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読みながらどうしようもない焦燥感にかられた。
後ろを振り返る、今まで歩いてきた足跡を見る。何食わぬ顔でゆっくりと、あるいは走ってきた跡を見る。
あぁ、そうだった、自分の中にあるこの焦りはかつての自分が目をつぶってやり過ごしたツケなんだ、と気付く。
特別支援学級という特別な場所。そこで起こったいじめ。高校生にもなってなぜ、と思う。
異質なものへの嫌悪か。いや、それは多分、自分の中にもあるけれど気づきたくない「異質」への恐怖と共感なのだ。
ダメなものはダメだとわかっていてもダメだと大声で言えないこと。それが圧倒的に正しくても教室の中ではそれはとてもサムくなるから。その正しさをきちんと受け止められないままでいる伏見くんと、大学生になってその正しさを隠してしまったような大石くん。そして「いじめ」という形で発露させてしまった古川くん。
人としての自分がまだ固まっていない年代の、焦りと怒りと自己嫌悪。
自分と自分の属するグループと、それ以外に分類する世界。そこからはみ出した人を無いものとして目をそらす自分。
それ以外に分類された誰かを思う人がいる。でもその思いをまっとうに言い切れない若さと未熟さ。その憤りと悩み。
古川くんの手紙にあふれる自己正当化と偽善、それを許せないときちんと思えない伏見くんの混乱。
高校生という精神の荒波を乗り切れる人と溺れてしまう人。
その一人一人の断面を新胡桃は荒々しく削り取っていく。
家族に障がい者がいるということ。その家族を大切に思う気持ちと疎ましく思う気持ち、そしてその存在自体を恥ずかしいと思う気持ち。それと同時に自分の中にもある「普通じゃない部分」「障がい未満の困難さ」の自覚。
ひとことでいうなら「生きづらさ」。でもそこにあるのは一つ一つの痛み。
この小説を読んで、簡単に救われることはない。自分の痛みを、もしかすると忘れてしまったあの頃抱えていた痛みをもう一度感じるかもしれない。痛みを痛みとして感じられる自分を気持ちよく思うかもしれない。
そしてそんな自分に嫌気がさすかも知れない。けれどいつかそんな自分をまるごと愛おしいと思えるようになるために、この小説は生まれたのかもしれない。
自分が大切だと思うことを正しく抱えていけることへの祈り。
だからこそ、この小説を何度も読むことになるのだろう。読むたびに見つける自分に向かう言葉の刃。血を流しながら傷をなめながら自分の足跡とちゃんと向き合う。そうやって生きていくんだろう。きっと、これからも。
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途中までは話についていけてた気がするのに、終盤の、敦子と大石と伏見の会話があんまりついて行けなかった。3人とも予想外な会話をしていた。
全ての登場人物がわかる気もするしわからない気もする。
読んでいて、モヤモヤするような、気持ちがずーんと重くなるような本だった。あまり消化できていない。
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めちゃくちゃ読みやすくて、すぐに読み終えてしまいました。どの人が読んでも深く読み込めると思うけど、やはりこれは学生には絶対読んで考えてほしい。誰も彼もが関わったこと、考えたこと、体験したことがあるシチュエーションだと思うし、ありきたりな言葉ですがすごく考えさせられました。
登場人物全員が本当にいろんな事情(考え?という意味でもあるような気がする)や障がいを抱えており、悪いとか嫌なところが見えてもどこか愛おしくて憎めないというか…そこがかなり好きでした。決して軽く扱ってはいけない題材であるし、どうしても影を落とすような場面もあるけどきっと私は何回もこの本を読み直すんだと思います。一生もののこの作品に出会えてよかった。
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真っ直ぐな人間。当たり前の人間。そう思わないとじっとしていられない。目の前の問題と自分たちの事情がリンクしないと無表情で素通りするだなんて、悪意も情動もおかしみに変換するなんて、そんなのが常なんて、古川より余程暴力的だ。(P.36)
おれと大石が互いに感じていた暗さや鈍さのようなものは、きっと"おとな”の兆しだ。色々なものに対する取捨選択や諦めが見えないシワとなって、きめ細かく刻まれているのだ。ー(P.87)
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『何食わぬ顔をされるもどかしさ、するもどかしさ…』
障害を持つ少年に対するいじめ。
傍観者の視点、当事者の視点から、どうすることもできないもどかしさに悩みながらも、正解を見つけようとする若者たちの心の葛藤を描いた作品。読後に感じるもどかしさ… これも作者の意図なのか!?
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○○に出会えたから人生が変わった!幸せになれた!とか、一瞬でなにか変化が起きるような革命的なものは滅多に無く、実質のところ救われたとて救われたのはつかの間で 地獄はゆるやかに永く近くに在る。本作の登場人物にとっての地獄はわたしより深いものかもしれないけれど、他人のすべてを図り知ることは決してできない。地獄はきっとそれぞれにあって、だれかの地獄はだれかの天国でもある。みんな救い救われながら生きてるんだな、と昨日のバイト中思ったことをなぜか今思い出した。めちゃくちゃそれだ。古川とあこちゃんの少し危うくて凸凹な関係性が、すきだと思った。
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向き合わずにいられて、安全圏で生きられて、いいな――。
傷だらけで世界への違和にもがく高校生たちの姿を描き出す青春中編。
(アマゾンより引用)
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個人的にはちょっとわかりにくかった
時系列がバラバラで全体像をつかめなかった
からかもしれません
学生時代特有の人との距離感、
調子に乗って人に接して後から後悔するなどの
描写がリアルでした
学生さんか読んだら違う感想を
持つかもしれません
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登場人物それぞれの気持ちがわかるようなわからないような、とても捉えどころが難しいニュアンスが多く含まれていた。
敦子が前向きに一歩踏み出せますように。
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誰かに対しても自分に対しても、行動や抱いた気持ちがきっと正解ではないと感じてることに、登場人物たちが不器用にも向き合っていました。それを読んでいるこちら側もうまく言葉にできないし、正解の形はわからないけれど、何か感じたことから目をそらしてはいけないと感じました。
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こんなに若い作家さんが出てきていて文芸の未来は明るいですね。
と思うと同時に自分の年を感じてしまいます。
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ちょっと分かりにくいな…この短さだから読み切れたかもしれない。所々ポエマーチックで捉えどころがないというか登場人物がみんなセンシティブで人の機微って文章力や雰囲気がないと伝わりづらいのかなと思った。
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ふつうに生きてきたら、きっと誰しも感じたことがあるでろう、申し訳ないというか、かなしいというか、なさけないというか、だけどどうしても嫌だな、という
あの気持ち。