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“厭が満ちる”というタイトルは「家族円満」にも掛けているとのことで家族内、家族絡みの話がやや多いか。改めて言わずともこの人の怪談は常に厭度満載だが。終盤になるに従って話の厭さ悍ましさがさらに加速度を増していくのもお馴染み。
印象に残ったのは、
・その部屋に住むと米の飯が一切食べられなくなる「腐り米」
・一家揃って死に絶える際に異様な長い叫び声が響く家「サイレン」
・公私で失敗や不運が続く男が突如知ったその理由「なるほとね」
・一族の恥として軟禁された妹と、唯一人心を通わせていた姉「姉妹」
・座敷童子と暮らすことを夢見た男がようやく手に入れた家とは「座敷童子に会いたくて」
・知人宅のクローゼットや押入れに封印されていたもの「同情」
・公私とも理想的な父親をある日突然娘が避け始める「どうする」
・娘の胎内記憶で語られた、夫の知らなかった妻の過去「墓場」など
“禍族厭満”だけあって家族内の話も多い。単純な好奇心、あるいは無防備な同情、善意が報われるどころか最悪の、取り返しのつかぬ結果を招くような話が続く。と同時に悪意ではなく己や家族を守るための保身故の行動でも、時にひどく悍しいものになる……という話も。