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おもちゃ作家・児童書作家さらにはストーリーテラーとして活躍する筆者(わたしにとってはおはなし迷路の作者としていちばんおなじみ、子らはおかべりかさんの絵がついた「はしれカネイノチ」の作者といえばいちばんピンとくるかな?)が、自分の息子に3歳から10歳まで毎年一回のインタビューを続けてまとめた本。おもしろくてあっというまに読み終えた。迷子になったときの心境や教科書についての意見など、筆者も「勉強になる」とうなりながら聞いていたが、なるほどと学ぶことの多いインタビューになっていて、保育者としての勉強もした人だけあって話を聞く距離間や受け止め方がうまいし、本にするにあたっても子ども(当事者)への配慮を第一にしているのもさすが。この体験を振り返って著者が得た感慨(人間の人生とことばについて)は私自身のぼんやりもっていた気持ちともよく合っていて、このように共有してもらえたのはありがたいことだった。
それにしても、もっとはやくこの本にであっていたら、わたしも子ら3人のインタビューをしておけたのにと悔やまれる。そのときどきの発言はなるべく記録するようには心がけていたけれど、こういうスタイルは考えられなかった…
単行本は1996年、岩波書店「今ここに生きる子ども」シリーズの一冊として出て、2000年に新潮OH!文庫入。
今回、再編集+「ちくま文庫のためのあとがき」を書き下ろして再文庫化。
新潮OH!文庫に入ったときには当時中学生の頃の、今回は37歳(!)になった隆くんの近況をしることができ、それがまた味わい深い。
読み終えて、自分の中にあるこどもの部分が活性化したような…人生の折り返しを過ぎた私自身がこの先なにをめざして日々をすごしていきたいのか、あらためて考えずにはいられなくなった。
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初版は26年前。
この本は内容は覚えていなかったが、おそらく一度読んだことがある。
子どもとの会話の内容に特別突飛なものはないので、今読んでも印象に残る話題はない。
2000年に文庫化されているが、2022年に再編集して、ちくま文庫から再文庫化された。
ちくま文庫のためのあとがきが15ページ程あり、40歳近くなった子供たちの様子が書かれている。
親父からインタビューを受けた子どもの隆は、自然を相手にする仕事(ネイチャーガイド)をしている。
高3の時、環境系学科のある大学を探していたが、アウトドアで働く者を養成する専門学校があるのを知り、机上の知識より実践だと専門学校を選択している。
隆の2歳上の姉は高校の時韓国に興味を持ち、韓国語が学べる都内の学校より現地に行くのが良いと考え韓国に渡り、韓国語を習得するとソウル大学に入学する。
現地に行って若者が使う今の言葉を身につけることは意味があり、通訳も翻訳もできるようになっている。
本の内容よりも、2人の子ども達が "実践主義" で逞しく成長していることに感心した。
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三歳の子どもは「字が読めなくて、今いる所がわからなくて、今がいつかもわかんなくって、それでもやってける」というところで感動した。私もそうだったのか。子どもを育てた経験の無い私はエウレカ。インタビュー中に括弧書きで親の所感を述べているのはうるさく感じた。
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杉山亮著『子どものことを子どもにきく:「うちの子」へのインタビュー8年間の記録』(ちくま文庫)
2022.11発行
2023.3.13読了
本書は、おもちゃ作家であり児童書作家でもある杉山亮氏が、年に1回、息子の隆さんにインタビューした記録である。隆さんの3歳から10歳までの8年間の成長の記録が収められている。
本書の刊行は1996年で、隆さんは現在38歳、長野県でネイチャーガイドをしているそうだ。随分と古い本だと思われるかもしれないが、古い本だからこそ、今読む価値があるといえる。なぜなら、現在の隆さんの近況と照らし合わせながら、過去を振り返ることができるからだ。
読んでみると、隆さんは父親の影響をかなり受けている。
父親である杉山亮氏には放浪癖があり、隆さんはそんな父親の背中を見て育ってきた。隆さんは、8歳の時点で、「ぼく、旅にでたいなあ。一人でどこまでも歩いて行ってみたい。」と発言しており、この頃から現在の隆さんの予兆が垣間見える。「あとがき」で隆さんの後日談が語られているが、中学生のときにはすでに行く当てのない野宿旅を敢行している(しかも、親の承諾なしに!)。
杉山亮氏の教育方針は、「夢のある人間に育ってほしい」だそうだ。しかし、これは他人の子どもには言えても、自分の息子に言うのは難しい。自分の息子が「進学をやめてミュージシャンになる」と言い出したら、普通の親は否定するだろう。この点、杉山亮氏は「親は協力者でもあるが、かべでもある」と述べている。冒険に出ようとする息子を応援しつつも、一通りの社会のルールや価値基準は伝える義務があるという立場だ。だが、もともと学歴や安定を気にするタイプの親ではないので、その壁はかなり低いと見える。むしろ、乗り越えやすいように、わざわざ低く作られているようにも見える(悪い意味ではなく)。
しかし、だからといって、杉山亮氏が決して子どもに甘いというわけでもなく、「自分の仕事は自分でしなさい」という厳しいエールも送っている。
私が本書で強く思ったのは、結局、子どもに「夢のある人間に育ってほしい」と願うなら、父親である自分自身が「夢のある人間」にならなければならない、ということである。本当に強くそう思った。
深く、肝に銘じようと思う。
URL:https://id.ndl.go.jp/bib/032465955
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どの子もそうなのだろうが、言葉は喋れるようになったけれど、論理的ではなく支離滅裂。そのくらいの時期が一番面白い。我が子が話せるようになったら、記録してみたいなと思った。
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後書まで含めて良かった。
ちなみに、2歳半の娘にインタビューすると、中々会話が成り立たなかった。
3歳の頃の記憶から朧げに持ってて…とか、後書では高校時代に自転車で旅に出てたり、30代後半になってネイチャーガイドになってたりと、とても良かった。
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年に1回の息子さんへのインタビュー。3歳から10歳まで。文字も時間も場所もわからない世界で生きている3歳。迷子体験を語る5歳。教科書を語る9歳。誘導せず大人の立場を利用せず子どもと対話すること。どれもおもしろい。大人になってネイチャーガイドになった息子さん。人の根っこってきっと子どもの頃に作られる。邪魔はしたくない。伸びたいように伸びたらいいと思う。
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いい。
子供の過ぎ去っていく時をつかまえたいというのは、多くの親の願いに違いない。
ある人は写真魔に、ある人は日記魔になるが、杉山さんはインタビュアーになった。しかも年一回。
この絶妙な特別感が、まずいい。
インタビュイーたる息子さんは、日常から一ミリくらい浮いた気分で、つきあったのだろう。
聞く、聞かれる、つきあってくれよ、つきあってあげるよ、というほんの少しだけ不均衡な関係が、いい。
しかし聞くがわ、何も特別なことを聞き出さない。
あくまでも日常の延長に、ちょっとだけ面白いことが出てきたらめっけもん、くらいの思い。
「子供ならではの視点で」という類書は結構あるが、その中でときどき感じる「無用な特別視の臭み」が、本書には皆無。
それもこれも、インタビュアーの内心がときどき、(あ、要らないことを聞いたかな)とか(この質問は答えにくいね)とか開陳され、ここが実にいいのだ。
たかしも、あきらも、その場そのものも、好きになってしまう。
私も子と話していて、(あ、無駄に教育効果を期待した言い方しちゃったな)とか(あ、困らせちゃったな)とか、たまに思う。が、すぐ忘れてしまう。何度も反省しては忘れて、記憶すら薄れてしまう。
そのうちに子は、得て、失って、変わっていき、それが喜ばしいと同時に寂しい。
いずれ寂しい胸に、子の記憶がポッと灯ってほしいが、その手助けに、この本がなってくれそう。
赤江珠緒が「たまむすび」にて、子に習い事をさせたいとかこうなってほしいとか躍起になってしまう気持ちもあるが、そもそも生まれてきたこと自体が凄いのにそれを忘れてしまっているから、子の将来にプラスになりたいという親の気持ちが、実は子に「おまえはいまマイナスなのだ」という推しつけになってしまう、というアンビバレンスについて語っていたことがある。もっと上手い言い方だったが。
私は明石家さんまって別に好きでもなんでもないが、「生きてるだけで丸儲け」という言葉を教えてくれただけでもありがたい。
また文庫あとがきにて、息子たる隆さんの思春期についての記述もあり、これも実にいいのだ。
私はインドア派の陰性な気質だが、一見陽性に見える人もベクトルは異なれど同種の業を思春期に越えたのだろうと、思った。
この本を読まなければネイチャーガイドなんて仕事を知ることもなかった、というか敢えて避けていた。
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父親が息子に年に1回インタビューをする―3歳から10歳になる子どもの成長をとらえた新鮮な試み。1年ごとに新しい価値観と言葉を獲得していく過程をこれほど豊かに切り取った記録があるだろうか。意表をつく受け答えは驚きと笑いの連続。知る人ぞ知る子育てエッセイが待望の復刊。ちくま文庫化に際し、刊行から20年以上を経て、著者と息子・隆さんの現在と当時を語る「あとがき」を収録。
目次
■はじめに
■Ⅰ 八年間のインタビュー
●1 “三歳の隆さん”神を語る ― 一九八九年六月
●2 “四歳の隆さん”仕事を語る ― 一九九〇年五月
●3 “五歳の隆さん”迷えるときを語る ― 一九九一年六月
●4 “六歳の隆さん”保育園を語る ― 一九九二年六月
●5 “七歳の隆さん”お金を語る ― 一九九三年六月
●6 “八歳の隆さん”スポーツを語る ― 一九九四年六月
●7 “九歳の隆さん”教科書を語る ― 一九九五年六月
●8 “一〇歳の隆さん”来た道をふりかえる ― 一九九六年六月
■Ⅱ 子どもと対話する意味 ― インタビューをして考えたこと
●1 聖地サールナートで考えたこと
●2 子どもはブッダに似ている
●3 子どもインタビューのすすめ
●4 インタビューの勘どころ
■あとがき
■新潮OH!文庫のためのあとがき
■ちくま文庫のためのあとがき
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第100回アワヒニビブリオバトル「テーマ設定なし」で紹介された本です。ハイブリッド開催。チャンプ本。
2023.6.10
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児童文学作家が、自分の息子にインタビュー。
3歳から10歳まで、年に1回父が息子にインタビューしたものを雑誌に掲載していた。子の定点観測みたいだった。子どもの成長がわかると同時に、親も成長させられていることに気づく。あとがきに、20年後の息子の姿も。らしく成長したのだ、と感じた。
ちょっと、椎名誠の「岳物語」を連想した。
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自分の子どもの3歳から10歳までの8年間のインタビューを本にまとめている。子どもらしい発言が面白くすらすら読める。
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親と子、大人と子どもの理想的な関係がここにあった。自分の子どもが小さい時に読みたかった。子どもとの対話を記録するっていいなと思った。
内容も否定するでもなく、考えを押し付けるでもなく、会話を楽しんでいる様子が読んでいて楽しかった。
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父親である著者が、自分の息子に話を聞く。最初は3歳のときから最後は10歳のときまで、毎年1回、合計で8回のインタビューの記録。
子どもに対する著者の姿勢には共感できることが多い。「甘くするとなめられる」などと思っている人は論外として、「子どもと対等な立場で」と考えている人にとっても、それを実践することは容易ではない。というか原則的には無理だし、まして父親ともなれば必ず権力勾配は生まれてしまうのだが、それでも本書を参考に良い親子関係を模索することはとてもすばらしいことだと思う。
❝ また、これは大人と子どもの関係論を考える際のあまりに大きな落とし穴ではないかと思うが、ぼくたちは子どもや教育のことを考えるのにまず子どもに聞くということをどうしてこんなにもしてこなかったのだろう。
子どもについて研究している人の本を読んだり、子どもと一緒にいる機会の多い教育者や保育者の話をきくことで子どもがわかるような気がしていたものだ。❞
(p.204)
以前、地元地域で子どもの遊び場イベント事業に参加していたときに、これと同じことを私も感じた。イベントまで何度か繰り返した会議に、そこで遊ぶだろう子どもが参加したことは一度もなかった。私たちは、子どものことについては、子どもに教えてもらう姿勢をもっと大事にしたほうが良いだろう。
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こどもに聞いているスタンスがとても柔和で面白い。だからこそ子どもも語れるのだろうと思う。
私は保育者なのでこういった柔和な語りにとても引かれてしまう。