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#10代の脳とうまくつきあう
#非認知能力
#森口佑介
#ちくまプリマー新書
#YA
#読了
わかりやすすぎなくて良い。非認知能力が大事なのはわかるが、こうすれば、こうなるというようなものは信じないほうがいいのかもしれないと最近思っていたので大変興味深かった。 新書面白い!
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タイトルをちょっと読み間違えたかもしれない。大人が10代の子たちとどう付き合っていけばよいのか、そう受けとめていた。しかし、内容的には、若者が、自分の脳とどう付き合うか、というものであった。プリマー新書なんだから当たり前か。自分のことだけれど、自分でよく分からないとか、自分ではうまくコントロールできないとか、ということがあり得る。そういうときにちょっと俯瞰して見てみることで、自分あるいは友人や親ともうまく付き合っていけるようになるのかもしれない。まあ、だいたい読んでいて感じるのは、30年間10代前半の子どもたちと接していて、感じてきたことは間違っていなかったなあということ。ただ、本書で著者は、直接的にではないが、目的をもってそれに向けて努力することの大切さを説いているように思えるし、自分もずっとそう言ってきたのだが、最近、目的よりも今が楽しい方が大事ではないかと思い出している。その直接の原因は、塾を辞めていく生徒が増えているということ。成績云々もあるが結局は楽しくないから続かない。人間、楽しいことは続けられるし、周りの人にも伝染していく(森毅)。そのことをより実感するようになっている。何かのために我慢するというのがそもそも成り立たない。我慢するのが大事だとずっと思ってきたが、だいたい親の世代も我慢できなくなっているのに、子どもに我慢しろと言えない。ということで、楽しいを優先しないといけない。若いころはサービス精神旺盛でいろいろとやっていたけれど、もういいか、とついつい思って、非認知能力よりも認知能力を優先して授業をしてしまう。ということではいかんと思って、つい最近、一念発起で、紫カリフラワー液の実験を授業内でやってみた。数学の時間いつも眠そうな顔をしているIくん、ちょっとは目が覚めたかな。
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10代の脳とうまくつきあう ――非認知能力の大事な役割 (ちくまプリマー新書 433)
非認知能力とは、勉強ができるという意味での頭の良さや賢さと対比して使われる言葉で、国内でもここ10年ほどで教育・保育関係者や行政、ビジネスなどで使われるようになってきました。
本書では、非認知能力のうち、比較的研究結果が集まっている5つの力について述べていきます。
第1章 非認知能力とは
従来から指摘されてきたのは、10代は、アイデンティティの形成の時期という点です。アイデンティティとは、突き詰めれば、自分とは何かということです。10代はこの問題に向き合い、友達とは違う自分らしさを追い求め、自分を形成していく時期です。
これ以外に、最近の研究から、10代の特徴が2つ指摘されています。1 つは、衝動的になりやすいという点です。
最近の研究からわかってきた10代のもう1 つの特徴は、友達に対して強く反応しやすいということです。
人間は、生まれて数年程度で、他者の表情や動きをある程度理解できるようになるのですが、10代では社会脳領域といわれる、このような他者の出すシグナルに対して反応する脳領域が著しく成長します。
まとめると、10代の心の変化として、自分について考える、衝動的になりやすい、 他者のシグナルに強く反応する、という3 点が挙げられます。
認知能力とは、早く問題を解いたり、与えられた情報から思考を膨らませたりする能力です。学力や仕事を遂行するために大事な能力であることがわかると思います。「認知能力イコール学力」とする人もいます。
厳密にいえば、認知能力は、頭の良さだけを指すものではありません。認知という言葉は、本来的には、世界を知るという意味です。特に心理学や認知科学と呼ばれる研究分野では、世界を知るためのプロセス、たとえば、見たり聞いたり、覚えたりする一連の流れを指します。
非認知能力とは、「認知能力イコール頭の良さ」としたときのものであり、頭の良さ以外の能力ということになります。課外活動の場においては、頭が良いだけではうまくいきません。こういう場において特に必要になってくるカ、そういうものが非認知能力だと思っていただけるとわかりやすいと思います。
学校の中で、友達づきあいや部活動などの課外活動において必要になってくる力とはどういうものでしょうか。様々な候補があると思いますが、経済協力開発機構という国際機関が提案している3 種類の力について説明していきたいと思います。それは、筆者なりの表現になりますが、「目標を達成するカ」、「自分に向き合うカ」、「他人とつきあうカ」です。
目標を達成する力:実行機能(自制心)、粘り強さ、やる気
他人とつきあう力:感情知性、向社会的行動
感情を調整する力:自己効力感、自尊心
日本だけではなく、世界的に、特に教育現場や子どもの支援にかかわるような現場で非認知能力は強い関心を集めています。
その理由として、2つの大きな理由をあげてみたいと思います。
1つは、 人生の幸福度に直結する可能性があるということです。
もう1つの重要な点は、教育や支援によって変えることができるかもしれないという点です。
第2章 欲求を制御し必要な行動を選ぶカ
実行機能は、目標を達成するために必要なスキルです。目標にも色々とありますが、実行機能における目標は、比較的短期の目標です。たとえば、宿題を終わらせることとか、今日一日甘いものを食べないことなどが目標になります。
思考の実行機能には、さらに3 つの能力が含まれます。「作業記憶」「抑制機能」「頭の切り替え」の3つです・
「作業記憶」とは、ある情報を短時間の間に覚えること、そして必要に応じてその情報を変換する能力のことです。
次の「抑制機能」については研究上いくつかの意味合いがあります。集中力と直結するも意味での抑制機能は、目の前にあるもののうち、一部のものにだけ目を向けて、他のものを無視するような能力のことを指します。
「頭の切り替え」は、状況の変化に応じてある行動から別の行動に切り替えたり、思考を切り替えたりする能力です。
次に、感情の実行機能は、様々な欲求を制御して目標を達成するための能力です。
感情の実行機能は、人間関係や問題行動に関連することが知られています。つまり、感情の実行機能が高い人は、人間関係が良好だったり、他人に暴力をふるうなどの問題行動が少なかったりするのです。
感情の実行機能は、単純化すると、この報酬系脳領域と、報酬系領域の働きを調整する外側前頭前野を中心とした脳領域の2 つの領域のバランスで成り立っています。
実行機能そのものを鍛えることは簡単ではありません。時間もかかりますし、継続する必要もあります。そのため、 運動や音楽などを継続してもらいつつ、筆者がお勧めしたいのは、実行機能をいつ、どの場面で使うかを考えて、 うまく使うということです。
第3章 情熱をもって努力できる粘り強さ
粘り強さと最も関連が深い心理学概念として、グリットというものがあります。グリツトは、目標に向けて努力を続ける力であり、その情熱も含む概念です。
この能力には、大きく2 つの特徴があります。1 つは、実行機能と同様に、目標を達成するために必要だという点です。
もう1 つは、その情熱や動機づけまでも含むということです。単に目標を立てるだけではなく、その目標への情熱が大事だということになります。
粘り強さと実行機能の違いの1つは、目標のレベルです。粘り強さは長期的な大きな目標を指すことが多く、実行機能は日常的な目標を指すことが多いようです。
一方、実行機能の場合は、このような構造、特に大きな目標と小さな目標のつながりがありません。日常的な目標、たとえば、ダイエットのためにケーキをがまんすることなどを達成するために必要な能力です。
実行機能は、したいこと、もしくは、ついしてしまうことを制御して、目標を達成する能力です。
一方で粘り強さは、やりたくないことや、やるのに苦労することを淡々とするために.アクセルを踏むような能力です。
近年、粘り強さが、パーソナリティ(性格) を構成する誠実性というものと類似しているという指摘がなされているため、誠実さのようなものだと考えるとイメージが湧きやすいかもしれません。
マインドセットには大きく2 つの種類があります。成長マインドセットと固定マインドセットです。成長マインドセツトとは、知能などの能力や性格が成長する、変化するという考え方です。
一方、固定マインドセットは、能力や性格が固定されたものであり、変化しないものだと考えることです。
粘り強さを自分で伸すためにはどうしたらいいでしょうか。
まず、粘り強さを発揮できる状況を作る必要があります。その第一歩は、長期的な目標を見つけることです。長期的な目標を達成するために勉強や練習に粘り強く打ち込めるようになります。ですので、勉強の先にある目標、練習の先にある目標、そういうものを見つけましょう。
そして、大きな目標が見つかったら、その目標を実現可能な小さな目標に細分化しましょう。実現不可能な目標のために頑張ることは難しいものです。それぞれの目標をどのようにしたら達成できるかを考え、その目標のために頑張りましょう。
粘り強さは実行機能とは異なること、粘り強さにも全般的な粘り強さと個別の粘り強さがあること
を紹介しました。また、目標をはっきりさせたり、成長マインドセットを持ったりすることによって、 粘り強くなる可能性を示しました。
第4章 課題を自分は解決できるという自信
自己効力感には、大きく、特定の内容に限定されない一般性自己効力感と、特定の内容についての自己効力感の2 つに分かれます。一般性自己効力感は、全般的にどのような課題や行動であれ自信がある、という傾向があるかどうかを測定します。一般性自己効力感の質問紙は商用になっているため具体的な質問内容について書くのは控えますが、どのような課題に対しても自信がある人を思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれません。
領域固有の自己効力感が大事なのは、それが上がることで、一般性自己効力感も上がる可能性があるという点です。1つのことに自信が持てることで、その自信が他のことにも波及するという経験をしたことがあるかもしれません。何か1つでも 自己効力感を持つことが大事になりそうですね。
自分自身について肯定的に感じられるかどうかは、自分にとって重要な領域でうまくやれるかどうかという 、その領域における目標を達成する能力に対する自信に大きく影響されるのです。
自己効力感はどのように生じるのでしょうか。この点はとても気になるところだと思いますが、理論上、4 つの要因が考えられています。
まず、当たり前ですが、「成功体験」です
「他人の説得」も自己効力感を生じさせると考えられています。
他にも「代理経験」というのもあり、これは自分と同じような立場の他人の成功体験が、自分の自己効力感を生じさせてくれることを指します。
最後に、「感情の状態や身体感覚を自覚すること」も自己効力感と関係するようです。
このように、主要な要素としてこの4つが自己効力感に影響を与えると考えられています。ただ、後で述べるように、どの要素が大事かは、 自己効力感の領域にもよります。
学力と学力に関する自己効力感は互いに影響を及ぼしあうようです。つまり、学力が高いと自己効力感が高まり、その結果勉強を頑張ってさらに学力が高まるということです。
メタ分析からも、このような結論はおおむね支持されています 。ただ、影響力としては、学力の高さが学力に関する自己効力感を生じさせる影響のほうが大きいようです。学力に関する自己効力感も学力に影響を及ぼしますが、その影響はそれほど大きくありません。
学力については、教育心理学や教育現場では、自己調整学習という教育プログラムが注目されています。自己調整学習と関連して、生徒の自己評価が学力に関する自己効力感を高める可能性があります。自己評価とは、簡潔にいえば、自分の学習過程や学習成果を自分で評価することです。
最近のメタ分析によると、特に、自分の成續を記録して残すという自分のモニタリングが、学力に関する自己効力感を高めるために有効であるようです。
運動に関しては、同じくらいの実力の人が.フまくいくことを見たり、以前の自分と現在の自分を比較して、成長した点を認めたりすることが大事なようです。学力に関しては、自分の成績を定期的に振り返ったりすることが大事ということになります。
第5章 自分と他者の感情を理解するカ
感情知性は、自分や他人の感情をわかったり、区別したりして、日々の行いに活かすような力のことを指すこととします。ここで「日々の行いに活かす」と書いていますが、この部分が重要です。感情を理解するだけではなく、それをうまく行動
につなげるのです。それによって、自分や他人とつきあうことができます。
感情知性は大きく4 つの側面から構成されます。1 つ目は感情を知覚すること、2 つ目は感情を利用すること、3 つ目は感情を理解すること、4 つ目は感情を管理すること。
1つ目の感情を知覚するというのは、自分の感情や他人の感情を正しく把握したり、自分の感情を他者に対して的確に表現したりする能力のことを指します。
2つ目の感情を利用することは、 感情を生み出し、何らかの形で思考に役立てる能力です。
3つ目の感情を理解することは、ある感情と別の感情が組み合わさったときにどのような感情が生じるのかを理解する能力や、ある感情を抱く時、その原因は何なのか、また、ある感情がどういう結果につながるかなどを推測したりする能力です。
最後に、感情を管理することは、状況に応じて自分の感情をコントロールしたり、他人の感情に状況に合わせて働きかけたりする能力です。
感情知性には実行機能と類似した部分があるので、実行機能を鍛えることで自分の感情とうまくつきあえるようになるということです。
本章では、他人とつきあう力の1つである感情知性についてみてきました。感情知性には、感情を知覚すること、感情を利用すること、感情を理解すること、感情を管理することという4つの側面があり、それぞれの側面が学校生活に大事な役割を果たします。
第6章 共感に基っく親切な行動
親切な行為のことを、心理学では向社会的行動と呼びます。もう少し厳密に定義すると、向社会的行動は、他者に利益���もたらす意図に基づく自発的行動です。ポイントは、自分のためではなく、他者に利益をもたらすということと、人にお願いされてやるのではなく、自発的にやるという点です。
共感と同情は似ているのですが、共感はあくまで友達と同じ気持ちを自分も抱くことであるのに対して、同情は、他人に向けられた感情なのです。
この同情を抱くと、他人の苦痛を取り除くために、何かできないかということになり、向社会的行動につながるのです
一時的に不利益になるにもかかわらず、あなたが友達に親切にするのはなぜか。それは、お互い様であるという点に尽きます。
親切な人は、学力が高まりやすいということも知られています。一見すると、親切な行いと学力の間には関係があるようには思えません。なぜ、親切な人の学力は高まりやすいのでしょうか。これには、2 つの理由があると考えられています。
1つは、親切な人は、学校や塾などにおいて、教師や講師と良好な関係を築きやすいという点です。もう1 つは、親切な人は、 友達からも教えてもらいやすいという点です。
10代になると、一時的に、向社会的な行動をする回数が減ります 。これは、日本のみならず、諸外国でもあてはまるようです。実行機能のところでも述べたように、10代という時期は脳の再編成の時期ですし、誰しも悪ぶったり、社会のルールを窮屈に感じたりするようになる時期なので、これは致し方ない部分もあるかもしれませ
ん。
向社会的行動に影響を与えるのは、やはり、家庭の環境です。親と子の情愛的な絆のことを、心理学ではアタッチメントといいますが、このアタッチメントが幼少期からしっかりと形成されている場合、その子どもは向社会的行動をとりやすいことが知られています。
第7章 10代のための非認知能力
非認知能力として、具体的に大きく3種類の能力について紹介しました。まず、目標を達成する力です。2 つ目は、自分に向き合う力です。3つ目は、他人とつきあう力です
これらの3つの力は、10代で直面する問題に対して、とても大事な役割を果たします。
それらの問題の1つは、10代は衝動的になりやすいということです。
2つ目は、自分について考えるということです。
3つ目の問題は、他者のシグナルに反応しすぎてしまうという問題です。
パーソナリティとは、いわゆる性格のことであ
り、心理学でも最も研究が盛んな分野の1つです。
非認知能力以外で、筆者が個人的に10代で身につけることが重要だと考える3つのカについて触れておきましょう。金融リテラシー、性に関する知識、そしてAIなどの情報技術を使いこなす能力です。
自分が10代のころを思い返してみると、 本書で扱ったような能力のうち、粘り強さはそれなりにあったように思いますが、感情知性は著しく低く、実行機能や向社会的行動もいまいちだったように思います。
それでも、40代半ばに差し掛かってもそれなりに楽しく生きています。すべての非認知能力が高い必要はなく、凸凹があって当然だと思います。あまり深刻に考えず、お読みいただければと思います。
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データや文献などをもとに、10代から寄せられた質問に答えていくという方式。説得力はあるが、結局、以前から一般的に言われていたことを実行しなさいということであった。
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(新書・文庫)『10代の脳とうまくつきあう』森口佑介著
2023/9/23付日本経済新聞 朝刊
■『10代の脳とうまくつきあう』森口佑介著 脳の変化が著しい10代に必要なのは、学力に代表される認知能力だけではないという。発達心理学の専門家が、目標に向けて努力する粘り強さ、自他の感情を理解する力など、10代で伸ばしたい非認知能力を解説する。国内外の研究成果を紹介しつつ、「勉強に集中できない」「友達の気持ちが分からない」など中高生から寄せられた疑問に専門用語の使用をなるべく抑えるかたちで答えた。(ちくまプリマー新書・946円)
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向会的行動・自己効力感といった心理学用語を分かりやすい ケースで学ぶことができる。学生が心理学や脳科学に興味を持つ 一冊 になりそうです。
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非認知能力とは、目標を達成する力、他人と付き合う力、感情を調整する力の3つであるとし、それを身につけるためにどのようにするか、10代にわかりやすく示している。
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実行機能の代表的研究者が当事者にQ&A形式で語る「非認知能力」のおはなし。まず1章と7章を読んで,気になるトピックがあれば2~6章を読んでいくといいのでは。高校生対象の出前講座とかで出て来そうなQ。いや出前講座とかでQが出ることはあまりないな。10代らしい悩みは発達に伴う自分の自由意志では統制できない理由があることで少しほっとするかも。だからといって倫理的な免罪符ではない。うまくやろうとするよりも,失敗して悶絶して成功して歓喜してまた失敗して…。自分がいる環境(人,時代,いろいろ)の縁が大きいな。