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少年たちの冒険譚と言えば聞こえがいいけれど、そうせずにはおれなかった時もあるのだと言う話。よどみの据えたにおいさえしはじめそう。文字の一つ一つまでがなんだか不潔で病気にさらされているような気がする。希望とか未来とかの光が真っ暗な現実や心ない大人たち(でもこの時はそうあるしかないのだと仕方ない思いもある)に何度もかき消されていく。読後感とか、気持ちまで暗くなるというのではなかったところが夜と霧とおなじよう、どんな場合においてもどちらの立場をか選ぶことができるということ。生きているということは力強いということ、やるせなさ、。
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感化院に収容された少年たちが、戦時のため田舎の村に疎開させられるが、そこで疫病が蔓延し思いがけず自由を手にする。しかし.....。絶望しきった環境でさえ力強く生き抜こうとする少年たちの生命力に感嘆。
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初期の大江作品はサルトルに影響を受けているという話をwikiで見ましたが、サルトルより数倍気持ち悪い小説書いてると思う。文体がめちゃくちゃ尖ってて、形容詞をみょうちくりんなやり方で連発するから慣れるのに時間がかかりました。でも短いから好きです。
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大江健三郎の初期の傑作。共同体からはじき出されたものたちのアジールの出現とその崩壊という本書の主題に対して、観念的すぎるとの批判は当然あるだろうが、荒々しいほどに研ぎ澄まされた文体と濃密な暗いエネルギーに圧倒される。現在の穏やかな文体とはなんと違うことか。自分自身をつくりかえてきた作家の原点に触れることができる。
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この粘着質な文章な何でしょう。内容のせいなのか、作者に起因するものなのか。
未だ、最後に救いがあったのなら印象も違ったのに。
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「飼育」に引き続いたみたいに、奇妙な状況設定がまず面白い作品。
隔絶された村、蔓延する疫病。
絶望的に苦しい環境に押しつぶされそうな若者たちの、はじけそうではじけない感じが最高です。
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1958年発表。大江健三郎、著。集団疎開する感化院の少年達が辿り着いた村で疫病が流行り、村人は避難。残された子供達は村で生活を始める。
大江健三郎を読むのは二冊目だが、やはり文体がすごい。一見、倒錯しているような文章だが、雰囲気としては納得ができる。何気ない風景や物事といった対象に生物的な語をあてることによって、まるでそれらが皮膚に噛みついてくるかのような生々しさを感じる。しかし不思議と、グロテスクというより詩的な印象を受ける。
話自体は人間ドラマを味わうといった感じで、そこまで複雑だったりするわけでもない。解説によると、こういった疎開は現実にはありえないらしいが、読んでいる分には非常にリアルに感じた。おそらくそれは読んでいて、思想的な、歴史的なリアルというより、感覚的なリアルを感じるからだろう。そういう小説は時が経って読んでも決して錆びないのだなと実感した。
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乱暴に言えばバイオハザード的状況のダークネバーランド純文学バージョン、みたいなおはなし。いやわたしこれだいすきです。「閉ざされた壁のなかで生きる」姿を書き表すことに拘っていた初期大江の結実ではないか。というのは、血を流してみせることでその傷をつくったものを糾弾するのではなく、主体的に対決し得る可能性がここには示されているから。「閉ざされた壁のなか」でどう生きるか、どう積極的に生きられるだろうか、という問いに対する大江の回答だとおもった。違和感を覚える文章は内容と形式の一致、主体性を示すために必要な文章で、すでに文体面での冒険がはじまっていることもわかる。ページをめくる手が止まらなかった。物語に入り込むことのできるエンターテイメント性をも兼ね備え、まさに初期の傑作と言われるにふさわしい。森の世界が立ち現れ、物語がはじまる。
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誰が何が悪いのか。
主人公の気持ちで読んでいたけれど、時代、環境、相対する人によっては私は誰にでもなる気がした。
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戦時中、少年院に入っている少年たちの疎開先の村に疫病が発生し、村人たちは少年たちをその村に置き去りにし、村を封鎖してしまう。
とにかく、暗っ!重っ!そして、悪いことはしないに限るな。という教訓。
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大人と子供かつ百姓と疎開してきた少年院たち、厚い壁と深い溝。
ジメジメしていた。圧倒的な暴力だった。
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苦手だ。だけど読んでしまえた。
どうも文章が血生臭くておそろしい。
モチーフは嫌いじゃない。
はめこまれる=屈することを暴力的に強いられる環境において、自分としてどう生きるか。主人公のまっすぐな想いはただ美しい。
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若さの中にある鬱屈さを、
独特の文体で表現しているのが、
厭なようでいて癖になる。
若いゆえの苦しみというか、
やるせなさ、無力感、大人に対する意地みたいなのが
主人公から感じ取れた。
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まだ生と死が目の前に生々しく横たわり、文明から隠されていなかった時代。目に見えない疫病に人々は翻弄されて想像は膨らみ肥大化した恐怖は人間を残酷な行動に駆り立てる。安心感を得るために人をよいものと悪いものに分類していく。
薄汚れた世界でイノセンスはどこまで保たれるのか。とても脆く壊れやすい純粋さを守り抜こうとするのは愚かな試みなんだろうか。
そして性。男性性のリアル。
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いろんな感情の衝動がこまやかに表現されていて、さすがだなと唸りながら読み続けた。
圧倒的なパワーにくたくたになった。