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本作の主人公、広岡仁一は著者、沢木耕太郎の「夢の存在」であると、あとがきで語られている。野球に傾倒した少年時代、志半ばで第二の道へ進むも、そこで魂を燃やすことのできなかった沢木耕太郎にとって、広岡は「夢の存在」であるという。
そう聞くと、合点がいく場面もいくつかある。
しかし、そうであればもっと主人公が何を考えているかの描写を増やしてほしかったように思う。
沢木耕太郎作品の特徴は主人公の感受性にあると思う。声には出さずとも頭の中で考える内容に興味を惹かれるからだ。
実際、ラストシーンはすごく良かったがそれは広岡の考えがダイレクトに伝わってきたからかと考える。
いずれにせよ、映画化は楽しみである。
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4人の元ボクサーが翔吾に自分の必殺技を伝授し世界チャンピオン目指して育てていく姿に感動した。ボクシングの試合の描写がリアルで目に浮かんで来る。
心に残った言葉
・真拳ジムのなくなった会長は、なぜボクサーがトレーニングをするのか、それはリングの上で相手より自由になるためだ、と常に言っていた。
・そう、料理もアイロンかけも、ボクシングのトレーニングと同じだ。家事が難なくできれば、日常というリングで自由に振る舞えるようになる。
・自分はまともにやらなかったが、勉強というやつも同じなんだろう。家で勉強しておけば、教室で自由に振る舞えるようになる。何でもそうだ。トレーニングというやつは、そこで輝きたいと思っているリングで自由になるためにするんだ。
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映画は未見も、キャストがチラつきながら読んだ。キャストの違和感は半端なかったが、ボクシング描写もほどほどで重くなく良かった。長編だがスラスラと読みやすかったが、内容が薄いのか?あまり記憶に残らず、ラストもちょっと安直か。でも面白かったよ。
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シンプルにまとめられてて読みやすかった。
無駄がなく、誰かの過去を想起する際も、だいぶ凝縮されて書かれており、しんどさを感じなかった。
終盤、ちょっと押し込んだようにいろんな内容が詰め込まれてたのが残念。
駆け足に読ませられる印象を持ってしまった。
やっぱりボクシングの取材がしっかりされてて、根拠があるなと唸らされる。
広岡がカッコ良すぎて、キャストに佐藤浩一って合ってるなーと関心しながら読めた。
嫌悪感抱く人物もおらず、終盤、嫌と思っても仕方ないエピソードもあるが、それまでも美しく描かれてるので嫌な気持ちもしない。
爽やかな青春スポーツ小説だった。
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上巻の最後、老齢の4人は才能を秘めた若者・黒木と出逢いました。下巻は、この黒木が4人からボクシング指導を仰ぐ場面から始まり、物語の展開スピードが増していきます。
「孤独」「陰」のイメージの上巻、下巻は「陽」の印象が強まり、ゆっくり流れていた4人の共同生活は、次第に活力がみなぎり、変化していきます。
自分たちの経験と技を黒木に伝えようと指導に注力していく様は、新たな目標をもった人間の潜在的なパワー、伝える熱意の凄みさえ感じます。
まるで、自分たちが果たせなかった夢を追い求めるように‥。
不動産屋の佳菜子は、陰ながら重要な役割を果たしていますが、彼女の過去等少々盛り過ぎ感が‥。
ボクシングが題材なので、ストイックな毎日や過酷さと共に、男たちの友情を前面に打ち出した物語と思ったら、いい意味でちょっと違ってました。
結末は伏せますが、広岡が起点・中心となった夢破れた者たちの生き様、そのもがきながらも清廉な生き方に、清々しさを覚えました。人生経験を多く積んだ人ほど、響く物語と感じます。
自分の今この日々を、どう大切に過ごすべきか、自問しなければと思わされました。
生きている限りは、自身の人生に真剣に向き合わないといけないということ、その心構えが大切であること等、まさに人生哲学・晩年を生きる美学が詰まった一冊でした。
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こういう晩年もいいな。
未来のために現在をないがしろにしたり、犠牲にしたりする「生き方」「死に方」ではなくて、今この瞬間を慈しむ「在り方」という表現が刺さった。
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元世界チャンピオンの夢に敗れた4人(広岡、藤原、佐瀬、星)が暮らす家(チャンプの家)にふとした喧嘩で知り合った翔吾が一度は諦めたボクサーとして教えを乞う為訪れる。4人は翔吾にテスト課題を与え帰らすが、数ヶ月後課題をクリアした翔吾が現れる。そこから4人に翔吾が加わり、その後佳菜子と野良猫が加わり共同生活が始まる。4人は翔吾に才能を感じて夢を託して其々の得意技を伝授していく。その過程で佳菜子の不運の過去を知る事になり其々が過去に傷を持って生活する。翔吾は着実にボクサーとしての技術&体力を向上させて東洋チャンピオン、4人が果たせなかって世界チャンピオンに登り詰める。然しその代償で翔吾はボクサーとしては致命的な網膜剥離になってしまう。翔吾は引退して佳菜子とアメリカに渡る事を広岡に相談するも広岡は翔吾の網膜剥離治療入院を見舞った後の帰り道で持病の心臓病で倒れるとこで終える。
うむ〜翔吾、佳菜子等チャンプの家の人達のその後が気になる。
一度は別れた老齢の4人の人生が、次世代のボクシング指導を通して一つに交わり、生き甲斐となり、若い翔吾もボクサーとしての技量に加え4人との生活で成長する姿は読んでいて気持ちが良かった。
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まず、ボクシングの描写が素晴らしいです。展開は王道でしたが、死ぬ間際に満足することができた仁はきっと幸せな人生を送ることができたのだと思います。人との出会いというのは、人生を豊かにする1番の要素ですね。
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先が知りたくてどんどん読めたけど、うーん、今一つだったかな。登場人物がありがちな?設定に思えた。映画の役者さんが頭に浮かんでしまったからかも知れない。残念。
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著者の沢木先生が理想の人生を描いた作品に思える
登場人物が全員いとおしくかっこいい
こんな年の取り方をしてみたいものだ
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あとがきにこうあった。描きたかったのは、見事な「生き方」や鮮やかな「死に方」ではない。一瞬一瞬のいまが全ての「在り方」、現在をないがしろにしたり犠牲にしたりせず、いま在るこの瞬間を慈しむ「在り方」を描きたかったのだと。