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私がメアリを知ったのは『メアリー・アニングの冒険』(朝日選書)で、それがとても面白く、こんな面白いものがなんで絶版状態なのかと不満に思っているのだけれど、それが事実を追いかけているのに対し、こちらは物語仕立てなので、まあ別物。作者の思いや、今日的目線が、かなり含まれ、肉付けされている。
メアリがどうこうと言う以上に、母娘もの、思春期女子もの、としてよく出来ているのでは。
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メアリー・アニングの話を絵本で初めて読んだとき、たしか、「なんだ化石を売っていたのか。ちょっと残念だな」という程度の認識しかなかったような気がする。
でも、この本を読むと頭をガツンガツンなぐられるというか、「そうやっていかなきゃ、暮らして行けなかったんだよっっ!!」ということが痛いほどわかる。というかわからされる。かつてのアマチュアスポーツと同様、科学の研究にのめりこむことができたのは、アカデミズムの世界に受けいれられる家柄ももちろんだけど、何より経済的に余裕があって、困窮していないということなんだ。
メアリは正反対で、貧しい家具職人の娘。しかも父親は化石探しの際の事故がもとで大けがをし、さらに肺病になって長患いのすえに死んでしまう。
メアリはそういう厳しいなかで、けなげに耐えるのではなく、あちこちに怒りやいら立ちをぶつけながら、きわめてトゲだらけのイバラのように道を切りひらいていく。
そんなに貧しくても、困窮していても、化石を掘り、大昔の物言わぬ骨を見つけ出したかったメアリ。教育を受けられなくても科学というものに心引かれ、知性を追い求めたメアリ。名誉も賞賛も受けられなくても、それでも化石に惹かれ続けたメアリ。ものすごくとんがっててものすごく純粋な知的好奇心が、むき出しに描かれていて、胸がふるえた。
父親の死、母の早産、赤ん坊の死、メアリの初潮など、生と死のどろどろした部分も手加減しないで描かれている。そうすることで、身分から言っても、経済的余裕からも、性別も、学問とはほどとおいメアリが、世界で初めてイクチオサウルスの全身骨格を掘りだしたことのすごさがひしひしと伝わってくる。前半は、とんがりまくったメアリと格闘するようなガッツが必要なんだけど、それだけの甲斐がある本だった。
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19世紀初め、イギリスで魚竜の化石を発掘した少女の物語。
幼いながら冴えた知性とまっすぐな気性、そして化石への強い好奇心を持つメアリから目が離せなかった。
稲妻のような激しさから、勇気をもらえる一冊。
とにかく、メアリの強烈な個性が痛快だった。
実在した女性の少女時代だけを書いているけれど、恋愛についてはほぼない。化石発掘を通じて階級の異なる人々と友情を育む様子は楽しいけれど、ちょっと苦さも感じる。
父から化石との付き合い方・楽しさを学び、完璧に理解されているわけではないけど兄や母と協力して発掘作業を進めた点は家族の有り様としておもしろい。
関わる全ての人が良い人ではないけど、要所要所で尊敬し合える人との出会いがあったことが救いになっている。
甘さはないけど少女小説だと思うし、科学への興味をキラキラと描いていたのが良い。
どんなことにも、興味を持っていいんだ。
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メアリ・アニングの化石メインの伝記物語かと読み始めましたが、当時のイギリスで身分が低く貧しく女の子であることの怒りとやるせなさと、それでも科学者であること化石への焦げつくような愛情を描いたものでした。
最初はメアリの激しさが読んでいて辛かったのですが、そうあらずにいられなかった時代と家庭の背景を考えると、折れず諦めずまわりに見向きもしない凄みに圧倒されました。
地質学や古生物学の世界でメアリの名も功績も埋もれませんでした
〇何カ所か読み進めにくい箇所、文脈がわかりにくい箇所があった メアリのぶっきらぼうな語り口もあるかと思うのですが…
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化石を発見する少女、メアリのお話。
時代的な背景も厳しく、兄弟が、幼い時になくなったり、食べるものにも不自由する。
メアリは、海岸で恐竜の頭蓋骨を見つけ、その体も見つけ出してしまう。
ヘンリーや、エリザベスという素敵な友達もいて、化石を探し続けるメアリ。
自分の好きなことを追いかけるお話、素敵でした。
訳者あとがきで、イギリスでは、科学技術に関わる女性が少なく、日本も同じ問題をかかえている。
児童書の分類なので、ぜひぜひ子供たちに読んでほしいと思った。
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入院生活16冊目。
これはメアリ・アニングがさまざまな生と死、出会いと別れを経験しながら自分だけの目標を見つけて人間的にも成長していく物語であり、サクセスストーリーの類いであるかもしれない。
しかし、彼女が置かれている境遇の恵まれなさ、(それは彼女だけではないのだけれども)、差別や偏見で抑圧されることに慣れそれを受け入れて(諦めて)人生を送る周囲の人々とは対称的に、真っ向から立ち向かっていく姿に衝撃を受けた。彼女がやっとの思いで発見したイクチオサウルスが、知性のない金持ちの領主にあっけなく買い叩かれた場面では彼女の報われない思いや虚脱に共感して、しばらくの間、先を読み進めることができなかった。
約200年経った現代日本では、他人の生死に触れる機会はほとんどなく、核家族化やSNSの普及により人間関係は希薄化している。しかし、搾取や差別の構造は昔からほとんど変わっていないのではないだろうか。生まれや所属によって、自分以外の何者かによってその先の人生がある程度決められてはいないだろうか。見えない壁、見えない天井があり、「持ってない」人間がその先にすすめないようになっていないだろうか。
「どうしていつも赤ちゃんと結婚と、男の人の言いなりになって生きるって話になるわけ?」「わたしの未来には、そういう生き方しかないの?どうして?」というメアリの叫びは、現代でもこだましている。
「持たない」人間は幸せになれないかもしれない。しかし、満足を見つけることはできるかもしれない。
勇敢に、そして稲妻のように熾烈に人生に立ち向かったメアリのように自分の人生の目標を見つけて、満足を見つけるために生きたいと願う。
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すごくワクワクしてドキドキして、泣ける話だった。ちょっと訳語らしい読みにくい部分もあったけど、途中から気にならなくなった。色々悔しくて残念なことも多く、それに強く共感することもあって、涙が止まらない。
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世界初の魚竜を発掘した少女メアリ・アニングの物語
赤ん坊の頃、落雷に直撃されるも生き延び、父親に「ライトニング・メアリ」と呼ばれた少女メアリ・アニング。彼女が情熱を注いだのは、化石発掘だった。経済的な苦境、周囲の冷たい目、父親の死……あらゆる壁や挫折に屈せず前に進む彼女は、1811年頃、12歳のとき、ついに世界初の魚竜を発掘することに成功する。ぜひ、その興奮と喜びを、メアリといっしょに味わってみてほしい。
「すてきな服とすてきな冒険のどちらかひとつを選べと言われたら、わたしはいつだって迷わず冒険を選ぶ。」
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イギリス人て、メアリ・アニング、好きだよね。
でも、いま手に入る本が減ったのでありがたいです。
小学校もろくすっぽ行けなかったのに(貧乏で)目と頭をよく働かせて、恐竜の完全骨格を初めて発見した女の子の実話です。
2022/11/22 更新
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伝記や評伝ではなく「おはなし」である。著者の想像力が効きすぎたタイプの。
本編は評価外で、あとがきと合わせて星3つの評価とした。以下のような書きざまがとても苦手だから。
・一人称の主人公にときどき著者が憑依する
・ダブスタ構文
本作品には昭和の少女漫画の風情がある。
登場時無敵のヒロイン、男の暴力に腹を立てるが自らも挑発的でめっぽう手が早い。やがて挫折し、不幸な目にあうが、再び無敵になってドヤってエンド。
余談だが、『トワイライト』シリーズを読んだときにもそう感じた。シンクロニシティか、文化の輸出によるものか。
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国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→
https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11522147
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化石発掘の歴史に燦然とその名を残す偉人ライトニング・メアリことメアリ・アニングを題材にした伝奇小説!実際小説のように波瀾万丈なメアリの人生のうち、少女時代から最初に発掘されたイクチオサウルスとの出会いと別れまでを描いた物語だ。
現代人では想像できないような過酷な生活を送るメアリの感情や心情が、痛々しいまでに痛切にリアルに描かれている。まさに雷のようなメアリの鋭さや厳しさや賢しさ、そこに隠された悲しみと傷、それすらも超えていく意志の強さが印象的。最後の簡単な略記の部分によれば幼馴染のヘンリーやエリザベスなど多くの友人や支援者に恵まれたというメアリだがそのカリスマがよく表現されていだと思う。最後まで読み込み、まさしく英雄の勇姿とリアルな姿を見届けた思いだ。