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「ヒトが協力するのは進化的な理由があっただろう」「協力をする種はヒト以外にも存在するがヒトとその種の協力は同じなのか」といった話を、多細胞生物の組織と真社会性のコロニー、ヒトの社会とのアナロジーや、アリ、ハチ、ホンソメワケベラ、シロクロヤブチメドリ、ミーアキャット、そしてもちろんチンパンジーやゴリラの他の大型類人猿との膨大な事例との比較でたどっていく本。
結論として、ヒトがここまで脳と社会性を発達させ、結果として繁栄できたのは協力と集団のルールをつくる能力があったからで、見知らぬ相手を信頼するのは難しいが、気候変動など世界規模の問題への対処はヒトの協力と規範をつくる・変える能力によって成し遂げられる、といったことが書いてある。
全体的に(私が読んだことある)進化心理学で印象づけられがちな「子種撒くのがオスの本能」に対し「メスは出産も育児も生殖は負担だから、ヒトのオスはメスに協力するように進化してしてんだよね」みたいな感じなので読んでてストレスが少ない。
ただ、出アフリカ以降の古い時代の人類社会について、現代の狩猟採集民社会を類推に使ってるのと、フィンランドのキリスト教会の記録でもって「ヒトは一夫一妻制で夫以外の父親の子も少ない」としちゃうのはどうなのかな。
東洋を家族中心の集団主義、アメリカとヨーロッパを家族の外の人もコミュニティに入れる普遍主義としてしまうのも、トランプ支持者や欧州の移民排斥は無視ですか?と思っちゃう。
全体としては生物の協力と罰の行動の事例、真社会性のコロニーを多細胞生物の組織とみなして類推を展開していく考え方はおもしろく勉強になった。
『子育ての大誤解』https://booklog.jp/users/kuritahirahara/archives/1/4150505055 読んだ時の感じに近い。