紙の本
いかにも連城三紀彦
2023/05/21 22:56
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投稿者:ぷりしら - この投稿者のレビュー一覧を見る
流麗な文体。現実と非現実の境が曖昧になって幻惑させられるこの感じ。まさに連城三紀彦!という短編集。それはそれとして…連城ワールドでは男も女も浮気し過ぎじゃないか?ほぼ全員浮気してる、くらいの勢い。
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反転する愛憎と虚実、そして待ち受ける驚愕の結末――騙りの巨匠の大技が冴え渡る、単著未収録の恋愛推理短篇十四篇。文庫オリジナル。〈解説〉浅木原忍
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甘い恋愛の中に潜む憎悪と裏切り… 人の我欲と冷たい断罪が描かれる恋愛短編ミステリー #黒真珠
■きっと読みたくなるレビュー
連城先生のデビュー当時から晩年まで、未単行本化であった短編七作、掌編七作の恋愛推理小説。
昭和時代のダンディな恋愛小説で、重みと渋みのある文章で綴られています。どの作品も愛情描写よりも、人間のいやらしさや業の深さが綿密に描かれていて醜悪さが満点。
そしていつもの通りミステリーとしても読者を楽しませてくれる仕掛けでいっぱいでした。
■おすすめ短編の感想
・黒真珠
表題作、立場が違う女と女の闘い絵巻。
プライドと意地のぶつかって、吐き出される妬み嫉みが見てられません。でも見ちゃう。最後の一文がカッコよくも、今までの自身への後悔をも表していて只々悲しい。
・裁かれる女
ど真ん中の恋愛ミステリー。弁護士と女の舌戦が見事、捻り具合も素晴らしい。
・紫の車
愛憎まみれる人間の性まるだしの物語。人の本音を知るのは難しい…
・ひとつ蘭、紙の別れ
二つの連作短編、面白い!
主人公である女性柚子が、禁断の恋愛による人生が丸ごと描かれていく。
渦に巻き込まれる落ち葉のごとく翻弄されていくが、女性の静かで強い生きざまが渋い。反して男性の甘えと弱さがあまりにも幼稚で、自身をも顧みて恥ずかしくなりました。
・花のない葉
女学生時代の友人からの施しを巡る掌編。
終盤のセリフがこれまで歩んできた道を辛辣に表現されており痺れました。
・白い言葉
夫婦の出会いと家族の物語、素敵すぎる掌編。
種明かしから最後の文章までの心地よさが大好きでした。
■推しポイント
いつの頃からか、毒々しい大人の恋愛ドラマがテレビで見られなくなりました。そして芸能人が不倫なんかしたら、もはや犯罪者のように袋叩きにされています。
本書で語られるような物語も、現実なら決して褒められたことではありません。ただ人のことを好きになるということは、間違いなく生きる希望にはなっているのです。
人を愛することは自体は純粋で美しい。