投稿元:
レビューを見る
古事記の研究に青春を賭け、非常勤講師で食いつないできたが、雇い止めという冷たい現実に直面している35歳のポスト・ドクター、瀬川朝彦が主人公の小説。瀬川のゼミ時代の先輩で大学の貴重な資料を持ったまま行方不明になってしまった高齢ポスドクの先輩、小柳博士の動向も物語の鍵となる。
自分も大学時代に歴史学を専攻しており、院生やポスドクの姿もたくさん見てきたので、このテーマには興味をそそられるところがあった。
自分が見てきたことからいうと、文系院生・ポスドクの解像度がやや低いようにも思ったが(院生やポスドクが雑務をこなす学会のことにほとんど触れていないことや、学部時代にはポスドクになって困窮してしまうリスクを考えてもいなかったというような描写など)、文系ポスドクの悲哀ややるせなさがよく描かれていると感じた。また、同時に取り上げられているレンタルフレンド絡みのエピソードも興味深かった。
投稿元:
レビューを見る
切ない。胸が締め付けられる読後でした。額賀さんの描写がリアルで、でも温かみもあって、クビになりつつも救いのあるラストでした。日本という国は色々おかしくて、普通に生きていくだけで精一杯で、職業に好きや、やりがいを言い出すとちょっと歪んでしまう事があるように思います。その犠牲になっているのがこんな貴重な人材なのは勿体なすぎる。けどこれが現実なのも私達は知っているので、とても歯がゆさを伴う読書でもありました。
投稿元:
レビューを見る
『転職の魔王様』のテレビドラマ化も記憶に新しい著者の新刊。今作も仕事・労働・雇用といったテーマ。主人公は年齢的に人生の岐路に立っているポスドク。彼が研究者を引退するか続けるか葛藤する人間ドラマを主軸に、10歳年上の先輩ポスドクの失踪事件ミステリーがスパイス的にまぶされている。研究者って経済的な点から見るとなかなか厳しいのが実態なんだな…スーパーの特売日をカレンダーにメモって食費を削り研究費を確保している描写なんてもう。自分は理系で大学院(修士課程)まで行ってるもののあっさり一般企業に就職した身なので、どこかヒリヒリしながら読んだ。
投稿元:
レビューを見る
学生選書ツアー2023選書図書
【所在・貸出状況を見る】
https://sistlb.sist.ac.jp/opac/search?q=9784163917467
投稿元:
レビューを見る
瀬川は本当にすごく強い人でした。
人生における大きなイベントが重なってどうしようもないとなっていた時でも、前を向こうとする姿にすごく胸を打たれた。
投稿元:
レビューを見る
大学の先生も、色々な種類があって、
研究をしている人は、働き辛さもあり大変なことを知った。
レンタルフレンドのバイトをして、そこでの様々な出会いにも驚きがたくさんあった。
雇止め、ポスドク、という言葉も初めて聞くが、厳しい世の中だと思う。
転職した方が?と、それは悩むと思う。
ずっと夢を追いかけていたい。
でも、お金にならない。生活ができない。
苦しい。研究もお金がかかるし。
小柳先輩は、自分の10年後の姿。
このままずっと苦しいことは、明らかで、苦しい。
大切な研修資料を持って、失踪してしまった小柳先輩。
どこに?
行方がわかり、資料が見つかった時に、グッときた。
この本が出たことにより、大学の研究をしている、お金が必要な人に、政府がお金を回してくれたらいいなぁと思う。
投稿元:
レビューを見る
ポスドクの現状。雇い止め、研究を続けられない。
気づいた時には就職もできない。
厳しい話しでしたが、好きな作家さんの作品ということもあり読みやすかったです。
投稿元:
レビューを見る
青春物語だとばかり…。青春を過ぎた大学で研究をする方のお話し。「ポスドク」
好きなことを追求していくことは、幸せだろうと思いましたがこんなに大変なことだと思わず、途中、読み進めるのが辛くなるほどでした。
でも、額賀澪さんなので、そっかあー…と読了。
時系列が後からわかったので、そうだったんだ。となりますね。
投稿元:
レビューを見る
今の時代自分の夢が何なのか分からない、やりたいことってなんだっけ?という人が多い中自分の夢をみつけそこを突き進んでいっても生活ができない。その研究が何かの役に立たないとその仕事はしてはいけないのかそう思った。けどそれと同時に、世の中は誰かのためになった報酬としてお金を貰うという仕組みができてしまっているのだからこうなってしまうのは仕方の無いことなのかと思ってしまう。
夢ってなんなんだろう。
お金が無いと夢は追いかけられないし夢は夢じゃなくなる。
そうなっていくと人は生きる意味を失うと私は思う。好きなことだけで生きていけないことは十分にわかるけど、それを生かせる何かを作ってあげることは出来ないのか。需要がない仕事は意味が無いことなのか、そう思ってしまう。
政治家だって、世の中を変えたいからなったんでしょ?世の中変えられないならポスドクみたいに生活できないぐらいのお給料しか貰えないよね?この差がおかしいって私は思う。
投稿元:
レビューを見る
自分のやりたいこと、学びたいことをやって、幸せになる人はどれ程いるのだろうか?
お金よりもやりがい、生きがい、なんて言うけれど、実際に未来に希望がもてないほどに余裕が無くなってしまう人はどれ程いるのだろうか?
どんな状況になっても優しくなりたい。
心には刺さりますが、世知辛いなと感じてしまいます。
投稿元:
レビューを見る
爽やか青春モノが多い額賀澪さんが、社会問題化している大学非常勤講師について書いたことが気になり選書。
中高生時代は夢を追い続けながら心身共に成長できるけど、大人になってくると現実を見据えないといけない。
夢を追い続けることへの辞め時って、重要なのかな。ちょっと切ない。
諦めないで欲しいけど、諦めなきゃいけない。
世の中、好きを仕事にしている人がどれくらいいるのだろう。
投稿元:
レビューを見る
【青春をクビになって】
またまた額賀澪さんの作品。
主人公の瀬川朝彦は、大学時代だけでなく、そのまま院、そして非常勤講師をしながら古事記を研究し続ける35歳のポスドク。こんな呼び方があることも知りませんでした。
20代の頃、誰もが自分の将来を疑うことなく突き進んだはず。
朝彦もそんな一人でした。
でも現実は厳しい。
非常勤講師であるがために、収入や生活は安定とは程遠いもの。そしてとうとう雇い止め…。
そして気がついたら35歳。
いや、まだ自分はまだ出来る、でもこのままでいいのか、ひょっとしたら手遅れなのか?と自問自答する朝彦。
そんなところから物語は始まります。
登場人物ですが、大学時代に一緒に研究をした仲間で、今は違う道を選び「レンタルフレンド」を派遣する会社を立ち上げてその経営者としてそこそこ成功している栗山さん。
そして10歳ほど先輩で古事記の研究をし続ける小柳さん。
その小柳さんの面倒を見続ける大学教授の貫地谷先生。
それぞれの立場から物語が描かれていて、最後まで一気に読んでしまえる、そして泣ける、そんな物語です。
色々な生き方があるんだなぁ。
そして、それぞれの場所で喜びや辛さがあるんだなぁ。
就職氷河期に遭遇したら自分自身はどうだったんだろうなぁ。
私は今でも夢を持って日々の仕事をしていますが、それ自体が幸せなことなんだなと思わされました。
など考えさせられる著書でした。
投稿元:
レビューを見る
博士に進もうか考えてる自分にとって、とても考えさせられる内容だった。
高学歴になるにつれて、社会で生きていくのが難しくなってしまうなんて、明日を生きる不安を抱えながら生活するなんて、思いもしなかった。
「自分がしたいこと」と「現実」。これらに上手く折り合いをつけていかないといけないと思った。
投稿元:
レビューを見る
瀬川は、35歳のポスト・ドクター。
古事記の研究に明け暮れ、非常勤講師として大学間を渡り歩いてきたが、雇い止めに遭い先の見通しが立たないでいた。
そんな折、ゼミ時代の小柳先輩が、研究室に住み着いてると噂されていた矢先、大学の貴重な古事記全三巻を持ったまま行方不明になった。
アパートは家賃滞納で追い出されたようで、トランクルームを借りていて、そこで寝起きしていた痕跡もあった。
行方不明になる前に緊急連絡先を瀬川の携帯に変更して、レンタル料が未納だった。
小柳の姿が未来の自分のようで、不安は募る。
大学時代からの友人の栗山は、ポスドクから抜け出て起業している。
彼の会社に登録し、レンタルフレンドをしながら将来を考えようとしている最中に小柳が…。
彼は最後まで研究者であり、研究者としての自分を終わらせるために比婆山に登った。
古事記は、きっと瀬川が取りに来るだろうとわかっていたのだろうか…。
研究に携わる者でさえ、講師だけではやっていけず契約という限られた期間の内容であることに今の社会の在り方に何故?という疑問しかない。
何歳までなら夢をみていいのか⁇と問うているようでなんとも辛い。
こういう時代だから…と言えばいいわけではないだろうが、他にことばは見つからない。
投稿元:
レビューを見る
青春をクビになる、の言い方が結構キモ。色々と本歌取りがあるのもいい。トランクルームに住んで亡くなる先輩の話とか身につまされる。