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太宰治、中原中也、夏目漱石、志賀直哉…名だたる文豪たちが日記や手紙、随筆などに書いた〝悪口〟を集めた一冊。
名作と言われる作品を残した人物とは思えないぐらい直截的な罵詈雑言。
たまにニヤッとするものもあるけれど、子どもの喧嘩のようなものもある。
中でも面白いのが、中原中也が初対面の太宰治に言ったという「青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」という言葉。こちらは詩人らしいウィットに富んだ言い回しとも思える。
それに比べ、菊池寛vs今東光、永井荷風とのやり取りは、もう小学生の喧嘩みたいで笑うしかない。
とは言え、文豪も人の子。腹が立つものは腹が立つだろうし、芸術家肌の人のほうが却って子供っぽいのかも知れない。
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さすが文豪、悪口も格調高い・・などということは全然なく、グダグダで目もあてられない。そこがいい。
相手への怒りと憎悪と必死に節度を保とうとする葛藤がむき出しになっている文章だけが並ぶと、宮武外骨だけが面白く感じられないことが発見だった。逆恨みで怒りすぎて自分でもわけわからなくなってる様子に比べると、権力を選び意図的にこき下ろすという読者の目を意識した劇場型の怒りが興冷めしてみえるのかもしれない。
無頼派の若手(織田作之助、太宰治、坂口安吾、平野謙)が4人で志賀直哉を批判している対談、太宰治の如是我聞が面白い。有名な佐藤春夫と谷崎潤一郎の書簡集も、通して読むと実に興味深い。
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文豪たちの悪口集という、面白い切り口の、パンチの利いた本。
言葉のプロだけに、その刃はかなり鋭利です。
文豪だからといって、品行方正な人間のお手本というわけではないんだなあと改めて感じます。
作家伝などからは見られない、同業者同士の仁義なき口争いを見ると、作家も生の人間で、けんかっ早い人も多かったとわかります。
作家同士の悪口の応酬も掲載されていますが、どうも太宰治の登場回数が多いです。
そんなに周りを口撃する人だったのでしょうか。
坂口安吾は『堕落論』を書いたので、堕落寄り(?)の人かと思っていましたが、文章を読むに至極まっとうな人だと感じました。
敬遠していたきらいのある『堕落論』ですが、著者への興味を持ったのを機に、読んでみようと思います。
芥川龍之介が夏目漱石を語る際に、
「先生はロダンを山師だといい、モオパスサンを巾着切りみたいなやつだと言っていた。」そうです。漱石もなかなか口が悪い人のようですね。
延々と長文にわたり、とうとうと悪口が書き連ねてあるものもあります。よくここまで続くものだなあと感心するほど。
中原中也はフランス語ができる人でしたが、ニーチェの「ツアラツストラ」を仏語版で読んだそう。
すごい語学力ですが、「なんと面白くない本田。やっぱり独逸人はバカだ。」と言っているので、インテリも台無しです。
繊細な詩を残している中也ですが、とても口が悪く、ケンカっ早かったそうです。
総じて、文学史に名を連ねるそうそうたる文豪の先生方が、舌鋒鋭く相手をけなし合っている様子に唖然としますし圧倒もされます。
結局みんなとても人間らしく、だからこそ豊かな感情表現が作品の数々に現れているのかもしれない、などと思いました。
面白い視点からまとめられたの本。ほかのジャンルの方々の悪口本も、出たら読んでみたいです。
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太宰が出てくる時点で、「あっ、川端康成に喧嘩吹っかけた話か志賀直哉disだな」と分かってしまった私ですが……。志賀直哉に怒っていたのは織田作も坂口安吾も同じくしてだったようで。死にものぐるいで今を生きろっていう安吾の考え方は好きだし、太宰に対する捉え方も好き。
対して中原中也はだいたい多くの人に喧嘩吹っかけてるようなので、「あーまたっすか」って感じが。でも太宰は尊敬してたんだなあ。初対面でへどもどして、ずいぶんコテンパンにやられた様だけれど。
夏目漱石の話や菊池寛の話は初めて知った。佐藤春夫と谷崎潤一郎の話は秋刀魚の件でなんとなく知ってはいたけれど、いろいろあったんだねえ……。
直木三十五が作ったとされる諸家価値調査表、腕力1にされてる泉鏡花が不意打ちすぎて吹いてしまったww
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詩的すぎて、もはや文学な悪口。
ちょっと話題になっていたので読んでみた。中也の悪口がキレキレだし、佐藤春夫と谷崎の書簡が面白い。菊池寛が名前を間違えられたと愚痴る話は、ホントスミマセンと思った。
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悪口というのは人間性とユーモアが問われるものだと思う。
とても面白かった。
しかし、少し読みづらかったとも思う。
その点を含めて評価は4。
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現代ならSNSで炎上騒ぎといったところか。
太宰治の川端康成への抗議文はちょっと子供っぽさが見える。川端康成の方が大人だったということか。
川端以外の人々への言葉から見るに、イメージ通りの太宰が見えてくる。
中原中也は今で言えば毒舌キャラでバラエティに呼ばれそう。常時周囲に噛み付いてはいるが、それでも自分が噛み付いて良い人間かどうかを注意深く確認しているところなど、小心者振りが垣間見える。
志賀直哉に噛み付く無頼派と呼ばれた面々も、今で言えば大物芸能人に噛み付いてなんとか爪痕を残そうとする新人タレントを彷彿とさせる。
坂口安吾の『不良少年とキリスト』から抜粋した太宰評が最も理解出来た。
坂口の、冷静で第三者的な視点と太宰への深い情を感じられる描写が良い。
夏目漱石先生はまさに『吾輩は猫である』の苦沙弥先生そのもの。神経質でせっかちで、でも弟子や友人たちへのお世話振りは微笑ましい。
菊池寛の嫌われっぷりがいっそ潔い。
若手小説家たちから永井荷風先生まで、いくら反論しても更に大きく反発され、荷風先生に至っては徹底的に無視され嫌われている。一体荷風先生との間に何があったのか。
最後の谷崎潤一郎と佐藤春夫との、谷崎の妻千代を巡っての愛情と友情のこじらせ具合がすごい。
傍から見れば笑えるけれど、当事者としてはたまらない。
さらに二人の間を行ったり来たりの千代さんは一体どんな思いだったのか。
作家の人間性とその作家が生み出す作品とは全く別物なんだなと改めて感じる。だからこそ後世にまで名が残る作家になれるのか。
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太宰のことは好きではなかったが志賀直哉に対する反論には同感するポイントが多かった。けだし、太宰という人はこういうときlovelyでさえある。
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作家ってさ、生きる全てのものが叙情的な文学で、死ぬことも恋も作品なのかもしれない。今ならウハウハの印税生活だろうになぁ。
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僕には詰まらなかった。この本を楽しむには教養が不足しているのだ。「文豪」であるからして、1冊2冊は読んだことのある登場人物がほとんどだが、その人生、さらには相関関係をベースに知っていないと、やはり楽しめない(もちろん、最低限の解説はついているが)。
一方で、文豪たちの発した「悪口」は、雑誌等に掲載されたり、作品中のエピソードに盛り込まれたりしたものは世に残るが、私信や日記に認められたものは、同時代には存在を知られず、さらには人知れず消えていったものもあるかも知れない(文豪の記したものはこうした類でも残されることが多いが)。ソーシャルで一瞬にして拡散する現代とは違い、一言の重みも随分と違ったことだろう等と思いを馳せてみる。
「#文豪たちの悪口本」(彩図社、彩図社文芸部編)
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“ 月 日
あかつき、医師のもとへ行く細道。きっと田中氏の歌を思い出す。このみちを泣きつつわかれ行きしこと、わが忘れなば誰か知るらむ、医師に強要して、モルヒネを用う。
ひるさがり眼がさめて、青葉のひかり、心もとなく、かなしかった。丈夫になろうと思いました。”(p.20 太宰治)
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悪口を言い合う文豪たち。
捉え方や考え方はそれぞれなので、放っておけばいいのに、小さいなと思ってちょっと笑ってしまう。が、、人間くささが見えて、なかなか面白い。
お互いの印象などを話す座談会での発言が興味深い。
太宰治、中原中也、織田作之助の座談会で、自分たちをデフォルメと言うところもいい。
ネガティブな自信家の太宰治。
好きだけど、志賀直哉に対する悪口が過ぎる。笑
黙ってられないんだな。他者評価をすごく気にするタイプ。生きづらさを痛烈に感じる。
坂口安吾は太宰治の良き理解者であった。
やっぱり惹かれる。
谷崎潤一郎と佐藤春夫の手紙のやりとり。女性をめぐる自分たちの正義の押し付け合い。笑
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太宰は川端を尊敬しつつも、賞をとった時の「あの賞はあなた1人の力でとれたものではない」と言い捨てる負けず嫌いさ、中原中也は言わずもがな、どの文豪も人間くさくて、かわいらしい一面を感じる。世に向けていない(と思われる)文章でもさすがに読ませるものばかり。作家たちの人間関係もわかりとても興味深い。
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「はじめに」には、
『随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました』
と書かれている。
ちょっと待ってーーーーー!
何かの意図を持って面白いところを抜き出して切り貼りされてたりしたら、それで「人となり」なんか判断される文豪は気の毒、とちょっと思いましたが・・・
読み終わって、自分が今まで作品を読んだことのある文豪に対してもない文豪に対しても、何か先入観を抱えてしまったのではないかと気がかりです。
・太宰の、芥川賞への執念は有名。
作品はいくつか読んでいるから、彼のぐちぐちウジウジにはもう慣れている。
いつもの太宰。
・中原中也の罵詈雑言は、その場限りのガス抜きみたいに思う。
写真では結構なイケメンなのに、口と酒癖がとびきり悪いらしい。
日記の中も罵詈雑言でいっぱい。夢の中でもバリってるかも。
・太宰の死後に書かれた坂口安吾の文は、悪口というよりは、「なんで死んじまったんだよう〜!お前のそういうところがダメなんだよ!」という、友情の裏返し表現な気がする。
私の中で、安吾株アップ。
・夏目漱石は、家族からは怖がられていたようだが、家族に当たるくらいしかできない小心が可愛いと思う。
・永井荷風の「菊池寛だいっきらい」は徹底している。
大人げない偏屈ジジイである。
・谷崎潤一郎VS佐藤春夫の手紙のやりとりは、小説のような読み応えあり。
谷崎は佐藤より6つ年上。
いい意味でも悪い意味でも「オトナ」と感じる。
佐藤の言い訳っぽい書き振りは太宰と同類かなと感じたけれど、卑屈感とねちっこさがいまひとつ足りない。
この戦いは長年かけて良いところに落ち着いたようなので、一冊の結びとしては良かったと思う。
それとは別に、驚いたのが『滑稽新聞』や『スコブル』という、風刺ゴシップ誌での、文豪のネタにされっぷり。
文豪ネタのアニメが出たときに「冒涜!」と騒いだ人たちもいたようだけど、あんなもんではない。
『文藝春秋』大正13年に載った「文壇諸家価値調査票」というのもなかなかに酷い。
財産→病気、とか、好きな女→妻君(人の)・・・などと書かれている。
訴えてもいいレベル。
一、太宰治の章
二、中原中也の章
三、無頼派×志賀直哉の章
四、夏目漱石の章
五、菊池寛×文藝時代の章
六、永井荷風×菊池寛の章
七、宮武外骨の章
八、谷崎潤一郎×佐藤春夫の章
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このコンセプト面白い。
世界の著名人バージョン見てみたいなあ。
人の悪口言ったり書いたりするのって、人に読まれる前提で書かれた小説より、ずっと人格が出ると思う。
この中で一番好ましく思ったのは、中原中也かな。
悪態がサッパリしてて。
表紙にも書いてある太宰治に向かって放った
「何だ、おめえは。青鯖が空に浮かんだような顔しやがって。」がお気に入り。
どんな顔だったか太宰に再現してもらいたいぐらい。中原中也の本読んだとこないけど読んでみたいと思った。
その次が、谷崎潤一郎。女好きの屑ではあるけど、あまり卑屈でなく冷静で、態度が一貫してていっそ清々しいわ。細雪は普通に面白く読んだから、こういう人が書いたわけね、なるほどと思った。
当然悪口ばっかりなので読んでて、しんどいっちゃしんどいけど、教科書に載ってる澄まし顔の文豪達の人間臭い部分が存分に見れる。