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2023/07/02 20:41
投稿元:
経営を要素分解する
経営学の第一人者である伊丹教授が経営とは、その学問である経営学とは何かを様々な要素に分解し、その要素ごとに解説。
■概要
ざっくりまとめると
・設計する(ポジショニングと未来へのロードマップ)
・組織づくり(理念から)、組織を動かす、運営(オペレーション)
・決断、想定外への対処
・企業としての本質(人と金の集合体、モノ・サービスの技術変換)
となる
■感想
なるほど要素はある、バカな要素がない。だから何?で終わる。ほとんど印象に残らない、過去の経営学で学んできたことの総復習、再編集という位置づけか。初めて経営学を学ぶ人に対する概論として、もしくは逆に緻密に経営学を体系化したい人にとっては良い本だと思う。経営学に触れながらビジネスにおいて実践したいニーズとは合わなかった。
↓
著者のtargetingと読み手のアンマッチ。
2023/08/07 17:25
投稿元:
経営学の体系として、
・未来を設計する
現在の立ち位置(誰のための何者になるか)を設計し、さらに将来どうなりたいかを描く
・他人を通してことを成す
組織として成果をあげるための影響システム(適切な権限委譲、コミュニケーションと調整のしくみ作り、インセンティブシステム)と自己刺激のシステム(理念の浸透、リーダーが先頭に立って意志を明確にすることによる組織文化の醸成、ヨコの刺激が生まれやすい職場や仕事の設計)を構築する
・想定外に対処する
コンティンジェンシープランの策定、何を修正すべきかの判断、想定外から得た教訓の体制への組み込み、想定外対処から得たノウハウの蓄積
これらに通奏低音として流れる決断(直感で発想し、論理で検証し、哲学で跳躍する)の重要性。
を提示。
さらに、企業という存在の本質として、
・技術的変換により価値を生み出す存在であること
・カネの結合体であり、かつ、ヒトの結合体であること
・社会に生かされている存在であること
があり、この本質に照らして、適切な技術や情報の蓄積、カネの論理(結果主義)とヒトの論理(プロセスとしてのやりがい)のバランス、社会貢献に対して、未来を設計し他人を動かし想定外に対処して決断していくのが経営者の仕事であるとする。
2023/08/25 16:02
投稿元:
経営学とはなにか
実際に組織全体のトップとしてあるいは下部組織の長として、「経営」という行為を仕事としている人たち( リーダーと呼ぼう) がなにを行うべきか、を経営のステップの順序で考えて、浮かび上がったリーダーの行動を体系化したものが、本書の内容となった。以下のようなシンプルなものである。
1未来への設計図を描く
2設計図の具現化のために、 組織のメンバ— に仕事をしてもらう、いわば「他人を通して事をなす」、 そのための仕組みをつくる
3現実の実行プロセスで想定外の事がおきたとき、 対処行動をとる
4以上の三つのステップのあちこちで、 必要な決断をする
序章 終営学の全体像
この本全体を貫いている「経営するということ」の定義は、
「組織で働く人々の行動を導き、彼らの行動が生産的でありかつ成果が上がるようなものにすること」というものである。
この定義をつくるのに、ドラッカーの見解をベースにした。彼は経営者の責任についてこう書いて締めくくっている。
「経営者は、組織をつくるという道義的責任と、一人ひとりの人間の強みを生産的なものとし、成果が上がるようなものにする責任を引き受けなければならない」
つぎの二つのことが、経営学が目的とすべきものだと、私は考える。
経営現象の理解のための枠組み、概念、理論の提供
有効な経営行動の提示と、それがなぜ有効かの論理の提供
第I部の経営行動の原理では、経営者あるいはリーダーが経営行動をとる際の典型的なステップの順序に従い、以下の三つのタイプの経営行動の原理に大別して議論していこう。
・未来への設計図を描く
・他人を通して事をなす
・想定外に対処する
経営行動の三つのステップのいずれにも通奏低音のように、「決断する」ということの重要性が流れているのである。したがって、そうした決断をする際の原理はなにかを議論する必要が出てくる。それが経営行動の原理の第四の部分である。
第Ⅱ部では、企業というもののわれわれの社会での存在の重み、そして企業という組織での経営行動の議論が圧倒的に多いことを考え、企業という存在の特徴、あるいはその本質について議論しよう。企業の本質を三つに分けて議論しようと思う。
・企業が果たしている役割の本質ー技術的変換
・企業の構成の本質— カネの結合体とヒトの結合体の二面性
・企業と社会との関係の本質—社会からのさまざまな恩恵のおかげで生きている存在
第1章 組織の立ち位置を設計する
未来への設計図を描く①
・立ち位置のコンセプト設計と構造設計
・『製品・顧客構造の設計(なにを誰に提供するか)
・製品・顧客構造の拡大、三つの方向
・訴求力構造の設計(なにで顧客にアピールするか)
・供給カ構造の設計(意図する訴求力を現実に供給できるように)
・供給カ構造が、カネと情報の蓄積を決める(仕事から将来への蓄積が生まれる)
・立ち位置設計の三つの判断基準
第一の判断基準は、三つの構造設計が相互につじつまが合っていること、である。製品、 顧客構造の設計、���求力構造の設計、供給力構造の設計は、それぞれが相互に整合的でなければならない。
立ち位置設計の第二の判断基準は、環境からのニーズ(顧客のニーズや社会的要請) や環境からの制約(政府の規制や社会的制約など) とのマッチングがとれているか、ということである。いわば、第一の基準が立ち位置設計の内部での整合性であったのに対して、第二の判断基準は外部(環境) との整合性の問題である。
立ち位置設計の第三の判断基準は、組織の能力基盤の支えがあるか、である。つまり、設計図を現実のものとできるような能力基盤を自分たちは持っているのかという、ある意味で深刻な問いである。
その能力基盤とは、カネの基盤だけでなく、人材の基盤、技術の基盤、顧客の信用の基盤、分業相手との協力関係の基盤、などさまざまである。能力とは、「やりたいと思うことをできるためのカ」であって、立ち位置設計の判断の際には多様な能力基盤を考える必要がある。
第2章 未来をめざす流れを設計する
②未来への設計図を描く
どのような順序でどんな行動をとろうと計画するか、という流れの設計である。
その設計の対象として、つぎの三つの流れが一般的に重要であろう。
1未来の立ち位置への大きな流れ
2能力蓄積の流れ
3イノベーションへの流れ
多くのイノベーションが生まれるまでのプロセス(イノベーションプロセス) では、つぎの三つのステップが段階を追って積み重なっている。
1筋のいい技術を育てる
2市場への出口をつくる
3社会を動かす
る「未来への流れの設計」を、この章ではつぎのような順序で解説していこう。
・大きな立ち位置進化の三つの方向性(拡幅、 深化、 転進)
・能力蓄積への流れ
・能力基盤拡大プロセスの構造設計
・情報蓄積を加速する「仕事」の構造設計
・イノベーションプロセスの構造設計
・筋のいい技術を育てるための構造設計
・需要を大きく育てるための構造設計
大きな立ち位置進化の三つの方向性
・拡幅
・深化
・転進
能力蓄積への流れ
・物理的能力
・情報システム能力
・ヒトによる情報蓄積
三種類の能力基盤( 物理的能力、情報システム能力、 ヒトの情報蓄積) の拡大のための能力蓄積ルートとして、ふつうはつぎの二つのタイプがある。
-直接ル—卜( 能力基盤拡大を直接目的とする資源投入による基盤拡大)
-間接ルート( 日常の仕事の実行プロセスがもたらす能力基盤拡大)
能力蓄積の流れの設計のコンセプト設計に当たる部分として、つぎの二つのコンセプト設計が中心となることが理解できるだろう。
1自分の組織の能力基盤ポートフォリオの特徴をどこに置くか
2能力基盤拡大のための蓄積ル—卜を、どのように組み合わせるか
「情報蓄積を加速する仕事の構造設計」である。
この構造設計のポイントは、つぎの三つになるだろう。
1豊かな情報の流れる仕事に焦点を当て、 その仕事を自分で行う 、
2流れる情報をきちんと貯めるような仕組みをつくる
3既存の組織活動に近接している業務へ「しみ出し」や「斜め飛び」をし���、 仕事の幅を拡げる
筋のいい技術を育てるためのプロセス構造設計として、つぎの三つのポイントが大切となることが多いだろう。
1イノベーションの原始スープが現場で生まれる土壌をつくる
2筋のよさを嗅ぎ分けられる指導者的人材の配置
3偶然から学べる土壌をつくる
イノベーションプロセスの構造設計の二つ目として、需要を大きく育てるための構造設計の問題に移ろう。ここでは、つぎの三つのポイントが一般的には大切である。
1市場への出口をつくるために、自らの主張を持ち、 潜在ニーズーや未知のニーズを掘り当てるというスタンス
2市場拡大のための、市場の説得プロセスの工夫
3社会が動くための、社会的ドミノ効果の発信起点の工夫
第3章 組織的な影響システムをつくる
①他人を通して事をなす
人間の内面のどこがちがうことが、組織での経営行動の原理を考える際に大切なのか。それは、個々の人が自分の内面に持っているつぎの四つの基礎要因である。この四つが、現場の人たちが自分の行動を決めるさいに本質的なインパクトを持つ基礎要因である。
・目的
・情報( 記憶されている情報や知識)
・思考様式( 認識と判断のパタ—ン)
・感情
「組織の人々に影響を与える」ための経営行動( リーダーの行動) を、この本ではつぎの二つの部分に大別して説明しよう。
・組織的な影響システムをつくる
・現場の自己刺激プロセスを活性化する
つぎの四つの影書システムについて、 この章で議論する。
・役割と権限のシステム
・コミュニケーションと調整のシステム
・マインセンティブシステム
・成果測定とフィードバックのシステム
これまでのさまざまなインセンティブの理論をまとめてみると、つぎの三つのタイプのインセンテイブが組織のなかでは重要な役割を果たすと考えると分かりやすいだろう。
・金銭的インセンティブ
・仕事の内容自体によるインセンティブ
・社会的評価によるインセンティブ
三つのタイプのインセンティブのトータルバランスこそ鍵と考えると、よくある誤解のウソも見えてくる。たとえば、つぎのような「正しいインセンティブシステム」を絶対視するような誤解である。
・金銭的インセンティブが最重要
・個人的インセンティブを重視すべき
・成果にもとづくインセンティブとすべき
いずれの考えも、まちがっているわけではない。しかし、特定のタイプのインセンティブへの「集中的重視」になってしまい、それを絶対視すると、弊害が生まれかねない。その弊害が生まれかねない一つの大きな理由は、インセンティブシステムで影響を与えたい対象となる人々の組織のなかでの「望ましい」行動のリストは、つぎのようにかなり多面に及ぶからである。
・組織目的に合った行動の選択
・努力の注入
・他の人との協力
・学習
・上下・ヨコの情報伝達
第4章 現場の自己刺激プロセスを活性化する
他人を通して事をなす②
ヒエラルキー的な、形の整った組織マネジメントで「忘れられがち」な、つぎの二つの要因も、現場の人々が自分の行��を決めている背後にある重要な要因である。
・自分の内なる声
・ヨコの相互刺激
むつかしいと思われる「現場が勝手に動き出す状況を準備するマネジメント」を、この章では以下のような順序で解説していこう。
・現場の自己刺激プロセスへの、 リ—ダーからの働きかけ
・理念を示す、 文化をつくる
・現場の背中を押す
・ヨコの相互作用の「場」をつくる
・組織の勢いが生まれる状況をつくる
経営行動が実際に組織としての成果につながるための基礎要件としては、少なくともつぎの二つが必要であろう。
・日常的に自発的行動が奨励されている
・現場の人々の間に相互信頼関係がある
グーグルには、仕事の仕方についての経営理念もある。それが、創業からわずか数年後に策定された「10
の事実」と呼ばれる考え方である
1ユーザーに焦点を絞れば、 他のものはみな後からついてくる
2一つのことをとことん究めてうまくやるのが一番
3遅いより速い方がいい
4ウェブ上の民主主義は機能する
5 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない
6悪事を働かなくてもお金は稼げる
7世の中にはまだまだ情報があふれている
8情報のニーズはすべての国境を越える
9スーツがなくても真剣に仕事はできる
10「すばらしい」では足りない
経営理念の浸透に成功し、また組織文化を育てることに成功した事例を振り返ってみると、それらに共通する、 理念や文化の共有成功のためのつぎのような三つの条件も指摘できる。
・理念や文化を、分かりやすくかつ理想を感じさせる「言語」で表現できている
・理念や文化に沿った具体的行動を、多くの人が共通に「体験」する
・理念や文化の「象徴」を、多くの人が知っている
「現場の背中を押す」リーダーの行動が実際にプラスに機能するためには、つぎの三つの条件が整っていることが望ましい。
・自分の覚悟を見せるに十分な大きさの行動である
・理念や基本戦略の裏打ちがある
・現場の心が折れる前に、 成果が生まれるよう工夫する
現場の人々の間の「ヨコの相互刺激」へと働きかける経営行動に議論を移そう。それは、つぎのような二つのしかけについての議論である。
・組織的しかけ— 場のマネジメント
・戦略的しかけ— 勢いの戦略
場の定義をすれば、つぎのようになる。
「場とは、人々がそこに参加し、意識・無意識のうちに相互に観察し、コミュニケ— ションを行い、相互に理解し、相互に働きかけ合い、相互に心理的刺激をする、そのプロセスの枠組みのことである」
「場」として、具体的にどのようなものをイメージすればいいのか。大別して、二つのタイプの場がありうる。一つは「モノがつくる場」であり、もう一つは「コトがつくる場」である。
こうしたー一つの場のマネジメントが適切に行われ、そのうえで場が機能するための条件として大切なものを三つ、指摘できる。
一つは、人々の場への参加意欲をきちんと確保することである。そのためには、場のリーダーへの信頼、場のメンバー相互の信頼が必要だろうし、そもそも場での自���な行動を可能にするように場のメンバーにかなりの行動の自由度が与えられる必要がある。
第二の場の機能の条件は、なんらかの形で場の焦点が具体性を持ってつくられることである。焦点とは、場の参加者の共通の問題意識となるものである。その焦点をめぐって、組織にとって意味のあるヨコの相互作用がおきやすいようにするのである。
第三の条件は、場の限界をよく知ることである。たとえば、 1つの場の参加人数の規模などの限界であり、あるいは共通理解が生まれるかどうかを左右する文化の限界である。その限界を超えると、いくら場のマネジメントをしようとしても、有効な情報的相互作用などおきにくく、堤は機能しない。
組織に勢いを生む戦略の多くに共通する典型的なパターンが三つある 。
・組織がめざすべき将来像を象徴するような「旗をかかげ」、その方向ヘリ—ダー自身が跳躍する
・自分たちの限界を超えるような背伸び戦略という無理に挑戦する
・そこまでやるかのつるべ打ち
組織の勢い戦略が現場の自己刺激活性化として実際に機能するためには、つぎの三つの条件が一般的に必要だろう。
・組織に一体感がすでにかなりある
・リ—ダーへの信頼感がある
・一過性の心理的高揚でなく、事業状況に変化が生まれる
本田は、行動の人であり、かつ理念の人であった。彼が残したこんな言葉が、それを象徴している。
「理念なき行動は凶器であり、行動なき理念は無価値である」
第5章 想定外に対処する
経営学の概論書としては新しい挑戦となる「想定外への対処」を、この章では以下のような順序で説明していきたい。
・三つの想定外マネジメント( 事後的対処、 事前の備え、 未来に活かす)や事後的対処の基本プロセス
・事前の備えをする
・想定外を未来に活かす
・想定外対処の基盤としての、リーダーシップ
想定外がおきてしまった後の、事後的な対処の基本としてリーダーがとるべき経営行動を、時間的な順序も考慮に入れてあえて五つのポイントにまとめると、以下のようになるだろう。
・リーダ—が先頭に立つ
・想定外でなにがおきたか、 その共通理解をつくる
・想定外からの被害の中和策を考える
・環境のなかの自分の立ち位置を見直す
・対処の基本方針をつくり、 だがときには細かな朝令暮改も辞さない
事前の備えとしては、つぎの五つのポイントがしばしば重要となるであろう。
・不必妾な想・定外を少なくする
・想定外を早く感知できるような仕掛け
・平時のリーダーシップ
・現場の結束カ
・事前の「算」
第6章 決断する
決断の事例からスタートさせて、その後で背後の原理を考える、というスタイルの議論展開である。
・小倉昌男の決断
・決断イコール判断+ 跳躍
・直感で発想、論理で検証、哲学で跳躍
・跳躍のための哲学
・哲学がもたらすのは構想の奥行きと心の安定
・大きな跳躍・小さな跳躍、大きな哲学・小さな哲学
・決断できるリーダーの条件
発想、検証という判断の二段階を中心的に支えるものについて、そして��躍という決断の最後の切り札を支えるものについて、私はつぎのように考えている。これが、決断の全体像についての私なりの一っのまとめである。
-直感で発想する
-論理で検証する
‐哲学で跳躍する
不可逆なジャンプにあたっては、その方向と大きさがそもそも適切なのかという不確実性。そしてその後の走りつづけるプロセスでは、きちんとした組織的努力を踏み切った方向で継続できるかという不確実性。
その二つの不確実性を承知のうえであえて跳躍するのには、二つの覚悟がいるだろう。
1不可逆なジャンプへ踏み切ることによる、 大きな資源投入のリスクの覚悟
2踏み切り後の実行プロセスを完走するまでの、 長い努力の覚悟
「世の中を動かしている大きな原理」をより現代企業風に翻案すれば、それはしばしばつぎの「二つの道理」のいずれか、あるいはその組み合わせであろう。
・人間社会の道理
・自然と技術の道理
哲学とは、ものごとの、世間の本質を考え抜くことによって生まれる、基本的考え方である。だから、本質を考え抜いたという安心感が生む心の安定、本質がさらに先へのつながりへと導いてくれるという奥行き、この二つを哲学がもたらしてくれるのである
データは論理的検証のプロセスでは使い方を誤らなければかなりの意義を持つが、跳躍にはそれほど意味を持たない。
それには、基本的にー一つの理由がある。
第一に、データは跳躍を迫られているような状況では、エビデンスとしての意味が小さいからである。過去の類似事例が少ないことをやるのが本当の跳躍であろうが、データはすべて過去の数字の集まりである。
データが跳躍にはそれほど意味を持たないと私が考える第二の理由は、データは人の心をふるわせることが少ないからである。人間は、データには共感しないが、魅力的な考え方には共感する。その共感のベースを与えてくれる可能性について、哲学はデ—タよりかなりすぐれている。
決断できるリーダーの条件について、 これまでの議論をまとめておこう。真の決断ができるためには、リーダーにつぎの三つの条件がそろっている必要があるだろう。
1‐判断への論理的つき詰めができる
2- 正しい跳躍ができる
3- 誰のための決断か、公正な思いがある
決断のできる人の第二の条件である、正しい跳躍ができる、ということについて。この条件を満たすには、つぎの三つのサブ条件を持っている必要があるだろう。
第一に、跳躍のための哲学を持っていること。哲学がなければきちんとした跳躍ができないことは、すでにこの章で一貫して強調してきた。しかし、これ以外にも、第二、第三のサブ条件がある。
第二のサブ条件は、すでに説明したことだが、跳躍の後でほぼ必然的に生まれる大小のゴタゴタを処理できる自信があること。トラブル解決能力の高さ、といってもいい。それは、想定外への対処能力でもある。ゴタゴタがおきるとは、事前には想定していなかったトラブルがおきるということだからである。
第三のサブ条件は、性格である。跳躍への性向をかなり持っている人と跳躍をためらう性向を持っている人と、二種類ありそうなのである。
第7 章 企業という存在の本質
より広い意味で捉えられる企業という存在は、どのように定義されるものなのだろうか。この本では、つぎのように定義することにしたい。
「製品・サービスの提供をおもな機能としてつくられた、人と資源の集合体で、一つの管理組織のもとに置かれたもの」
企業という経済組織体の存在の本質を、企業が活動している社会や市場経済という大きな視野のなかで考えると、つぎの三つの「特徴」が本質的であると思われる。
・企業が果たしている役割の本質! 技術的変換
・企業の構成の本質— カネの結合体とヒトの結合体の二面性
・ 企業と社会との関係の本質ー社会からのさまざまな恩恵のおかげで生きている存在
この章の以下の議論の目的は、そうした「経営の仕事」の内容をさらにくわしく解説することである。その議論を、第一の本質から第三の本質へと順を迫って説明し、最後にそうした三つの本覧と利益という指標の関係を考える、という順序で行いたい。
・技術的変換が基本的役割
・情報蓄積体としての企業
・カネの結合体とヒトの結合体の二面性
・株式会社制度と株式市場
・お天道様に恥じない経営
・三つの本質と利益という指標
企業の社会的責任の内容は大きく分けて三つあると考えると分かりやすい。
1.社会の公器として、 ときには利益を犠牲にしても社会のなかの自社の有用性を大きくする責任(社会的有用性責任
2.社会のなかの重要な存在として、 社会の規範を守り社会の安定のために努力する責任(社会規範賣任)
3.社会のなかの市民としての責任(市民責任)
経営学の元祖のような存在になっているピーター・ドラツカ—は、『現代の経営』という主著の一つのなかで、利益の機能を二つに分けて説明している。一つは、企業あるいはそのなかの組織単位の「仕事ぶりを判定するための尺度」である。もう一つの機能は、不確実な将来に向けて組織を存続させるためのカネという資源の確保状況の尺度、である。
そして彼はつぎのような、洞察のある発言をしている。
「利益の最大化が企業活動の動機であるか否かは定かでない。これに対し、未来のリスクを賄うための利益、事業の存続を可能とし、富を生み出す資源の能力を維持するための最低限の利益をあげることは、企業にとって絶対の条件である」
第8章 本質と原理の交差点、そして企業統治
この章の前半では企業の本質と経営行動の原理の間の関係を論じ、後半は企業統治を議論する、という以下のような議論の順序が出てくるのである。
・企業の本質を考えると、とるべき経営行動が見えてくる
・企業の本質に潜む矛盾が経営行動の選択をむつかしくする
・経営者への影響システムとしての企業統治
・ステ—クホルダ—資本主義
・働くヒトを企業統治にどう位置づけるか
・ドイツと日本の企業統治
・経営者が自らを律するための二つの鏡
企業という存在の本質には、つぎの二つの矛盾のタネが潜んでいる。
・技術的変換と社会的責任との間の矛盾
・カネの陪合体とヒトの結合体の二面性ゆえの矛盾
企業統��の内容としては、つぎの二つのタイプの影響の仕掛けがおもなものであろう。
・経営行動選択の際の経営者の目的に影響を与える
・経営行動の結果をチェックして、 経営者の任免をする
つまるところは、外からでなく、経営者自らが自分を律することに期待せざるを得ない部分がどうしても残るのである。そうした「自らを律する」ことがどの程度促進できるかどう力を考える際に、一般的に意義が深いと思われる、一つの声と一つの眼がある。それが、顧客の声と上級幹部の眼、という二つの鏡である
終章 経営を考えるための16の言葉
この項でのパートーは、「面到な」経営というものを引き受けようとするのは案外と覚悟がいるものだということを想定して、「経営する覚悟」についてつぎの四つの言葉を紹介したい。
1‐高い志と低い目線
2- 決断したら、 まっしぐら
3- 独断の根拠を持つ
4‐すべての人間は失敗する権利がある。ただし、失敗から学ぶという義務がついている
「経営する覚悟」パートにつづいて紹介したいのは、「現場の本質」についてのつぎの四つの言葉である。
5. 人は性善なれど、 弱し
6.現場には、 カネ、 情報、 感情がつねに同時に流れている
7.日常の仕事の場は学習の場でもある
8. 活力方程式:活力イコール知力X(意力+ 体力+ 速力)
常識をくつがえすような経営、というほどの意味である。紹介する言葉は、つぎの四つである。9
9.バカなとなるほど
10.そこまで、やるかのつるべ打ち
11.捨てる決断
12.戦いは正を以て合い、奇を以て勝つ
経営を考える言葉の最終パ— 卜は、原理で考える、きちんとしたものの見方をする、その両方の大切さについてである。つぎの四つの言葉を取り上げよう。
13.原理方程式:経営の具体策イコール環境X原理
14.神は細部に宿る
15.大きく構える
16.マグニチュ—ドと濃淡をつねに考える
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