性は、京都大卒の日本人で未婚と偽った、別の国立大卒の中国籍、既婚者で。10回程度の性交による提供だった。
一方で、情報提供の体制が整ったことで起こる諸問題もある。例えば、ドナーとなるための検査で、遺伝病が分かった場合。もちろん提供者からは外れるが、それが治療法のない遺伝病だった場合、果たしてそれを本人に告げるかどうか。知りたくないと言われればもちろん告げないそうだ。
上記は、世界一の精子バンクである「クリオス・インターナショナル」(デンマーク)の対応。同社のサービスには、「ドナー独占権」というオプションがある。1人のドナーを独占でき、他の家族のドナーにはならないというコースだ。価格は1万2千ユーロ~3万6千ユーロ。これだと将来の近親婚の心配はない。
なお、デンマークでは、子供の5~8%が父親と思っている人とは血が繋がっていないという。ある教授。毎年、腎疾患の子供が100人ぐらい来るが、まず腎臓提供者として親を第一候補とし、血液型検査をするが、それで判明するのだという。
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全ての大人は全ての子どもの親になり、全ての子どもは全ての大人の子になる、ってどこかでみた言葉を思い出す。本当に、そんな世の中になりつつあって、過渡期をわたしたちは生きていると思う。
「子どもがほしい」と切実に願った先のAID (非配偶者間人工授精)の利用なら、生まれた子どもへの説明はどんなあり方が理想的なのか、とくに本書ではその考えたかを得る。例えば、オーストラリア、ヴィクトリア州の病院で不妊治療を行ってきたアンドリュー・スピアーズ医師によると「幼少期の子どもがどれほど精神的な受容力を持っているか」が語られ、10代になってからの子どもへの告知では遅すぎることや、アイデンティティが形成される前に告知することの重要性など、記されている。
自分がAIDで生まれたことを知ってかき乱された人「アイデンティティの半分が空白状態」になった人たちの言葉もたくさんあり、本書を読むことで苦悩を知ることにもなる。
自分や自分たちのあり方に自信をもって生きていれば、その子どもも、どんな生まれかたであっても自信を持って生きることができるのだろうか。
子どもってすごいな‥とそんなため息と感嘆が漏れて、きっと新しい家族やコミュニティの形が生まれるのだろうという希望をもつ。わたしもまだ、完全にそう思うことは難しいのだけど、自分が存在することが奇跡で、喜ばしいことだと誰もが思う世界になるといいなぁ。
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20年前は、結婚したら子供を産むのが普通という圧力がかなり強く平気で口に出す時代だった。そんな中での不妊、さらに男性不妊は言い出しにくく、日本では告知という発想にはいたらず、秘匿する方向に行きがちであり、法整備も遅れにもつながったのではないか。
告知は小さい頃の方がより柔軟に受け入れられるということを初めて知った。
今は多様性が尊重されるようになり、昔よりもスティグマがなくなってきた。だからこそ、生殖医療を秘匿の世界とせず、告知の大切さ法律で何をどのように保護すれば良いのかしっかり議論する必要がある。
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大野和基
国際ジャーナリスト。おおの・かずもと/1955年、兵庫県生まれ。東京外国語大学英米学科卒業。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。現在、医療問題から経済まで幅広い分野に関して世界中で取材を行う。『代理出産―生殖ビジネスと命の尊厳』(集英社新書)、『マイケル・ジャクソン死の真相』(双葉社)などの著書、『そして日本経済が世界の希望になる』(ポール・クルーグマン/PHP新書)などの訳書がある。