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時代は違えども人の感情や人情、出世欲やそれに伴う画策など今に通ずるところがある面白さ、家重と忠光との絆、家重の手腕など、読みどころが満載。日本史が苦手で時代物もほとんど読んだことのない故の難しさがあっての星4つ。再読したら5つになるかも。
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170回直木賞候補作。前半はぐいぐい話に引き込まれ、後半はしっとり余韻が残る。とても良かったです。7章8章ぼたぼた泣いてしまいました。
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第170回直木賞候補作。第9代将軍、家重とその障害のために決して目や耳とならず、「通詞(通訳)」としてのみ仕え続けた大岡忠光の物語。時代的にも戦闘シーンなど出てこない展開でまるでドキュメンタリーを見ているように淡々と時が流れていく。本当に忠光は聞き取れているのか?家重は自らの意思表示ができることで、廃嫡を免れて将軍となれるのか?決して二人の側から物語が語られないことで、最終章の息子たちの会話に深い余韻が残りました。
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2つの賞を受賞した上に直木賞の候補となっている。ぜひ直木賞を受賞して欲しい作品。
生まれた時の障害か、幾つもの障がいを抱えて将軍となった家重。大岡忠光が偶然聴き取った家重の言葉が切っ掛けで、二人三脚の人生が始まる。誰も聴き取れない家重の言葉を通訳する忠光。この忠光の通訳自体を疑われることが生涯続くことに愕然とする。
オシッコを漏らして歩く姿から「まいまいつぶろ」と侮辱される将軍。親戚の大岡忠相からの忠告である家重の通訳に徹して、家重への侮辱を本人に伝えず生涯を過ごす。
黒子に徹すること約34年。忠光の引退は家重の引退でもあり、最後の二人のやり取りに涙が溢れる。自分の意見を言わずに黒子でありながら大名までになった忠光。壮絶な一生に感動する。
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篠田達明著『徳川将軍家十五代のカルテ』によれば、九代将軍家重は「知的にすぐれた脳性麻痺者」だったと。
その症状は肖像画にもあらわれていると、家重の肖像画が添付されている。
家重の話を聞き分けることが出来たのは、側用人の大岡忠光ただひとりだったとも。
この家重と大岡忠光を主人公としたこの小説、「落涙必至」とも表され、史実を超え圧倒的な感動を呼び様々な賞を受賞しているのも納得の読後感。
長福丸(のちの家重)の口にはなるが「目と耳になってはならぬ」と、大岡忠相から厳命され、長福丸に仕えることになった兵庫(のちの大岡忠光)。
兵庫の口を経て伝わる声が、確かに家重のものなのか、老中たちに疑念を抱かれながらも必死に家重を支える兵庫の苦悩と、自らの思いが周りに理解されない家重の哀しみが、読者の胸を打つ。
優秀な弟との将軍世継ぎ問題に老中たちの思惑が絡まり、史実であるにもかかわらず気の置けない展開に読み進まざるを得なくなる。
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タイトルの「まいまいつぶろ」とはカタツムリのこと。
失禁によって汚した着物を引きずりながら歩いていく様子を、カタツムリが通った後の道が湿っぽくなっている場面と重ねてそう呼んでいるのだが、現代の感覚でもひどい言われようだと同情してしまう。
このような様々な身体の障害によって意思伝達が困難な人物を中心に据え、たった一人の理解者とともに困難を乗り越えていく様を描いているのだが、現代が舞台だといくつか類似の作品が思い浮かぶけど、江戸時代の将軍の実子を主人公にしたという点は面白く、将軍職に就くまでのドラマチックな展開は大いに楽しめた。
ただそれ以降は、事件が無いわけではないんだけど、前半と比べてやや盛り上がりに欠けているように感じられる。まあこればかりは仕方ないんだけど、史実を基にした作品の難しいところかなと思う。
あと将軍の実子をカタツムリに例えるなんて、いくら家臣とはいえバレたら打ち首獄門になる気がするんだけど、そのあたりのリアリティもちょっと気になった。
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知らなかった。家重が脳性麻痺だったとは。おしっこが我慢できなくて家重が歩いた跡にはナメクジが通ったみたいに床が濡れていたとか。体は不自由で、頭脳は明晰なのにうまく発語ができないからよく癇癪を起こしていたけど、家重の言葉を理解できる大岡兵庫という小姓が現れる。そこから物語が始まる。映画化を期待するわぁ。
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障害ゆえに馬鹿にされてきたからこそ、支える方も支えられる方も互いに人の痛みが分かる。非のうちどころのない名君に名補佐。この時代を生きた人々は実は恵まれていたのかも。主従関係を超えた友情と絆って実に美しい。
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昨秋、徳川家重なる人物をNHKドラマ「大奥」を観て初めて知った。すっかり惹きこまれた三浦透子さん演じる9代将軍家重の実像に興味が湧いた。吉宗の長男に生まれた彼は言語・排尿障害などがあり、口がまわらず、誰にも言葉が届かず、歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、『まいまいつぶろ』(かたつむり)と呼ばれ蔑まれていた。そこに現れたのが、彼の言葉を解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫。家重をもっと知りたいと思っていたところ、村木嵐さんの本作に出くわした。しかも今回の直木賞候補作にも挙がっている。
麻痺を抱え廃嫡を噂されていた家重が将軍になったのは兵庫(後に大岡忠光)が居たからこそ。今だったらAIなどで自分の意思を伝えられただろうが、あの時代に言葉を発せない将軍、また仕えた重臣らを想像すると疑惑が持ち上がっても不思議ではない。しかし兵庫と家重との主従関係を超えた人間的な温かい交流が描かれる。家重が大奥で酒に溺れていたという通説は、近年かなり違ってきているという。現在社会環境が変化しその影響もたぶんに受けているだろう。
家重と兵庫を描いた作品に、少し異なる視点で書かれた松本清張の『通訳』という短編があるのを知った。果たして村木さん、松本清張氏による家重像は史実にどちらが迫っているのだろう。眠っている歴史を掘り起こし作品化してもらえることは、読者冥利に尽きる。
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苦手な時代物だが、スルスルと読めた。
徳川家重は、先日よしながふみ原作の「大奥」のNHKのドラマでは三浦透子が見事な家重を演じていた。あの演技に通ずるものがある。不自由な身体に聡明さと悲しみを秘めた人物像をこの小説でも描いている。
史実と多少違うところもあるようだが、ただ一人言葉を解する忠光の存在がどれほど家重を救ったか、その心を描き切って、読者の心も揺さぶってくれる小説だ。
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時代小説は同じような名前が出てくるので最初は少し混乱したが、大変読みやすかった。
家重のラストの言葉に感動。
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感動の時代小説でした。
徳川家重といえば愚将のイメージで注目しなかったのですが、忠臣 大岡忠光の視点で名君に仕立てたストーリーは不覚にも涙してしまいました。
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言葉が通じぬ苦しみを知っているが故に、百姓たちの誰にも伝えられない思いに耳を傾ける。
生まれながらに身体に重い病があり、片手片足はほとんど動かすことができず、口をきくこともできない。歩いた後には尿をひきずった跡が残るため、まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれた君主。
しかし「もう一度生まれても、私はこの身体でよい、忠光に会えるのならば」と言えるだけの大切な出会いがあった。
子供が生まれたり、その子がしゃべった時などなど、自分のことの様に喜べました。
そして感動のラストでした。
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一言二言ならともかく、読唇術みたいに、家重の心を読んで、台詞回しみたいに忠光がしゃべるわけないだろうと思った。歴史的な事実も小出し・継ぎはぎで繋がりがなく、ストーリニーに一貫性がなかった。登場人物も次から次に変わり、しかも、たまに家重もしゃべったりするので、途中誰がしゃべってるのかわからなくなってくる。なんで評価がいいのかわからなかった。
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暗愚と疎まれた将軍の、比類なき深謀遠慮に迫る。口が回らず誰にも言葉が届かない、歩いた後には尿を引きずった跡が残り、その姿から「まいまいつぶろ(カタツムリ)と呼ばれ馬鹿にされた君主。第九代将軍・徳川家重と生涯そのそばで代わりの口となり支えた大岡忠光の物語。
非常に感動できる良本でした。ただ途中からの話の展開にいまいちついていけず(内容というより私が悪いようにも思えるが、、、)一つ星減点の4。