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新たなマーケット(市場)としての「ソロ」の可能性と、その取り込みに必要な視点を学べる本です。
これまで、「若者」「女性」「家族」といったキーワードがターゲットとして注目されがちでしたが、変化が起こっています。
人口減少や未婚者の増加で、独身の方や、既婚でも1人で行動する「ソロ」に注目すべき、と著者は説きます。
従来、メインターゲットに比べ消費性向が弱いとされた「ソロ」でしたが、相対的に市場での割合が高くなっていることは注目すべきです。
当然、これまでのターゲットとは違う戦略が求められてきますが、傾向を知っておけば、新たなチャンスになる可能性を秘めています。
これまでのビジネスモデルが通用しなくなってきたと悩むビジネスパーソンの方が読むと、解決のヒントが得られそうな1冊です。
【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】
「独身男性はマーケティング上、独身女性より消費性向が低く、既婚より年収が低かったことから重視されていなかったが、社会構造が変わる中で無視はできないし、消費力も低いわけではない。独身女性と比較すると消費実額も大きく、むしろ優良顧客と見るべき。」
「統計(家計調査)を見てもわかるが、外食産業を支えてきたのは、独身者たちの『ソロ外食』行動。コロナ禍では、家族よりソロ客が減少したことが痛かった。総外食市場でも独身は市場全体の6割弱、そのうち独身男性が約7割。エンゲル係数も独身が高い。」
「買い物、旅行などでの所有や体験は、それ自体が目的ではなく、奥底にある『欠落感』を埋め、『精神的な安定や充足』を得るという目的を達成するための手段、という『エモ消費』にシフトしている。」
→ビジネスは、あるべき姿を描くことも大事ですが、起こっていることを現実として、それに対して何ができるのかという視点を持つことも重要です。未婚率の増加は社会課題と言われますが、その一方で、増加した「ソロ」に対して、何ができるのかを考えることも、ニーズの高まりへの対応となります。
【もう少し詳しい内容の覚え書き】
・結婚しても、子供を産み育て、家族となっても、誰もがいつかはソロに戻る可能性がある。むしろ、未婚や離婚の増加で、「親子」という家族で過ごす時間は相対的に減っていると見るべき。いつまでも家族向けの商売をやっていても通用しない。
・ソロと家族では消費行動は別物。テクノロジーの進歩もあって、接触する情報量の増大という環境変化も起こった。社会の構造が激変した中で、いつまでも性別や年齢、世代で消費者を捉えても時代遅れ。情報過多の時代には「感情」の力が重要になる。
・ソロの欠落感の穴埋め=幸福感の提供にシフトした方がよい。どうしたらソロの人々が自己の役割を感じられるかを考えてみる。ソロたちが楽しく仕事をして、熱中する何かに消費することで経済が回り、それが巡り巡って誰かを助ければ、家族にも好影響が及ぶ。
○消費構造が変わる
・価値観は、世代ではなく、経済環境によって大きく変わる。趣味嗜好を実施する経済力や人間関係、環境の問題が大きい。子供を多く含むZ世代より、40〜50代独身者を狙うほうが、マーケティング的には大きな市場ではないか。
・独身男性はマーケティング上、独身女性より消費性向が低く、既婚より年収が低かったことから重視されていなかったが、社会構造が変わる中で無視はできないし、消費力も低いわけではない。独身女性と比較すると消費実額も大きく、むしろ優良顧客と見るべき。
・既婚の中にも、一人でお酒を飲みに行ったり、遊びに行くことを好む、ソロ度が高い人たちもいる。通勤時間という「一人になれる貴重な時間」がコロナ禍でのリモート普及で減ったことで、ソロ活のニーズが高まる可能性もある。
・「消費の個人化」は進むので、それに対応した適応戦略が必要。50代になっても3割の男性が生涯未婚の時代になれば、年代で区切る意味も薄れる。女性も生涯未婚は2割になる。専業主婦も減り、自分の稼ぎで消費するパターンも増える。
○市場が変わる
・統計(家計調査)を見てもわかるが、外食産業を支えてきたのは、独身者たちの「ソロ外食」行動。コロナ禍では、家族よりソロ客が減少したことが痛かった。総外食市場でも独身は市場全体の6割弱、そのうち独身男性が約7割。エンゲル係数も独身が高い。
・旅行業界も、かつてはソロ客を相手にしていなかったが、もはや無視できない規模の需要があることがわかり、1人で申し込めるツアー、温泉旅館も増えた。
・今後、順調にオタク人口は伸長する見込が多く、ソロ活人口、行動も増えていく。オタク層は一度気に入ったら浮気をしない優良顧客になりやすい。のめり込みやすく、リピート率が高い。
・男性メイク市場の活発化が見込まれるが、それを「モテたい」という個人的欲求の高まりだけと勘違いすると見誤る。もっと内面の「自信を持ちたい」「舐められたくない」という社会的欲求を訴求した方が市場は拡大する。中高年の方が高単価なことも重要視したい。
○感情をとらえる
・家族は現状に満足し維持する「現状維持消費」傾向があるが、ソロは現状を打破する「現状変革消費」傾向がある。別の見方をすれば、独身は「現状に満足していない」とも言える。
・「欠落感」を紐解くと、「何も達成していないのでは」「どこにも属していないのでは」という不安に基づく。未達成による欠落とは「お金を稼いでいない」「恋愛相手がいない」、未所属による欠落とは「愛すべき家族がいない」「友達がいない」などである。
・買い物、旅行などでの所有や体験は、それ自体が目的ではなく、奥底にある「欠落感」を埋め、「精神的な安定や充足」を得るという目的を達成するための手段、という「エモ消費」にシフトしている。
○環境のお膳立て
・エモ消費は、「感情→行動→思考」で、行動と思考が逆。言い表せないけど何かいいよね、という感情がそのままだとモヤモヤするので、まず消費という行動を起こし、行動した事実によって感情の理屈付けをしている。特に、モヤモヤを言語化されると、気持ちよく感じる。
・最初に生まれる「感情」は「環境」で左右される。無から感情は生まれない。何らかの外的刺激などの環境要因があってこそ、その反射として始めて感情が芽生える。感情が沸き起こっても、物理的・肉体的な環境が不備であれば行動に至らないまま終わってしまう。
・環境の力の大きさをわきまえていないと、大きな間違いを犯す。「何を言ったか」より「誰が言ったか」が重要と言われるが、その次に重要となるのは「誰がどう言ったか」。ターゲットに行動させたければ、最初に環境を整え、それから感情を攻め、その後理屈を使いたい。
・売り手側の勝手な都合を押し付けるのではなく、お客様がどういう行動をしたら気持ちいいか、行動することでお客様にどんな感情的な「得」があるのかを提示するのが大事。こちらの都合がお客様に見えても参加するので、ウィンウィンの関係性を作れる。
・「面倒くさい」と言われたら、その感情を尊重して「行動しない行動」を「消費によって解決」すればいい。行動には無行動も含まれる。それを正当化してくれると「何かいい」となる。「面倒くさい」を価値と考え、それを消費で解決できるという提示をしたい。
・自らお金を支払っている行動も実は能動ではなく、本質的には受動。それを意識しないのは、理屈付けのおかげでもある。勘違いでも錯覚でも「これは自分が進んでやっている」と感じられると、幸福な感情の喚起、認識を促してくれたことへの対価を支払う。
・これまでの地域・家族・職場といったコミュニティが環境変化で消滅し、あり方が「所属」から「接続」に変わる。時と場合に応じて柔軟に接続し、コミュニティを組み替える。居場所という安心感はないが、承認や達成感を得る場となり、それを感じられれば、消費も発生する。