投稿元:
レビューを見る
今回はうたた寝殿こと、龍野保積の出番があまりなくて残念(´・ω・`)ショボーン
その代わりに活躍するのが小野小町の兄である小野葛根。大宰府長官である小野葛絃の甥で彼の補佐をしている人物。
改元の詔に怒り心頭のあまり、それを破り捨てた道真に伯父に迷惑が掛かると思い、唐物の目利きを楽しむ彼を内心ではよく思っていないところが何とも若造という感じの人物。
そんな詔騒動の最中に帝に献上していた唐物が品が献上するに値するものではないと、都から唐物使の一行がやってくると聞いて、葛根は道真が唐物の目利きをしていることを何とかごまかそうと、彼を屋敷に閉じ込めてしまうのですが~。
今回も楽しませていただきました。この巻では小野葛絃の息子も出てくるのですが、彼がのちの小野道風で、のちに和様書道の基礎を築いた人物として知られていますが、この時はまだ子供。書で身を立てたいと無邪気にいう甥っこにそんなことでどーする! と怒る葛根がとても大人げない人物です。
その彼が唐物を扱う店の人物たち相手に空回りしてしまうところが、若いわぁ(笑)
今回は道真よりも彼の物語かもしれないなぁと思いながら読んでました。
ですが、大宰府に流された、流されたと言いますが、ここでは貿易や外交の最前線であったわけで、道真はそれなりに満足して仕事していたのかもしれないと思ったりもしました。
優秀な役人出会った彼ですし、言葉も堪能、書も一流、目利きもできる。こんなに適した職場はないような気もするのですよね。
本当がどうであったのか、私たちは想像することしかできませんが、悔しさが抜けたら、たのしく仕事をしていたのかもしれないと思ったりもした一冊でした(*^^*)
投稿元:
レビューを見る
さすが澤田さん、ユーモラスな中に人間くさい道真公(神的凄さも)が描かれていて、いろんな意味で感心した。
投稿元:
レビューを見る
「泣くな道真」の続編。道真が太宰府に流されて5ヶ月。唐物の目利きという愉しみを覚えて落ち着いてきたかと思っていたら、延喜への改元の詔を読んで、あろうことか天皇の正式文書を怒りに任せて破り捨てて仕舞う。道真今日も元気です。
集英社「いきなり文庫」シリーズ。元はWEB連載だったらしい。前回は、キチンと描かれることがなかった太宰府が舞台と新鮮だった。今回はあまり目新しさがなかった。前回は、お世話係に抜擢された保積という小役人の目を通した道真だった。今回は、太宰小弐の小野葛根の目を通した道真だ。面倒を起こさぬよう、叔父の太宰大弐小野葛絃(くずお)に迷惑がかからぬようのみ気を配る管理職役人の目を通して描かれる。道真も「吼えた」のは最初だけで、推理も前回ほどの「鋭さ」がなくて少しガッカリ。
歴史書では、あと一年と数ヶ月で道真は太宰府配流の地で失意のまま亡くなることになっている。あと2-3冊は作れそうだ。その時に向かって、どのように道真が活躍するのか、最後まで見たくなった。
今日からちょっと旅に出ます。少しの間レビューお休みします。
投稿元:
レビューを見る
道真の太宰府ライフに危機?
京から役人が来る。流人の道真が唐物商に出入りして目利きをしている暮らしがバレては一大事と頭を抱える小野葛根。京から来る役人は宮廷に献上された品が贋物だったことを調べに来る。もしかすると義父・小野葛絃が危ないかもしれない。世話になった伯父のためになんとかこのピンチを切り抜けたい葛根は——。
よく働くのは誰のためだろう。孤児を雇い育てていた善珠、ケチと名高い唐物商の老婆・幡多児、「うたたね殿」龍野保積、人のよい外見に鋭さを隠す小野葛絃、京から調査に来た藤原俊蔭、太宰府の衛士・三百樹、そして菅原道真、小野葛根。それぞれが自分の守りたいもののためにそれぞれの働き方で働いている。家族のため、子どものため、かつての自分のため、天皇のため、太宰府のため。
しかし道真は看破する。人は誰しも自分のために励むのだと。誰かに窮地を救われたとしても、その厳しい境遇を生き抜くのは自分の力に頼んでのことなのだと。書で身を立てたいと願う阿紀の無邪気さに葛根は苛立つが、道真はどのような境遇にあっても奪われない知識や技能の大切さ、そしてその力が自分を誇り高く強く生きさせることを示した。
史実によれば道真の太宰府生活は長くない。京に残した妻に向けて漢詩を作った道真。その真意はこの物語ではひとつのプライドとして描かれる。この道真がどのような最期を迎えるのか、物語の終焉を見届けたい。
阿紀の正体(将来?)に気付いたとき、思わず声が出た。
投稿元:
レビューを見る
菅原道真の人間らしい良いところも悪いところも含めて、やっぱり人間だものという感じで面白い。今回の帝への御物のすり替えの捜査に道真の目利きとしての能力が遺憾なく発揮されミステリーとしての面白さもあって楽しめる。
前作は小野小町、今作では小野道風と有名どころが登場するのも気が利いている。
投稿元:
レビューを見る
「泣くな道真」の続編。
菅原道真が太宰府に流されて五か月経ち、『延喜』と改元されるのだが、その詔に道真を侮辱するような言葉が書かれていたため、大切な詔を怒りに任せて破いてしまう。
前作に引き続き、イメージとは違う道真が描かれる。
太宰府で失意の日々を過ごし、都へ帰りたい、帝のそばに戻りたいという思いだけの辛い日々を過ごしているものだと思っていたら、身分を偽り博多津で唐物の目利きをするために出歩くという楽しみを見つけている。
妻は都にいるが、娘は一緒に住んでいるし、それなりに楽しんでいるようだ。
この第二作では、その唐物を巡ってのとんでもない犯罪?陰謀?が描かれる。
帝に献上される唐物が、長年に渡って安物にすり替えられていたというのだ。
それを調べるために今日からやって来た役人と、太宰府に自ら下った小野葛根との対峙が主に描かれるので、道真は少し下がった形になっている。
ただ最終的に事の真相を見つけたのは道真。それも不本意な左遷という憂き目にあった彼だから分かったことだというのが興味深い点だった。
九州から見れば、博多や太宰府は大きな都市なのだが、都から見れば僻地。さらにその博多や太宰府の中でも歴然とした身分や格差はある。
現在にも通じるようなところもあった。
結局のところこの事件は都の人々が朝廷という立場に胡坐をかいていた自業自得ではないのか?とも思えた。
だが実は最後の最後にもうひとひねりあったのは良かった。
道真の上を行く者はまだまだいる。
この太宰府という、一筋縄ではいかない場所で生きていく、もっと広い政の世界で生きていくというのはそういうことなのだろう。
まだ続きがあるだろうか。
小野葛根の一族が興味深い。
投稿元:
レビューを見る
前作『泣くな道真』がおもしろかったので
続きを読んでみました。
博多津通いで鬱憤ばらしができて
落ち着いた生活を送るようになった道真。
ところが、帝に献上された輸入品に
不審な点があるからと
京から役人が来ることになり
屋敷から出られなくなってしまうのだが。
いやいや(笑)
大人しくしてるわけないよねぇ、道真様。
太宰府役人の小野葛根がイライラするほど
余計に動き回っております。
手に負えないけど、憎めないお人ですね。
投稿元:
レビューを見る
流謫の身である菅原道真の”その後”を描く、第二弾。
この巻では太宰少弐である小野葛根の眼から、献上されるべき唐物のすり替え事件の顛末が描かれる。
序盤で丁寧に状況や人間関係を描いていくのは、澤田さんのいつものやりかた。
読者にとってはありがたい一方、人によっては、もうちょっとテンポよく!と思う人もいるかも。
でも、本作は物語上必要な内容がしっかり描かれている。
必要があってそれだけの紙数が費やされるのだということが、読者にもよくわかる。
しかも最後も駆け込みで終わっていくのではなく(他の作品ではその気味があるものも、残念ながらあるが)、しっかり満足感が味わえ、なおかつ少ししっとりした終わり方でよかった。
俊蔭という人物が出てくる。
(つい、宇津保の彼を思い出す。)
唐物史として都から使わされる一本気な官吏である。
この人物の「忠義」と、道真の潰えた「忠義」、そして葛根の叔父への「恩義」が対比されている。
読者としてはいろいろと考えさせられるところだ。
のちの東風となる小野葛絃の次男阿紀と、道真の娘紅姫などかわいらしいカップル(?)も登場した。
続編が書かれるなら、また会いたい子たちだった。
投稿元:
レビューを見る
道真シリーズ第二弾。一作目よりも読みやすかったかも。
心のひだの奥があばかれ、さらけ出された感じ。
小野の息子が書道に傾倒して……もしやあの人?!っていう展開も良かった。
投稿元:
レビューを見る
澤田瞳子さんの初読みは、8年前に『泣くな道真 大宰府の詩』からだ。それから『孤鷹の天』『関越えの夜 東海道浮世がたり』『若冲』と読み継ぎ『火定』で(医療物が苦手)終わっていた。
本作は『泣くな道真 大宰府の詩』の続編となっていて期待は裏切られなかったが、前作のような驚きは少なかった。
道真が「人はな、畢竟他者を救うことも助けることもできはせぬ。人を救うのは己自身。おぬしはこれまで人に助けられ守られてきたと考えているのかもしれん。されどそんな時も真実、自らを支えてきたのは実はおぬし自身だったはずだ」と若い葛根を諭しながら、左遷された道長自身にも言い聞かせているのだろう。
私もしっかり受け止めました、道真さん!
菅原道真が、大宰府に流されて五カ月。左遷に怒り泣き喚いていた道真も、身分をやつして博多津に出かけ、唐物の目利きをする愉しみを覚えた。ある日、京から唐物使の役人が来る。昨年朝廷に献上された品に不審な点があったため内偵中という。調べの間、道真は館に閉じ込めとなり……。
投稿元:
レビューを見る
昨年末に読んだ「泣くな道真」の続編。
道真が大宰府に流されてから5か月。
今回は道真よりもその行動に振り回される太宰少弐・小野葛根の右往左往を楽しむ話。いつの世でも宮仕えの身はつらいね。
その周囲で登場する生臭坊主の泰成、水城の門を護る三百樹、唐物商の善珠、相変わらず業突張りの幡多児など個性豊かな面々が楽しく、肩肘張った葛根が彼らと交わる中で徐々に己を顧みていくところが宜しい。
葛根が支えているつもりの伯父、太宰大弐の小野葛絃の食わせ者振りもなかなかで、恬子が出てこなかったのが寂しいが、代わって葛絃の息子・阿紀が登場。小野家は逸材の宝庫だな。
投稿元:
レビューを見る
前作の「泣くな道真」は面白かったんだけどなあ。今回は作者の仕掛けがわざとらしくて読むのが辛いぐらいだった。なんか小説としてのリアリティがないのだ。
投稿元:
レビューを見る
菅原道真のイメージが180度変わる。人間とは、本当はもっと人間臭くて渋といものなのかも知らない。
その時代の太宰府が、今日の都に真似て坊城制をとっていたこと、想像もつかないくらい国際色豊かだったこと、新しい発見だった。
投稿元:
レビューを見る
前作『泣くな道真』で道真の最期に触れられていたから
続きは読めないものと、残念に思ったけれど、
そうか、こんな風に描けば良いんだね。
ありがたい。
でも、図書館の返却期限で時間切れ。
読み切れず残念。
投稿元:
レビューを見る
実に面白かった。後半、物語にのめりこんで、朝の通勤、一駅乗り過ごしてしまった。(笑)
延喜の年号改元の詔の中で、自らのことを謀反人と表現され、そのことに猛り狂った道真が、唐物を、目利きしながら、次第に静かな目に世の中を見るようになる。それと併せて、中央から来た官人が、大宰府の政庁で唐物を密かにとりえて、京に送っていた犯人を捕縛しにやってくる。
そのことに対して、小野葛根などの大宰府政庁の官人たちが大宰府を守ろうとする物語と言えばいいのかな。
最後に、道真が、人が生きようとすると必ずぶつかり合う、何処かで折り合いをつけていかないけないと語り場面はなんだか心にしみる。
考えたら、道真公は、2年程しか大宰府にはいない。残された時間はわずかなのだなあ。