紙の本
第2次世界大戦開戦前に世に送り出された寓話
2023/11/17 17:54
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの雑誌ニューヨーカーなどで活躍したジェームズ・サーバーが第2次世界大戦の開戦の直前、切実な思いで世に送り出した絵本だと知って、驚いた。
さらに驚いたのは、描かれている世界が「第十二次世界大戦」後の地球だと言うこと。
村上春樹さんの新訳で、いま復刊された意味をかみしめる。
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本文の文章(村上春樹訳)をそのまま使用して途中端折りながら大まかなあらすじを書きます。
あらすじー
第十二次世界大戦があり
文明が破壊されます。
少年たちと少女たちは成長しても、
ただおたがいをぼんやり見つめあうだけです。
愛がこの地上からそっくり消えてしまったから。
ある日、それまで花をいちども見たことのなかった
若い娘が、たまたま世界に残った最後の花を目にしました。
彼女の話に興味を持ってくれたのは、
よそからやってきたひとりの若い男だけでした。
若者と娘は花に養分をあたえ、
花は元気をとりもどしました。
花は二本になり四本になり、
林と森がまた地上にもどってきました。
世界に愛が再びうまれました。
若者と娘のあいだに子供が生まれ育ちました。
町や都市や村が生まれました。
そして兵隊たちも。
まもなく世界にはまったくなにひとつ残りませんでした。
ただひとりの男性と
ひとりの女性と
そして一本の花だけはべつにして。
訳者あとがきより抜粋
(前略)
本作品『世界で最後の花』は1939年11月に刊行され、その年の9月にナチス・ドイツ軍がポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発していると述べています。(中略)
この本はローズマリーに捧げられていますが、彼女は1932年に誕生したサーバーの一人娘でした。彼女の生きた世界は、お父さんの願い通り「より善い」世界だったのでしょうか。(中略)
みなさんもご存知のように、世界では今でもこの現在も、残酷な血なまぐさい戦争が続いています。いっこうに収まる気配はありません。それはあとになったら当事者の将軍たちでさえ「何のための戦争だったかもう思い出せない」ような戦争であるかもしれません。そんな中で「世界で最後の花」を守るために、多くの人が力を合わせています。この本も、そんなひとつの力になるといいのですが。
感想
血なまぐさい戦争をどうにか明るいファンタジーに描き希望がみえるところがよいと思います。
「世界で最後の花」がまだ現れるうちは希望があります。
「世界で最後の花」が二度と現れなくなったらと思うと怖い気がします。
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村上春樹にハマっているので、翻訳本にも手を出して読んでみた。
この本には人々の不満や不足の感情がもたらす最悪な滅びの姿と、一握りの希望がもたらす繁栄とが大変わかりやすく描かれている。
この本一冊でいろんなことが考えられると思う。
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この本は。
人類へのギフトてす。
度重なる戦争で、幾度美しい地球を台無しにしても懲りることなく破壊を繰り返す愚かな人類へのギフト。
どうか人類に、このギフトの意味を受け止める度量がありますように…。
この本が創刊されたのは第二次世界大戦が勃発したばかりの頃なのです。
そして、なんと。
この本の始まりは人類が第十二次世界大戦を起こした時の話。
戦争により世界が丸ごと破壊され、人々が愛や希望を失った時。
1輪の花が1人の心を救いました。
花は人の心に愛をもう一度灯し、やり直す勇気をくれたのです。
たった1輪の花が。
絶望からのやり直しはとても大変なことなのに、人々は愛と知力で復活させました。
それなのにどういうことでしょう。
文明からは再び邪悪な心や妬みが産まれ、またしても戦争に…。
いまだまさにそのループのただ中にいる私たち。
一輪の花も残らないほどに地球を痛めつけてしまう前に気づいてほしいと願わずにいられません。
人類はただの地球のいちメンバーにしか過ぎないことを。
訳者である村上春樹さんのあとがきにギュッと心がしめつけられます。
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第十二次世界大戦・・・。
衝撃的な文章で始まる絵本。
戦争と、人間の愚かさを皮肉った、大人向けの絵本。
中身はともかく(個人的には、絵がイマイチ)、原書の“THE LAST FLOWER A Parable in Pictures”が出た年(1939年11月)の9月に、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が勃発したということに、ゾっとする。
こんな時に、そんな昔の絵本を発掘してきて、新しい翻訳を村上春樹にさせて(←お金をかけて)、それでも「儲かる!」と判断した出版社の根拠は? 今の世の中が本書を求める機運に満ちているいうことなのか。
時代が、この本を求めているのか、こういう本の出版が時代の空気を後押しするのか・・・。
どうか、この本が、今後、話題にものぼらず忘れ去られていくことになりますように。
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本屋に平積みになっていたので、手に取ってみた。
ヒトラーのポーランド侵攻により第二次世界大戦が勃発した直後に書かれた本。
プーチンをヒトラーに準える意図が出版側にあるのかどうかよく分からない。
作中で戦争が再度起こる筋書きからは、作者の諦観の方を強く感じる。それでも、人間の出直し力に期待してしまう、ということだろうか。
ソ連の長さも、明治維新から太平洋戦争までも74年だが、2.5世代が経つと、じいちゃんばあちゃんの生の声(肉親の肉声)での、記憶の伝承が出来なくなって、同じような試行錯誤を繰り返すのだろう。
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『世界で最後の花 絵のついた寓話』
ジェームズ・サーバー 作・絵
村上春樹 訳
ポプラ社刊
1939年、第二次世界大戦開戦時に描かれた世界的ロングセラーだそうです。
分かりやすく、シンプルで
伝えたいということがドーンと真ん中軸に伝わる絵本です。
訳された村上春樹さんの言葉として帯に書かれているのは、
『戦争に関する作品のなかで、最もシリアスで、最も皮肉とユーモアを感じる一冊である』
その通り、まるで風刺画のようなイラストに
一言添えてあるような文章で進められる絵本。
絵本の始まりは、第十二次世界大戦が終わるところから。
戦争が終わった世界と、その後の世界と時間の流れ、復興を描きます。
キーポイントは『世界で最後の花』
今現在も世界には戦争が続き、
私が第二次世界大戦を知った小学生の時、
金大中と金正日が握手を交わした歴史的な日を記憶する中学生の時、
そこから20年も経過して、
また新しい戦争が始まり、内戦があり、摩擦も燻り続け、
「何にも変わらないなあ」
「歴史は繰り返すなぁ」
と読んで思いました。
直接的に感じることがなく、遠いところから見通す生活をしている私たちは、
きっとこの本が伝えるところのことを、
「その通り」と思うことだと思います。
その通り、なんだけど
その通り、だけではなかなか世界は立ち行かないのだろうね。
だから歴史は繰り返すし、戦争が0になる世の中はないって言われるんだろう。
すごくシンプルなことなのにね。
微かな希望と、ずーんと重たい気持ちと、
そんなものがないまぜになって大人の私は心が灰色になるような重たさの残る読書後でしたが、
読み聞かせた6歳の次男はその中でも“希望”の分量を大きく受け取ったようでした。
みんなに読んでほしい。そして考えてほしい。
※ただし決して考えすぎて、伝えたいこと以外まで深読みはして欲しくない。
直接的に実感すること・体感することでなくても、考えることや、自分にとっての最後の花を守り愛することはできるからね。
簡単な漢字ばかりなので小学校中学年以上は読めると思います。
私は次男にも今から何度も読んで欲しくて、ふりがなを振っておきました。
幼稚園の子も、読めさえすれば感じることがあると思う。
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村上春樹さんが好きなので読んでみた。
戦争はなぜ繰り返されるのか?
どうしたら平和になるのか。
深く考えさせられる。
村上春樹さんの後書きも良い。
絵本のような形態だが、子供向けではない。
ジェームズ・サーバーさんのことも解説されていて理解しやすい。
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今でいうヘタウマ?なんとも味がある絵。
ラフなスケッチって感じ、でもテーマは重い。
ロシアとウクライナにことを思ってしまう。
学習しないのね人間って。
一本の花と男と女は最後に残ったんだものね。
そっからまたたくさんに花が咲いて木や森ができて犬たちも戻ってきて家を作りってまた繰り返し、エンドレスじゃん。
いやいや、その花一輪を希望の光とみたいね。
絵を描いたジェームズ・サーバー氏は幼少の頃、眼のキズが原因でほとんど全盲に近かったというから驚きだ。
だからこんなに味がある絵なのね。
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平易な言葉で、率直に語られる、人類の愚かさのお話です。「第十二次世界大戦」の後、徹底的に破壊された文明社会。ただ一つ残った花を育てる思いによってせっかく再建されたのに、ああ、戦争はまた起こり…というやるせなさ!
まだまだ戦争が絶えない現代ですが、いつか、人類が本当に恒久的な平和を確立して、この本を読んで「こんな愚かな時代があったんだねぇ」なんて笑い合える日が来てほしいです。
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図書館新刊コーナーより。
村上春樹訳でこんなのが出ていたのは知らなかった。
イヌが離れ、そして戻ってくるのがいい。
人間だけでは測れない、大事な価値が復活したような気がする。
ウサギたちが襲いかかるのは、笑ってしまった。
過去の栄光なんてないんだなぁ。
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人間は歴史から学んで成長するのか、それても歴史を何度も繰り返すのか。
この本が書かれたのが1939年ということを考えるととても心に深く問いかけてくる作品です。
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なんのための戦争だったか思い出すことができない。
これは本当に怖いことだと思った。
さらっと読んでしまったが、じっくりとまた読みたいと思う。
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人間って、愚かだ!
愛を知り、文明を作ることができるのに、それ故戦わずにはいられない‥
6人の男たちにちょっと似てる本。
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物語は、第12次世界大戦後の荒廃した文明、そして原始的な生活に回帰した人間たちの姿に始まる。 残されたただ1つの花を愛で、平和に暮らし始めた男女が家族を作り、さらに人口が増えて文明化した途端、また戦争を始める人間が現れ…
絵は全体的にとぼけたタッチのラフな線描だが、兵隊が列を成して現れる場面は5ページにも渡り、破滅を予感させる不気味さが際立っている。
「なぜ人間は戦争を繰り返すのか?」をテーマにしたこの絵本は、ナチスドイツがポーランドに侵攻した1939年に刊行されたという。
日本では1983年に『そして、一輪の花のほかは…』という邦題で出版され、その後絶版となっていたものが、最近 村上春樹の新訳で出版されたとのこと。 まさに今だからこそ、戦争の不毛さを多くの人に伝えてくれる。