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いよいよ6月の合同サイン会のサイン本の最後の一人,谷津矢車氏の作品。サイン本はもう一冊あるのだがそれは芦沢央さんのサインを2冊頂いたため。
本作は名前だけなら日本人で知らぬ人はいないであろう服部半蔵を描いた作品。とはいえ,服部半蔵の名前は当主が引き継ぐものだったようだが。服部半蔵といえば忍者のイメージだが,本作では伊賀の出の忍びの一族服部家に生まれた主人公が忍びとして生きていくことを拒み,武士として生きていこうとして家を飛び出すというところから始まるお話である。しかし名前だけ知っていてどういう人物なのか何も知らなかったことを知った。本作では絶妙にフィクションを交えて語られているので,これだけ読んで史実を知ったことにはならないと思うが,現実の服部半蔵は武士として数々の軍功を挙げた人物だったようだ。現行の大河ドラマ「どうする家康」は好みに合わず見ていないので知らなかったが,そちらにも服部半蔵は登場しているようだ。そして徳川家康の側で姪に従って行動する半蔵の目を通して今川家を打ち倒すところから本能寺の変の後の伊賀越えの大阪脱出までが描かれている。そもそも徳川家康にあまり興味がなかったのでこの辺のエピソードはよく知らないことが多く勉強になった。
何かと半蔵の命を脅かす存在の謎の凄腕の忍びの存在や,服部家当主の身を影から守る女忍びなどはフィクションと思われるが,物語に彩りを与えていて面白い。