投稿元:
レビューを見る
もう夏も終わりの今になって、滑り込みで読み終えた。ペク・スリンは初めて読んだけど、細やかでよかったな。『ブランシュガー・キャンディ』が特に◎。「アカシアの林、初めてのキス』も。
投稿元:
レビューを見る
『旅をしてでも行きたい街の本屋さん』に掲載されている、高松の“本屋ルヌガンガ”に出掛けた。ご主人は名張市にも出店している大手チェーン書店に勤めていたことがあり、ご縁話もひとしきり。
この書店でないと手に取らないだろうなと感じたのが、韓国の作家ペク・スリンさんの短編集『夏のヴィラ』。
ストーリーを語る言葉のすぐ下に喜びや哀しみが流れており、起伏の少ないエピソードだが、世界観に引き込まれる。韓国の格差社会の厳しさの中、厳しい現実を過去形にすることにより美化しているのか、とも考える。珠玉の、とつけたい短編集だった。
投稿元:
レビューを見る
短編集8編
韓国の女性である事が一つのテーマでありもうひとつはその為ばかりではないけれど何らかの別れが描かれている。心の片隅に育っていく諦めや後悔、かって憧れ損なわれた物、そういう魂の叫びがずうっと鳴り響いているかのようだ。
どれも良かったけれど、祖母の想いに寄せた「ブラウンシュガーキャンディ」が好きです。
投稿元:
レビューを見る
短編集。「時間の軌跡」、「夏のヴィラ」、「ひそやかな事件」、「大雪」、「まだ家には帰らない」、「ブラウンシュガー・キャンディ」、「ほんのわずかな合間に」、「アカシアの林」、「初めてのキス」。人と人との関係を繊細な文章で描写する。どの短編もすぐに物語に引き込まれていった。
投稿元:
レビューを見る
初めて読んだ韓国の本。なにかの雑誌で江國香織好きの人にオススメと書いてあったので読んでみた。8編の短編のどれも私が思っていた終わりとは違っていて、でもそれは私が物語的結末を予想していたからだとおもう。この本はどこまでもリアルな人の心を追求していて、だからこそ美しいけど少し悲しい。『時間の軌跡』と『夏のヴィラ』が好き。
投稿元:
レビューを見る
時間と距離はどんなに遠くても
一瞬の真実の美しさは
消えてなくなりはしない
ペク・スリンは私たちのこころの奥にある
幽かな本物の愛を掬い取って描く
「惨憺たる光」「黒糖キャンディー」の著者はいっそう愛を深めて確信を持つ作家となっていた
八つの短編のすべてに私たちを見つけた
私たちの中の違い、境界を超えたひと
それを見たひとだけが放つ美しさ
著者のあとがきにも力強さと優しさがある
投稿元:
レビューを見る
毎日信じられないくらいに暑いので読書でも涼を求め「いつかの夏に読もう」と決めていた本著を読んだ。タイトル、ジャケからして優雅なリゾート小説かと思いきや、女性を主人公とした非常に繊細な感情が綴られた素晴らしい短編集だった。
著者はほぼ同年代の韓国の方。韓国の小説を読むのが久しぶりで、こんなに近い感覚を抱けるのかという改めて驚きがあった。欧米などの小説を読んでいるときには客観視している場面が多いが、本著を読むあいだは主観的に読んでいることが多かった。各短編はすべて女性が主人公。様々な世代の女性がそれぞれの人生のフェーズで直面する変化とどう向き合って生きていくのか?といった話が多かった。変化とその後に残るもの的な。例えばいくつかの短編ではソウルの街の変化(再開発)と人間の変化を重ね合わせており、つまりは古い関係、古いものとの別れや断絶。こういった変化の中で起こる感情の微妙な機微を繊細な文章で丁寧に表現しているのが印象的だった。ベタでウェットな感情が露呈するギリ手前なんだけど読後には確かに心に残る…本当に絶妙なバランス。メタファーなどを含めてストーリーだけではない魅力もふんだんにあった。
女性ゆえの生き辛さ、性別役割に関する言及もテーマの1つとなっている。近年の韓国小説のムードとしてそれらに抗うものが多くあるが本著は逆でその役割を呑み込む登場人物が多い。その中でパッシブな人生を少しでもアクティブにするために飛躍する瞬間があって希望を感じた。もう1冊短編集が邦訳されいるようなので読んでみたい。