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そうかあミステリはこうやって面白いのかとしみじみ思った一冊。ヤバイ。事件ミステリってようするに探りあいだと思うけど、緊張感があって秘密があって、そこにウィットやユーモアを利かせていくという会話の妙。密度がヤバイ。っていうか嫁さんが欲しくなった。
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ミネット・ウォルターズ3作目で、一番お気に入りです。
興味をそそるユニークなモチーフ、リアリティがありながら意外な展開、複雑で味わい豊かです。
印象的な老婦人が謎の死、知り合いというだけで遺産を譲られたヒロインは遺産争いに巻き込まれ、老婦人の真意を知ろうとします。
94年CWA(英国推理作家協会)賞ゴールド・ダガー(最優秀長編賞)受賞作。
日本では97年「このミステリーがすごい!」海外編で第4位。
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すごい好みのミステリー。
というか、気合の入ったおばあちゃんの話は大体好みなのだけど。
故人の日記が不意に挿入される文章の構成は、話自体の雰囲気ともあっていて面白い。
「彼女は、少しの哀憐に値する。ひとは皆そうなんだよ」というジャックの台詞と、「私のこの、男たちに対する侮蔑の念。やはり異常なのかもしれない」というマチルダの台詞が、正確には対比ではないけれど、ふたつワンセットで思い出されてしまう。
マチルダの、傲慢と計算高さに覆い隠された傷つきやすさが痛ましい話。
彼女にセアラという存在がいたことは、最後に与えられた神様の哀れみのようでもあって、けれどそれは慶事には感じられない。むしろ悲しい。
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「氷の家」「女彫刻家」のウォルターズのミステリー。
資産家の老婦人が、頭に枷をつけ、野草をかざり、浴室で死んでいた…。
自殺か、他殺か?
小さな村は、疑心に満ちていく。
も、人物造詣が素晴らしいです。主人公も、殺された老婦人も(彼女の日記が章の間にはいってるんだけど、むしろ怖い)いいんだけど、主人公の夫がピカイチ。
画家で、医者の妻に頼って生きてるようなんだけど、実際はすごい自我を持っていて…。
ともかく、すごいのだ。
昔の歪んだ価値観ゆえに虐げられた女性の悲劇という、ウォルターズが書き続けているものが、やはり根底にあるのだけど、これが一番明確だったな。
今年の、このミスとかベストとか、きっと入ってくると思うよ>早いって。
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ロンドン郊外の村で資産家の老女が死んだ。頭に鉄製の轡(くつわ)をかぶって。遺産は縁もゆかりもない彼女の主治医に渡った。果たしてこの事件はシェイクスピアに似せた自殺なのか、それとも村中から嫌われていた彼女を憎んでの殺人だったのか。
ストーリー展開も生前の彼女の日記をところどころはさんで現在と過去を入り乱らせていて、なかなか良かった。でも最初と途中からで画家の登場人物の性格が余りにも変わっていくのは、チョット納得がいかなかったかな。
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ウォルターズ作品として認識して読んだのは、これが最初です。インパクトの強い鉄の枷や、今とは異なる時代に生きた女性の生きざまが、衝撃的で、一気に読みました。
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ミネット・ウォルターズの長編第三作。原題の『Scold's Bridle』というのは、昔の英国で使用されていた舌を押さえる金具の付いた拘束具のことで、口うるさい女性に罰として被せていたものなのだそうです。
事件は、ある資産家の老婦人、マチルダが手首を切って浴槽で死んでいたことから始まります。それだけなら自殺のようにも見えるのですが、死者の頭には野菊や刺草で飾られたスコウルズ・ブライドルが被せられていました。果たして彼女は自殺なのか、それとも誰かに殺されたのか、この謎を追ってストーリーが展開していきます。
なのですが、読み進めていくうちに、そうした事件の謎よりも、次第にマチルダとはいったいどんな人物だったのか、その真意はどこにあったのか、そのことにすっかり意識を持っていかれてしまいました。推理小説を読んでいるのに誰が犯人かとか、どうやって殺したのかとか全く気にならなくなると言うのは、思えばちょっと不思議な状況です。
数冊読んでみての印象ですが、ミネット・ウォルターズのミステリは、誰が犯人かといった事件の謎を解き明かすことよりも、それに関わる人物自身を解き明かすことを主眼に置いているような気がします。しかし、人物を解き明かすといっても、その過程は、作者の創作したキャラクターを読者に一方的に押し付けると言うような単調なものではありません。というか、彼女のミステリでは、登場人物に対する安易な理解というのはあっさりと拒絶されてしまいます。人物の謎は登場人物たちが一方的に解き明かしていくのではなく、読み手も同じように考えさせられてしまうのです。そして、それが読者を物語に引き込む原動力にもなっていて、決して心地よいとは言えないけれど、深い余韻を残す読後感を生み出しているように思います。
ミネット・ウォルターズの描く人物はいい人とか悪い人とかで割り切れるほど簡単ではなく、作中で登場するマチルダの肖像画のようにとても複雑です。偏見や先入観に基づいた理解もそうですが、一面だけみて好意的に解釈することも表面的な理解という点では同じことなのかもしれません。物語最後のジャックの言葉は、それだけ抜き出しても特に心動かされるものではないと思いますが、登場人物たちと共に事件を追ってきた読者の胸には強い印象を与える言葉として響くのではないかと思います。
ちょっと堅苦しい感想になってしましましたが、物語の進行もテンポ良く、恋愛要素やサブストーリーも充実していて、エンターテイメント小説としてとても楽しめます。おすすめの一冊です。
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「氷の家」と同じ作者だったので。
それほど複雑な人間関係でもなかったのに、
途中で混乱してしまった。
シェイクスピアの台詞に精通している訳ではないが、
少なくともクーパー刑事よりは作品を知っていたので
そのせいではないと思う。
作品の要とも言うべき鉄の枷、
「スコウルズ・ブライドル」の実感がないせかもしれない。
画家なのに熱く飛び出した主人公の夫ジャックも良かったが、
人を見る目に自信を無くかけたクーパー刑事が良かったかな。
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資産家の老婦人が中世の鉄の拘束具スコウルズブライドルを付けて浴槽で死んでいた。自殺か殺人か。現代ミステリの女王ミネットウォルターズもここ10年くらい新作が出てないがクリスティと違ってハズレがない。現代だけあってどんでん返しや人間描写が半端ないストーリーテーラーだ。猜疑心と絶望からの希望と愛情のラストへ。後半のとんでもない展開は頭を掴まれてぐわんぐわんと振り回されるから2冊と続けて読めない