投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
凄かった。
標本を盗んだ理由が毛針というのにそんなことに!?となったけど標本を手に入れるまでの命がけのの経緯、ファッションのために採集や密輸によって絶滅に追いやられる美しい羽根をもつ鳥達、善と悪、毛針愛好者達の熱狂、自然史博物館の意義、これは現実にあったことで他のあらゆる価値のあるものに言えることだ。
とても濃厚なドキュメンタリーだった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
釣りの疑似餌として使用する毛針に魅せられ、熱狂する大人たちがいる。エキゾチックな鳥類種による高価で非合法な羽を使用して毛針を作り、それを他人に自慢して悦に浸るのだ。驚いたのは、ほぼ入手困難となった鳥の羽を寄せ集めた耽美的なディスプレイをSNS上にアップし、見せびらかしを楽しむことを「フェザー・ポルノ」と呼ぶそうだ!美しい羽根はそれほどに魅力的らしい。はるか昔に流行った芸術様式の毛針レシピに心酔するような毛針制作愛好家達は、製作はするものの、釣りの場面で実際にその毛針を使用することはないという。美しいものを所有したい、手に入らないものほど欲しくなる、ひとたび手にすると周りからの賞賛や喝采を浴びる…という具合に、簡単に中毒になってしまう環境が揃っている。そして伝説のレシピに沿った「本物」を自分の手で製作したいがために、博物館から盗み出すという犯罪まで犯してしまう者もいる。どの時代においても、「美しさ」とは人を狂わせてしまう罪な存在なのかもしれない。
本書は内容の面白さもさることながら、装丁も美しい。まるで鳥の羽のような少しざらりとする質感のカバーを取ると、マットなダークグレー地にシルバーで繊細な羽が描かれている。本を開いた見返しは鱗のような紙になっていおり、触れることで指先の感覚から読者を鳥の世界へと誘う。花切には鮮やかなターコイズブルーとオレンジが使用されており、本書に出てくる鳥の羽の色を連想させる。読むだけでなく、見ても触れても楽しめる、もっと多くの人に読まれてほしい良書。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
珍かな鳥の標本盗難事件がテーマのノンフィクション。前半は鳥と鳥の標本の歴史、犯人のバックボーンなど。後半では著者が本事件を調査する。
貴重、稀少で美しい標本が青年を盗難に駆り立てる様子を追える。面白かったです。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
鳥類標本の窃盗事件をテーマにした、長大ながらも引き込まれて読み込まされてしまうノンフィクション。読み心地はミステリに近く、社会問題にも切り込みながら、ひとつひとつ誠実に事件を追う作者の丁寧な筆致のおかげでとても読みやすかった。
誰がやったのかは明白ながら、犯人はあっけなく釈放されていた事件。この事件に興味を抱き、「なぜ簡単に釈放されたのか」「動機はなんだったのか」「なぜ簡単に盗まれてしまったのか」等々の放置されたままだった細かな事象にひとつひとつ取り組み、その追及の過程で知っていく、毛針愛好家たちの自己勝手な事情や博物館の保管事情、ワシントン保護条約を無視して取引できているイーベイなどいった諸問題の複雑さ、深さが真に迫って描かれていて、唸らされるばかりだった。
興味深い事件だった、と片付けるには、口絵写真にあった鳥たちの姿は無残に過ぎるし、あれで解決になった事件への歯がゆさは残る。ただ、鳥の標本に限らず博物館の「昔のもの」は、教育的な意味、科学的な期待などを込めて、いまではなく未来へと繋いでいくための財産であるのは確かなので、個人の欲で破壊されてしまうのはやはり、憤りを感じずにはいられなかった。最後の本文に無力感が漂ったものの、どうにかならないものかと、空を仰がずにいられなかった。