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日本の敗色濃厚な第二次大戦末期。相剋するふたりの少女が、目覚め、祈るとき……。新しい世界の物語が始まる。特別書き下ろし短篇収録。解説・瀧井朝世
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Amazonの紹介より
大戦末期。東京から宮城の田舎へ集団疎開した浜野清子は、そこで那須野リツと出会った。対立する「海」と「山」の呪縛か、無意識に忌み嫌い合うふたりの少女。だが、戦争という巨大で最悪の対立世界は、彼女たちから、大切な存在を奪ってゆく……。宿命に抗いはじめた少女たちが願う、美しき未来とは――。
「螺旋プロジェクト」の昭和前期編でしたが、ファンタジー要素を入れつつ、相反する2人のバトルが小学生なのに凄まじかったです。特に相手を愛するがゆえの恨みへの反動が文章からでも滲み出ていました。
蒼い目や尖った耳、蝸牛など他の作品での共通アイテムを知っていると、楽しめるのですが、単体で読むと、疑問に思う点もあるかもしれません。あくまでも「螺旋プロジェクト」の中の一つとして考えると、より楽しめるかと思います。
戦争の真っ只中で起きる疎開先での出来事に愛憎劇や戦争における悲惨さも伺えたのですが、ペンダントが光って・・・といったどこかのアニメで見たようなファンタジー要素が入ると、どことなく冷めたような気持ちになってしまいました。
重要な要素であることはわかるのですが、今まで思っていた「色」から別の「色」に変わったことによるちょっとしたがっかり感がありました。
その反面、ファンタジー要素があることにより、読みやすさもあるので、どっちかというと若い人向きかなという印象もありました。
小学生同士ですが、2人の愛憎劇が中心ですが、その他にも戦争における人々の心情、戦争に送り出される男達を通じて「戦う」とは何か?を読者に突きつけられたように感じました。
大切なものや人を失った時、どんな気持ちになるのか?心理描写が強烈でしたが、相反する2人の運命に戦争の悲惨さが絡み合って、物語の世界観に引き込まれていました。
単行本とは違い、文庫オリジナルの続編もあるため、その後の2人がどう成長したのかが描かれています。絶妙な距離感がありながらも、2人の成長にホッとした気持ちになりました。
時には歪み合い、時には引き合う関係性にプロジェクトの魅力が引き出されていて、楽しめました。
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螺旋プロジェクト、昭和前期編。
太平洋戦争末期、舞台は東京と仙台。
蒼い目を持つ聡明な小学生、清子は、その目の為に周囲から奇異な者として扱われ悲しい思いをしてきた。空襲を避け、仙台の山村に疎開。そこで、犬の様な耳を持つ、寺の養い子リツと出会ってしまう。
彼女らは、お互いの存在を認めた瞬間から憎悪か、それ以上の感情を持つ。二人は決して相入れないことを認識する。海族の清子、山族のリツ。今回は、お守りが螺旋アイテムとして描かれる。
古代から近世の対立が大きめだったので、戦争の中の少女達と随分身近になった感じ。
清子の母親の強い者は憎しみを相手ではなく、自分の憎しみと戦うという言葉に 二人の少女達はその相入れない関係を乗り越えようとしていく。
プロジェクトの一冊とはいえ、独立した小説として期待して読むので、大変だなぁと思います。
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螺旋プロジェクトの自分の中での最後の一冊。
子供が主人公だからか、他の作品よりも憎しみが強烈で、抑えきれない様も凄かった。
清子は強いなぁ
見守り役が他の作品よりも、ちゃんと見守り役だった気がする。
第二弾始動、楽しみ
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螺旋プロジェクト 7作品目
乾ルカさん初作品
山育ちのリツと東京から疎開してきた清子。
2人の対立関係が明確でありながら、お互い嫌いあっている?など共通点もあり、読みやすくスイスイ読めました。
嫌いな相手にこそ、より丁寧に接する という私達の普段の生活でも大切な事を改めて教えてもらった感じです。
憎いという心を相手に向けるのではなく、自分を律して自分に勝つ。そんなすごいことが出来る人間に憧れます。
私はやっぱり人の心の動きが分かりやすく書かれている作品が好きだなあ。
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『蒼色の大地』(螺旋プロジェクトで、この作品よりも前の時代の話)よりも個人との関係に特化した話だと思った。
私は(読者)から見てみると、種族が違うという理由で交われない二人がもどかしくも悲しい。
最後、リツが誰と結婚したのか、どんな人生を送ったのか、大人になっても山を歩いているのかとか気になりすぎた。
でももう次の時代(本)に行かないと…。
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螺旋プロジェクト(私の中で)6冊目。
今まで読んだ中で一番海族と山族の対立に対する心の葛藤に焦点を当てた作品だと思う。先が気になり一気読みした。
対立する2人の少女が、それぞれ互いへの憎悪に苦しみながらも、それを乗り越えて自分を律していく様がとても丁寧に描かれていて感動的だった。螺旋プロジェクトの設定に一番ガッツリと向き合っている小説ではないだろうか(これまで読んだ中では)。哀しさの中に力強さを感じる作品だった。
乾ルカの他の著書も読んでみたくなった。
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螺旋プロジェクト8冊目。昭和前半編(戦時中)。
海族と山族の対立する人物は小学校高学年のふたりの少女。都会と田舎、利発と直情、勉強好きと運動好き、と対照的な設定。そして、出会いが二人を変えていく。
小学校高学年は背伸びをしだす年頃だったように思う。よく分からないまま洋楽を聴いたり、ゲームセンターに行ってみたり、異性を意識したり、着飾ってみたり、人と違うことをやってみたり、やらなくなったり。そして、友だちがただ遊ぶだけの対象じゃなくなって、相談したり、趣味の話をしたりっていう対象に変わっていく。家族といる自分と、外にいる自分とを使い分けられるようになっていく。
この作品のテーマの一つは「勇気を出して自らが変わる」こと。憎くても自制する、人を思いやることを形や態度にする、拙くてもコミュニケーションを取る・・・そうやってちゃんとした大人になってく。自分がその大事さに気づいたのは、もういい歳になってから。変わらなくたって僕が僕であれば平気だなんて強がってた。「僕が僕であるために」勝ち続けるのじゃなく、変わり続けなきゃいけない。二人の少女のように、ピュアな心で変わることはできないと思うけど、自分を諦めずに変われるように生きていこう。ブレてもいいから。
そんな勇気をくれた作品でした。
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※評価はすべて3にしています
螺旋プロジェクト。私が読んだ中では4冊目。
身分制度が形式的になくなった後、強調されるのは差別。そこにさらに集団心理が強調された。
物語の構図が対立から学びに変わる過程はあまりに見事。
ストーリーではないが、方言を文字ですんなりと読める表現にも驚く。
特に宮城や山形あたりに縁があるからかもしれないが。
もちろん螺旋プロジェクトの次の時代を読まなければならない。
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面白そうな企画だなと思い8作品を時代順に読みました。
細かくメモしながら読み進めましたが、思ったより伏線や回収などは無く企画としては微妙でしたね。
8作品の中で「コイコワレ」が1番良かったです。
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螺旋プロジェクト第5弾。
昭和初期の戦時下の物語。
海族の個人と山族の個人がぶつかる話でした。螺旋プロジェクトのこの作品より前の時代を描いた作品はどちらかと言えば、一族としての海族vs山族であったり、血統としての海族vs山族であったりしていたので、これまでの時代の話とはちょっと違うな、と感じました。
この作品での、海族は清子、山族はリツ。二人は敵意をお互いに抱いていてそれをストレートに表現する。これは大人じゃなくて、まだ少女だからかな?実際、清子のお母さんも、海族の身体的特徴があるけど、その山族に対する敵意をコントロールすることができていたので。
この物語は渦巻模様の首飾りのお守りがとても重要なアイテムになっていました。この首飾りのお守りが、壊れるとき・・・。で、この首飾りが壊れてから、清子もリツの成長していく。二人とも強くなるんです。
この物語での「超越した存在」源助爺さん。「ウナノハテノガタ」のウェレカセリと同じような風貌のイメージ。この源助爺さんが「超越した存在」になったと実感したことを語るところはビックリ。リツの存在がそうさせたんですね。
清子のお母さんは、海族の一員として、誇り高い存在だと思いましたが、同時に山族の人たちと出会っても、その敵意をうまくコントロールして無益なムダな争いはしないようにしていたのも、凛としていてステキだな、と思いました。嫌いあっていても争わずにやり過ごすことが大切って。
エンディングは個人的にはショッキングでした。同時に力強い希望も感じましたが。
また、エピローグ的な書き下ろしの短編があって、本編のエンディングから15年ぐらい?経った後の話がありましたが、この書き下ろし短編が追加されたのも良かった。清子もリツも戦禍を生き抜いて良かったな、としみじみ思いました。
物語の直接的なテーマではないと思いますが、戦争ではだれも幸せになれないな、と思いました。
ラムネが出てきたり。螺旋プロジェクトの年表にあった「絵本」の元ネタっぽいものが出てきたり。また、ある天皇の名前が語られていたり。リツにクジラっていう生き物がいることを説明していたり。この作品でも螺旋プロジェクトのつながりを感じながら楽しむことが出来ました。
悲しいエピソードもありましたが、楽しく読めました。面白かったです!
引き続き、螺旋プロジェクトを読んでいきます。
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文庫が出た順番の関係もあり、螺旋シリーズの最後がこの本になりました。時代順に読んで、「天使も怪物も眠る夜」で終わるのも良い選択だと思いますが、この本で終わるのも私は良かったと思います。良い作家に出会えて幸せです。
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タイトルの『コイコワレ』。
読み始める前脳内変換した漢字と、読了後脳内変換した漢字が変わってしまうのに気づいた時、ある意味で凄いと思った。
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螺旋シリーズ4冊目。
裏表紙とかのネタバレあらすじは極力読まないようにしてるけど、帯にある「相剋するふたりの美しい少女が目覚め、祈るとき、新しい世界の物語が始まるーー」だけは目が行ってしまったので、そこから女の子たちのあら〜、な展開かと思いきや、普通に山と海の対立バチバチで憎しみ合う上に、舞台は大戦末期という、だいぶ救われない話だった。
ただ、主人公二人の描写がとても良く、特に野生児のリツを応援したくなってしまう。
しかし、この山の海の一族の身体的特徴、別作品だと「よく見ると目の色が違うように思える」程度だった気がしたが、今作ではもうはっきりと青。子供同士のいじめに使われるレベル。誰がいつ見ても青というわけではなく、条件によるとか、少なくとも普通はそこまで気づかないくらいのものだと思ってたが… まあ、あくまでも同じコンセプトから派生しただけでどう表現するかは作者次第だからこういうこともあるか。特に大戦中で目が青いという要素があれば、そりゃ鬼畜米英の血が入ってるとかに使いやすいよな。
あと、首飾りも明らかに命を救うという超常能力が備わっててそこも他の作品と違う気がしたが、前回のもののふの国でも山と海の両属性持つ人達が神の使いみたいな感じになってたし、まあ似たようなもんか。
後半からは、どうにも馬の合わない相手でも自分の憎しみを制御することが肝心という、人生の教科書みたいな内容になってきて、道徳の教科書かな?みたいな感想をちょっと持ちながらも、ちゃんと成長していく二人をもはや親目線で見守ることに。どうか幸せになってくれ〜。
リツの兄ちゃんが山越えようとして顔潰されて死んだのだけがよくわからなかったな…
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螺旋プロジェクト最後に作品。
この作品のテーマが丁寧に描かれていて、全作品の中でも1、2を争う良作。