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ノンフィクションにはあまり手が出なかったが、
多重人格に興味があったこともあり読んでみた。
当時、幼い女の子を誘拐し自宅で殺害、その遺体をビデオ撮影したり、肉を食べたり、あげくには遺体を焼却してその小さな骨を家族のもとに段ボールで送りつけたりと、残虐このうえない手口で世間(特に小さなこどもをもつ親たち)を震え上がらせた宮崎勤事件。
オタクの象徴と言われた「宮崎さんちの勤クン」の頭の中が、いかなる構造になっているかものすごく知りたかった。
「精神鑑定書」は、供述に沿って書かれているのでいたって淡々としていて、だいたい想像通りの内容だったが、それに基づく精神鑑定がまっぷたつに分かれたこと、その理由がこの本の骨となっている。
すなわち、
1.宮崎勤は多重人格者である。したがって責任は問えない。
2.多重人格という病気は存在しない。宮崎勤の犯罪は、性格上の歪みによるものなので十分に責任を問える。
精神鑑定の権威が、このふたつの意見で相対してしまい、双方譲らず、結果的に精神鑑定はかなり長い時間を費やして二度行われたことになる。
ノンフィクションだからこそのリアリティに興奮しながら読んだものの、再度、読みたいとは思わない。
精神鑑定の権威っていっても、結局は自分の言いたいことだけ言って見たいものだけ見るというのは、常人と変わらないわけね。