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短編7話。どの話も優しい誠実な文章で最後になるほどなとうるるとくる。それぞれの話の主人公は一生懸命生きようとする姿が誠実に描かれている。挫折感があったり不幸な過去を背負ったりしているが、爽やかな余韻を残す話だったと思う。【月夜のディナー】で叔母に育てられた裕輔の「ありがとう、僕のおかあさん」、【結い言】で「この帯は倉嶋さんの手で奥様に戻されるのが一番いい」とまみが倉嶋さんの柩に入れた場面が印象的。【テンの手】で話は出来すぎ感があるけどテンと晃平の友情に感激した。表題作【波風】も爽やかな終わり方だった。
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どの話も辛く、悲しく、切ないけれど、最後にぽっと心が暖かくなる(*^^*)これは人前で読んだらアカンやつ(T-T)
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7話からなる短編集である。
どれもこれも、心に沁み込む小説であった。
「波風」
大学病院で、働く主人公加藤朋子が、友人からの誘いで、沖縄旅行に一緒に行くのだが・・
友人の美樹は、以前プロポーズされた男が、診療所の医師兼稼業のトウモロコシ栽培をしているのに 会いに来たのだ。
何もいらないから、子どもを欲しいとも考えたと、朋子にうち開ける。
そこにいた彼の伊良皆は、昔 言葉少ないプロポーズであり、美樹は、その誠実さを把握することが出来なかった。
旅行から 帰った美樹は、吹っ切れたようで、新しい生活を実家で、向かえている。
「鬼灯」
父親が、自殺して、母は、2人の娘を育てた、
そして、ははの再婚相手は、母の手術の時に、浅草寺の鬼灯を5鉢 持って病院へ現れる。
7月9.10日の鬼灯市は、四万六千日分のお参りに相当する日の鬼灯。
その義父 上原孝造の生い立ちと、母のほろほろと自分の幸せが、こぼれていく様の話をする。
なぜか、頼りない男の語り話が、母との縁を感じてしまう。
「月夜のディナー」
母の再婚相手の義父は、連れ子の2人に虐待をするのだが、母には、安住の家が、必要なのか?義父に逆う事はしない。
当時11歳の華絵と6歳の裕輔は、母と義父との子供が出来てから、辛い思いをして、家出する。
そして動物園で働く、未婚の昌子おばさんの所で、一緒に住み大きくなっていく。
反抗期で、憎まれ口ばかりの裕輔が、結婚するのだが、・・・・
一番 母親になってくれていたのは、おばさんだった。
「テンの手」
素晴らしい野球選手になれると期待されていた阿部典文 通称テンが、家での事故で、右手を切断することに、・・・・友人の吉田晃平は、そのテンの夢を叶えて行くのだが、・・・・
神様は、非情でもあるがごとく、テンあの世へと。
テンの「俺の軌跡」を晃平が、辿る事に。
「結い言」
着付け教室ヘ80歳と思われる小柄な男性 倉嶋が、習いに来る。
はじめの違和感が、皆にあったのだが、少しづつ、その熱心さに皆 共に習うのだが、そのことは、施設に入った妻に着物を着せてやりたいが、ためであった。
「真昼の月」
老人ホームで、ガンの末期の横澤さんへの面会に綺麗な女性が、・・・
だが、横澤さんには、息子しかいないはずなのに・・・
最後に面会の女性が、髪を切り、化粧を落とす。
そこには、横澤さんの最愛の息子が。
自分が、死ぬとき、誰に一番会いたいのか?と自問してしまった。
「デンジソウ」
夫の不倫で離婚した桜井奈緒。
京都の整形外科医院で、働くのだが、そこは、過酷な仕事場でもあった。
教えてくれる看護助手の四方さんも、院長からの指示で、してはいけない処置をしていたのだ。
新聞記者の森川は、3人の子持ちであるが、妻に死別されて、落ち込んでいた事など、奈緒にうち開け、こころ開いていく。
そして、四方さんから、四葉のクローバーに似ているデンジソウを新居へと手にした奈緒だが、・・・・
森川氏の思いを受け止めたみたいで、最後は、いい方向へ・・・と、願う気持ちになった。
最後の吉田伸子氏の解説を読んで、「アルコールランプの炎のような人」と、言う言葉に共感を持った。
そして、作者が、大学を操業して、新聞社勤め、そして留学してから、看護学校へ。
やはり、色んな体験からあふれた作品だったのだと確信した次第である。
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小さな笑みを積み重ね幸せに生きたいものですが、人生はそう思う様にはいかない。
この七つの短編も、大きな『波風』が立った家族・夫婦・親友の物語。決して腐らず、諦めず一歩を踏み出す人々。爽やかな勇気と安堵感をもらえました。
デビューするきっかけとなった、第四十回日本文学賞選奨作でもある『結い言』が収録されています。
期間は十日間の着付け教室で出逢った年老いた男性、倉嶋さんの凛としたたたずまいに女性たちは「アルコールランプの炎のような人だ」と称し魅せられます。
「みんな、倉嶋さんへの最後の言葉は「さようなら」ではなく、「ありがとう」だった。私もまた、喉の奥でそう呟いていた。」
果たして私は人生最後周りの人達に「ありがとう」と言ってもらえる生き方をしているのだろうかと、居住まいを正したくなる美しいお話でした。
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普段、あまり短編集は読まないけど、この作品は良かった。特に『テンの手』が感動した。短編は全体的に、感動して涙を流すほどではなかったが、じんわりと余韻を残してくれる感じで心地よかった。藤岡さんの他の作品も読んでいきたい。
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初読みの作家だったが、泣きのツボを知っている人だと感じた。重い内容でも爽やかな雰囲気を各話纏っていて涙腺を刺激するうまさに感心。波風から鬼灯、そして月夜のディナーまでの流れはすごい好きで完璧。
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初読みの作家さんの良さげな短編を読んでみようシリーズ第〇弾。
思ったより良かった。
読みやすい。
女性向けの作品が多いかな。
「波風」
5年振りにあった友人の一生に一度の頼みごととは。
「鬼灯」
病に倒れた母の再婚相手は風采の上がらぬ男だったが。
「月夜のディナー」
弟の結婚式前夜のディナーで家族が集まり。
「テンの手」
幼馴染であり将来を嘱望される天才高校生ピッチャーとバッテリーを組む男は。
「結い言」
女性用着付け教室に現れた只一人の高齢男性。
「真昼の月」
老人ホームに面会に来た美女。
「デンジソウ」
離婚して10年振りの社会復帰。整形外科医院で看護助手として働くのだが。
いずれも胸にじわんと来る家族や友人の物語。
いろいろな経験を経ている作者で、看護専門学校も出ているので医療関係の話が多い。
一話完結のドラマになんかしたら良さそう。
一番良かったのは「月夜のディナー」。30ページほどの短編ではあるが危険です。人目のあるところで読むのはお勧めできません。
次いで「結い言」。こちらは最も短く25ページほど。じんわりと笑顔になれる。
逆に最も長く100ページ近くある「テンの手」は、まったく評価できない。何が書きたかったんだろう、とさえ思った。
これは完全に私見ですし、異論もあるでしょうが、女性は男性を主人公にしたものは書かない方がいいと思う。特に一人称で書く場合は難しいでしょう。読んでいると妙な違和感を覚えます。同様に、男性作者は女性を主人公にしたものは難しいんじゃないかな。
「テンの手」も男同士の物語でした。
「真昼の月」も主人公は男。
どちらも正直良くなかった。
それ以外の女性を主人公にした作品はどれも素晴らしかったのにとても残念です。
「月夜のディナー」も弟の開いたディナーを姉目線で語っているからこその良さがありました。
「風が強く吹いている」三浦しおん著。
「バッテリー」あさのあつこ著。
などの有名作品も私には違和感を感じていました。
どうしても異性の世界の作品を書きたいなら、女性を主人公に据えておいて、その女性の目から見た話しにするとか。または三人称視点で群像ものにするとか。なんらかの工夫をして欲しいな、と思いました。
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大好きな藤岡さんの短編集。月夜のディナー、鬼灯、結い言がこの順番どおり良かったです。次は長編を読みます。
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毎日一話ずつのんびり読んだ。先が気になるけどきっとハッピーエンドなんだろうな、そう自然と思える気持ちの良い作品だった。心に波風が立つけれど穏やかなそんな本でした。
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どの作品の登場人物も誠実で芯のある強さを持っていて、まっすぐに生きる姿に元気をもらえた。鬼灯、月夜のディナー、テンの手、結い言が特に好み。
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普遍的な物語。見えないだけで周りにありふれてる誰かの日常なのだな、と思った。すごい衝撃的なことはわたしの中には残らなかったので星は3にしておきます。
「テンの手」と「月夜のディナー」は泣いてしまったし、他の作品も繊細だったんだけど、わたしにはまだ早かったかな…。