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自分のしたいことをしたらいいんだって思える作品。
突き進んでいけば誰かしら理解してくれるそんな風に思えた。
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ないならつくればいい、という祖母の考えかたが好きだ。
調理や裁縫に長けているということは性別を問わず、生活力、と呼ぶべきではないだろうか。機械に強いとか、数字に強い、などもまとめて生活力だ。それぞれが自分の得意分野の生活力を持ち寄って生きていくのではだめなのか。
正しい、とは、母の眉をひそめさせない、という意味だ。
僕たち、おらんほうがよかった?何度も飲み込んできた言葉が、また唇からこぼれ出そうになる。飲みこむと、苦い。
ただ、僕があの時気づいてしまっただけだ。自分が楽しいふりをしていることに。教科書を忘れた時に気軽に借りる相手がいないのは、心もとない。ひとりでぽつんと弁当を食べるのは、わびしい。でもさびしさをごまかすために、自分の好きなことを好きではないふりをするのは、好きではないことを好きなふりをするのは、もっともっとさびしい。
「伝える努力をしてないくせに『わかってくれない』なんて文句言うのは、違うと思うで」
私が夫を「全」と呼ぶのは夫が悪い意味で結婚前と変化していないからで、夫が私を名前で呼ぶのはおそらく「お父さん(あるいはパパ)」である自覚が欠けているからだ。
夫をいちばん効果的に傷つける言葉を、その頃の私はよく知っていた。
あんたには失敗する権利がある。母は私に、いつもそんなふうに言っていた。
「 明日、降水確率が五十パーセントとするで。あんたはキヨが心配やから、傘を持って行きなさい って言う。そこから先は、あの子の問題。 無視して雨に濡れて、風邪ひいてもうそれは、あの子の人生。今後風邪をひかないためにどうしたらいいか考えるかもしれんし、もしかしたら雨に濡れるのも、結けっこ気持ちええかもよ。あんたの言う通り傘持って行っても晴れる可能性もあるし。あの子には失敗する権利がある。雨に濡れる自由がある。・・・ところで」
「あんた自身の人生は失敗 やったのかしら」
なにをもって良い人生とするかは人によってさまざまだろうが、俺にとってのそれは所有する財産などではなく、情熱の有無によって決まる。
自分に合った服は、着ている人間の背筋を伸ばす。 服はただ体を追うための布ではない。世界と互角に立ち向かうための力だ。
「 流れる水は、決して淀まない。常に動き続けている。だから 清らかで済んでいる。 一度も 汚れたことがないのは『清らか』とは違う。進み続けるものを、停滞しないものを、清らか と呼ぶんやと思う」
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『普通』って何だろう。
男らしく、女らしく、年齢相応に生きていく事?
でも、そんな理由で自分の好きな事を妥協して諦めたくない。
たった一度の、自分の人生だから。
『流れる水は、けっして淀まない』という言葉が心に残りました。
水泳を始めたおばあちゃんの話が好きです♪
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「男の子だから」、「女の子だから」とよく言われてきたからこそ、共感する場面がたくさんあった。性別関係なしに、「私がしたいことをする」ということが大切である一方、他の人の目を気にしてしまう。相手を自分の価値観で見るのではなく、分からなくても認めることが大事だと思った。
水青の話を読んで、私も一時期かわいい服が着られなくなったし、スカートが履けなくなった。犯罪をする人がいけないのか、それとも私が着たい服を着るのがいけないのかとすごく悩んだ。
したいことをする、それは自分の意思が最も大事だけど、それを応援してくれる人も、周囲の環境もとても大事だと思った。私も自分がしたいことをしたいし、それを応援してくれる人が近くにいて欲しい。そして、私も応援したい人のそばにいたいと思った。
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〇〇らしさ。
男らしさ、女らしさ、母親らしさ、家族らしさなど。たくさんの「〇〇らしさ」について考えさせられ作品。
自分の好きなものは好きでいていいんだ!って思える作品。
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1人の視点ではなくて、各章で登場人物それぞれの気持ちがわかって納得感みたいのが得られた気がします。
私はちょっとさつ子みたいなところがあるかな…
子どもに対して、周りと違うことで孤立しちゃうのではないか、と変に心配してしまう。多様性や個性を尊重するって、聞こえは良いけど、それをしっかり理解するって難しい。
ただ理解出来ないにしても、否定や批判するのは良くないなって思います。多様性って言葉にうまく付き合えるようになれば、色んな人がもっと生きやすい世界になると思います。
ドレスを作ってるシーンは良かったです。映画化してほしい(予定あるのかな?)作品です。
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性別や役割にとらわれないで、と言われても、まったく自由に思うままに――とは、なかなかできないものじゃないかと思う。性別や役割によって与えられる意識が、自分を支えるものになっていることだってあるから。
だけど殊更に脱却をうたうわけではなく、ただ「これが好き」「これは嫌」という気持ちを大切に扱ってくれるところが、この物語のやわらかな心地よさを生んでいるのかなと思う。
「わからなくて、おもしろい。わからないことに触れるということ。似たもの同士で「わかるわかる」と言い合うより、そのほうが楽しい。」
「いろんなことを「かわいい」のせいにするのはやめよう。――新しく選び直そう。わたしを「元気にするもの」を。」
黒田が損得抜きに友人の全さんを養っているのは、他人には理解しがたく、また一人前になりきれない原因であるとも思われている。が、黒田は「ただ、待っているだけなのだ」という。やさしい言葉をかけてやるわけでも、浮上しない全さんの背中を押してやるわけでもない。でも、待つというのは認めているということでもあるんだな、と思う。その人の人生を。今の状態を。きっとまた歩き出すんだということを。
なんて大きな愛なんだ、黒田!
そんな彼に清澄がかける言葉もしみた。
清澄の同級生、くるみちゃんの趣味、"石"が"水"とつながったシーンもとても良かった。パズルがカチッとハマったような。
「すごいやろ、水の力って」
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青く瑞々しい表紙を裏切らない、真っ直ぐで清々しい小説だった。
章ごとに語り手が変わるのが、まるで糸の色彩が重なっていくようで、
物語のラストは縫い上がった繊細で力強い刺繍の完成を見守ったような読後感が気持ちよかった。
第1章「みなも」は、刺繍が好きな男子高校生・清澄の目線で紡がれるのだが、ナツイチ企画では声優の神谷浩史さんが担当している。なんとも清澄のイメージにピッタリすぎるのでナツイチの帯を是非ともゲットして朗読でも楽しんで欲しい!
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誰にでも好きなものに好きと言う自由がある
それを否定していい理由なんてない
それは自分にも
好きは嫌いにもなり得る
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やり遂げたなぁ。姉の結婚式のドレスを縫うのが始まりだったけど、こんなに話の先が伸びたとは 嬉しいし読んで良かった。幼稚園の巾着袋の思い入れが大きさも丁度いいからの理由でお母さんの勝手な想像するおばあちゃんが作ったからの嫉妬はやっぱり嫉妬だけだった。お互いの意見を擦り合わせて行く過程も好きだし、お母さんは話を聞かないでどうして勝手に話を進める、それはお母さんの勝手な考えで自分のじゃないとズバリいう所が好き 黒田さんの回が出てきてへっといぶかったけど、黒田さんも全も父親だったのねって事 4冊目の寺司はるな
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短編集なのに内容は長編なタイプ。とある家族にフォーカスしてて、一人一人の短編だけど一冊の本として全て繋がってる。各章もそれぞれ涙ぐむ、前向きになれるお話。
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正確に書くと星4.5。
まず、ストーリーがすごく面白い。自分があまり知らないところを題材にしているというのもそうだけれど、ちゃんとテーマがあったり、つくりがしっかりしているところがすごくよかった。
そして寺地さんの作品ではお馴染みの、ひとの生きづらさも入っていて、そしてちゃんと救いがあって、とても面白かった。
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男なのに、女らしく、母親だから、という価値観に疑問を感じない育てられ方をされていると思う自分。きっと周りの人を傷つけているんだろうと思う。多様性を大事に、とは思うけれどなかなか実感が持てないし湧かない。
「自分の『普通の高校生』のイメージに当てはまる人間だけが健全なのか。」
刺さったフレーズでした。
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2023/07/23
一時SNSでこの本の写真や読んだ報告を多く目にしていて気になっていたところ書店で文庫化されていることを知って購入し読んでみました。
解説にも書いてあったけど、裁縫を趣味としている主人公の清澄とその家族の話…というと早い気がします。
清澄の姉が結婚することを機に、姉のドレスを作ると言い出す清澄ですがそのことについて祖母や母、姉の結婚相手や父親、父親の友人など周りの人たちがどう考えているのかということが視点の移り変わる話で構成されています。
タイトルがまず柔らかいし、このタイトルは主人公の清澄や姉の名前とも深く繋がっていることがこの本を読み進めていてストーリーが繋がっていく感覚を楽しめる要素になっていると思います。
また、男らしさ、女らしさという古い概念とその狭間を生きる主人公たちの葛藤や周りの人々の考えの変化などもあわせてストーリーに練り込まれているのでそうした側面からも読み進めてみても面白いのかも知れません。
自分は単純にいい話だなーと思って読みました。
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小さい頃から、「女の子なんだから」と家族や学校や周りの人から当たり前に言われて育ち、知らないうちに自分自身も、それらしくあろうと行動したり、物事の選択をしてきたように思う。
だけど、本当に自分がしたいこと、好きなこと、熱中できることが、「らしさ」とは違うときに、それを主張することは、これまで抱いてきた劣等感に近い感情を周りに知られるような、とても勇気がいること。本人だけの勇気だけでなく、周りの応援してくれたり理解してくれる大人の存在が必要。
また、お姉ちゃんがヒラヒラ、ふわふわのデザイン、リボンに対する苦手さに向き合い苦しんでいるときに、お父さんがその苦手さを尊重し、何がいいかを考えてドレスを作り、弟がそのドレスに想いを込めて刺繍を施し、一枚のドレスを作りあげたところに感動した。