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第1章 ビジネスケアラーの新・常識
常識1:介護で仕事を辞めたら、再就職できず、再就職できても年収は男性4割、女性5割減少
常識2:介護の負担額は平均月7万~8万円、想定している介護期間は平均14年
常識3:介護を理由に仕事を辞めたとしても、介護の負担は逆に増える
常識4:「介護離職は親孝行」ではない、「ビジネスケアラーは親不孝」でもない
常識5:離職前に「誰にも相談しなかった」が約半数、離職する人は介護に関する知識不足
常識6:仕事がうまくいっていないときに「親の介護」を言い訳に離職するのは危険
常識7:親と同居で「離婚」「認知症」のリスク増。同居すると受けられない介護サービスも
常識8:介護で虐待しやすいのは息子か夫で、同居するなど常時接触のパターンが多い
常識9:身体介護をしなければ仕事と両立できる可能性が高まる
常識10:介護は1人で抱え込まず、チームでやるのが原則
ある介護の研究を行う研究者によれば「介護とは、家族と介護サービスのプロによるチーム戦」とのことです。ビジネスケアラーとして仕事と介護の両立に成功している15名のケースの追跡からわかったのは、優れたマネジャーは、仕事で培ったその能力を用いて、上手に介護の負担を分散していたというのです。
実際にこの研究者が観察したのは、次のようなことでした。
(1)介護者は、家族と介護サービスで構成されたチームのマネジャーであるという意識を持つこと。現実に、日々のビジネスにおいて、マネジメント経験がある人のほうが「仕事と介護の両立」に成功している。逆に言えば、介護経験は、マネジメントのトレーニングにもなる。
(2)介護とはマネジメントであると理解し、介護に関わる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を把握し、それぞれの資源を成長させること。「ヒト」であれば、介護を支えるための新たな人脈を築き、それを効率的に維持・活用すること。「モノ」であれば、介護負担を軽減させる商品・サービスなどを活用すること。「カネ」であれば、様々な介護の制度を理解して無駄な出費をおさえ、必要なサービスをよりうまく使うこと。そして「情報」は、介護全体を俯瞰して考えられるような良質なものにアクセスし、学ぶこと。
(3)企業のサポートが必要。企業が、働く介護者のニーズを把握すること。介護に関して相談できる職場の雰囲気を醸成していくこと。ただし、ビジネスパーソンにとって、自分が介護役割を担っている現実はカミングアウトしにくいことを理解する必要がある。デリケートな課題であり、ここに対応するには、介護の専門家としての旧来の介護相談窓口では不十分。仕事と介護の両立を支援できる、外部の両立支援アドバイザーなどが必要。
第2章 仕事と介護はこう両立させる
方法1:介護職(介護のプロ)に人脈を作る
方法2:家族会に参加する
方法3:職場の支援制度と仕事環境の改善に参加する
第3章 介護と肯定的に向き合う
指針1:介護とは何かを問い続ける
まず、自立とは、誰にも頼ることなく生きられる状態のことではありません。これが人��を不幸にする決定的な誤解です。
東京大学准教授の熊谷晋一郎氏(小児科医)は、ご自身の障害とともに生きる人生を通して、真の自立とは、その人が依存する先が複数に分散されており、ただ一つの依存先に隷属(奴隷化)している状態から自由であることだと述べています。
しかし介護には、周辺症状をコントロールするという大事な命題が残されています。高齢者にもなると、何らかの病を抱えることも多くなってきます。そうした場面では、中核症状に向かう医療よりもむしろ、周辺症状を扱う介護こそが重要になってくるのです。
指針2:親と自分についての理解を深める
▪️BPSD(Behavioral and Psychorogical Symptoms of Dementia)認知症が原因である行動上の障害
①易刺激性:ちょっとしたこと(刺激)で、不機嫌になる
②精神障害の症状の要素が加わる
③不安、同じ質問の繰り返し、うつ病など感情障害が関わる
④感情がなくなる、食行動異常など、アパシーと呼ばれる症状
指針3:人生に選択肢がある状態を維持する
身寄りのない高齢者であっても、介護を受けながら、自分らしく暮らしている人も少なからずいる