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短編が4つと中編が一つの構成だが、全般的にどんよりとした雰囲気の読後感だった.強盗の助けをしたにもかかわらず相棒に裏切られた佐藤の小心さを示した表題作.妻に逃げられた田村浩一の優柔不断さを表した「アジサイ」.「風力発電所」では難解な下北弁が出てきて現実を経験した小生としてはにやりとした.思い出話に満足した浩一の回想を示した「埋立地」.少し長めの「海がふくれて」が一番楽しめた.琴子と颯汰が暮らす海岸べりの町での淡々とした話だが、合挽場所の灯台、凪読み様の老婆、沖だしに行って帰って来ない父への手紙、フナダマ様を祭る行事、父の頭骨の発見など印象的なエピソードが随所に散りばめられた構成が良かった.
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5篇を収録した短篇集。
表題作の「叩く」は、闇バイトで空き巣に応募したところ強盗だったというお話。すったもんだの挙句、拘束した老婆を殺すか否かで逡巡する心模様が描かれる。あまり気持ちのいい話ではない。
続く「アジサイ」は、置き手紙を残して妻が実家に帰ってしまった男の顛末。途中まではひどく共感したけれど、このオチはない。
最後にして本書中最長の「海がふくれて」は、東日本大震災で父親が行方不明になった少女のお話。幼馴染の少年と付き合い始めた少女の心が瑞々しく描かれている。が、やはり……。この作家さん、合わないかも。
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アジサイの物語は、想像を掻き立てる話で好きだ。埋立地は、とにかく怖いし、当事者意識のなさを表す内容で現実的だ。個人的にまずまずの内容だ。