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老いた老夫婦の家族とその周辺を巡る連作短編集
以下、公式のあらすじ
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「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ」。
突然かかってきた、妹からの電話。
両親の老いに直面して戸惑う姉妹と、それぞれの家族。
認知症の母と、かつて横暴だった父……。
別れの手前にある、かすかな光を描く長編小説。
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認知症になったサトミと、夫の猛夫
その家族や関係者の女性5人の視点で描かれる連作短編集
猛夫は本業の理容師の傍ら様々な商売に手を出しては借金を重ね、家族に対して横暴な態度を振る舞ってきた
そんな両親とは駆け落ち同然に結婚し、今は子どもたちも巣立って夫婦二人の生活になった長女の智代
智代の夫の弟(55歳)と結婚する事になった28歳の陽紅(ようこ)
金銭的に苦しい生活ながら、物凄く優しい夫がいる次女の乃理
猛夫とサトミが旅先で出会ったサックス奏者の紀和(きわ)
サトミの姉で、娘二人とは疎遠な登美子
それぞれの立場での考えや感情に同意できる部分が多数
智代は空の巣症候群は感じていないようだけど、本当にそうなのかはわからないかな
実体験として、今まで一緒に暮らしていた家族が巣立つという経験は中々に寂しい気持ちもあった
巣立ちそのものは喜ばしい事なんだけど、それと同時に不安や心配する気持ちの方が大きかったからなぁ
まぁ、結局はその後にまた戻ってきたり家族そのものの形態が変わったりしたわけだけれども
私は親との確執なんてものはないけど、前よりは実家に帰省する機会は減った
毎年年末年始は実家で過ごしていたけど、コロナ禍で帰れなかった事もあり、別に帰らなくてもいいという認識になってしまった面もある
田舎の結婚事情
55歳で独身の男って、もう一生独身で過ごせばいいんじゃないですかねぇ
そして田舎特有の情報の早さ
あと、お見合いでまともに会話すらした事がないのに結婚することになるという状況
今どきこんな事あるのかねぇ?
もしかして、田舎ならまだリアルにあり得るのだろうか?
でも、お見合いってむしろ現代にこそ合っている結婚システムなのではなかろうか
お互いの条件が整っていれば、別に恋愛感情の有無なんて関係ないような結婚している人が結構いそうな気がする
それで結局は結婚前に抱いていた幻想とのギャップで離婚する人も増えているんでしょうけどね
何やかんや言って、この夫婦はいい感じに仮面夫婦を続けていけば普通に暮らしていけると思うんだけど
子供ができたとして、涼介は普通に受け入れると思うし
となると、陽紅さんがどういう選択をするかという問題なんだけど、この結婚生活を手放すようには思えないんだけどなぁ……
他のエピソードでもこの後の展開に言及されていないあたりがちょっと不安
乃理さんのところが一番身にしみたかな
苦しい生活ながらも、何につけても優しい夫
しかし、両親の面倒の��題のストレスからアルコールにに手を出してしまうという状況
何と言うか、この閉塞感わかるわー
現状の問題と解決の希望がありつつも上手くいかない現状
後のエピソードを読む限り、結局両親は実家に戻っているし
この生活は上手くいかなかったって事なのでしょうねぇ
両親と縁を薄くした姉とは違って自分にはその役目があると自覚しているし、母に頻繁に連絡をしているという行動にも移しているし、でも周囲は自分の事を助けてくれないというのは辛いよなぁ
紀和は唯一、家族の親族ではない立場
他人だから言える、言ってしまった事
うーん、やはり猛夫に対してはダメ男としか思えないなぁ……
でも、いざとなったら自分にも猛夫と共通した部分があるかもと想い返してしまい、自己嫌悪に陥るあ
一番最後、サトミの姉の登美子
自分の娘二人のうち一人は行方知れず、もう一人には絶縁宣言を告げられる
ある意味で私に一番近いのかもしれない
「産みっぱなしの放し飼い」と表される子育てだったようだけど
それは子供視点であって、登美子からしてみればもっと違ったものだった可能性もある
私自身、下の娘とは離れて暮らしているし、ほとんど会っていないので、後にどんな事を言われても仕方がないとは思っている
そんな親子関係と比べられるのが姉のサトミの家族なわけだけれども
今までの家族関係に区切りをつけることで新たな道が開ける事ってありますからね
タイトルの「家族じまい」は「お終い」ではなく「仕舞い」の意味らしいですし
終わるのではなく、今までの関係を一旦締めるという機会は必要なのかもしれない
あと、仕舞うというよりは、家族の形態が変化する過渡期なだけなんだよね
口ではどんな事言っても親子の関係ってそう簡単には切り離せないものなのではなかろうか
血の繋がりあるからこその甘えや意地もあり
だからこそ適切な選択肢を選べなかったりドツボにはまったりね
どこの家庭にもリアルに起きそうな出来事だと思った
一番印象に残ったセリフは
「お互い元気で死にましょう」かな
私自身、いつ何が起こってもおかしくないわけで
死ぬ寸前まで元気でいられるような生き方がいいなとは思う
この本は読む人の状況によって感想が変わりそうだなぁ
親の面倒を看る子の立場
子供に面倒をかける可能性の立場
それぞれどこに自分を重ねるかによる
私の場合はどちらも可能性があると思って読んだわけだけれども
実際問題、両親の事とか自分の事とかリアルに想像してしまった
うちの両親は幸いにして二人とも未だに健康でいるけど、いつどちらかが介護が必要になってもおかしくない
もしそうなったらどうなるのか?
兄弟三人の中で私だけ特に遠方に住んでいるけど、兄二人も実家の近くにいるわけでもなし
そして家族と暮らしていないのは私だけという状況なわけで
もしそうなったらどうなるかはわからないなぁ
あと、自分が面倒をかける状況になったとして
今のところ上の子は成人しているけど、面倒をかけたくない
となると、やはり選べる選択肢は限られてくるよなぁ
などと考えて結構気分が落ち込んだ
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介護の入り口の現実。
身につまされすぎてどの登場人物にも共感と同情と批判と許容とがないまぜになったなんとも言えない感情がわく。
さて、自分が親に対してどうするのか。どうしたいのか。自分はどうされたいのか。向き合わずに歳をとるのはもう逃げでしかない。
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それぞれの心象の表現が秀逸だ。
家族なんてこんなもんだと現実を突きつけられる。
親子の関係、夫婦の関係、結局他人同士で皆自分のことしか考えていない。
表面上はうまくいってるように見える家族でも、本当に分かり合えているわけではない。
他人同士だからどこかに折り合いをつけて生きていくしかないのだ。
これは、うまく折り合いがつけられなかった家族の話だ。
みんなが本音を言いだしたらこうなるというサンプルのようだ。