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『罪の声』も、それはそれは、凄かったけど。
何よりも「史実」という強固な裏打ちというか、真にせまる凄みや迫力があったけれど。
この作家に「誘拐」を描かせたら、ちょっと天下一品なのではないだろうか。
物語で描かれる「誘拐」には、ドラマがある。物語がドラマそのものを指していることが多いのだから、当たり前と言ってしまえばその通りだ。
横山秀夫『64』しかり、誘拐という犯罪の特性上、時間との勝負、被害者の主に家族の心模様、そして警察の組織的な捜査の描写によって、おのずと厚みが出る。そして、事件そのものがどんな結末になっても、読む者の心に強く影を残す。
本書は、前代未聞の「二児同時誘拐」が発生し、片方の児童は時を置かず無事保護され、もう一人はなんと3年の時が経ち、自力で保護者の元へ帰ってきたところで事件には幕が降りる。
とはいえ、それはほんの外枠の話だ。この物語の骨格は、「空白の3年間」に何があったのかを、事件発生当時は新米だった定年間際の新聞記者が、再度調べ直す過程で徐々に明らかになっていくところにある。
私は絵画に明るくないので、この物語のもうひとつの大きな要素である、写実画や日本画壇の事情はまったく知らない状態で読んだ。それでもなお、本書を通して、芸術家の孤独や苦悩、表現の奥深さのほんの一端には触れることができたのではないかと思う。
そして、「3年間」という時間の重みや濃密さ、『存在のすべてを』というタイトルの意味や鮮やかな終わり方にため息が出た。しばらく余韻が続きそうだ。
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読み始め、誘拐事件を追うドキュメンタリー風の作品かと思っていたら、徐々に雰囲気が変化していく。
後半からは、タイトルの意味合いが深く伝わってくる。
最後は胸が詰まり涙が流れてきました。
とてもグッとくる良い作品でした。
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表紙の写実絵画「THE-9」とタイトルに惹かれてサイン本を衝動買いしたのですが、塩田さんの作品はこちらが初でした。
この作品の始まりとなる「二児同時誘拐」は、実際に塩田さんが警察関係者に取材して「確かにそれは困る」と言われたとのことで、読者としても冒頭からの緊迫感は忘れられません。
その後、作中で言及されていく「存在」については、各登場人物の人生・物語毎に考えさせられ、涙しました。
相変わらず今の自分に都合良く解釈した感想なのですが、自分で体験して物事を知り、語ることができる人でいたい、そのような人を大切にしたい、そのことの大切さを子供に伝えていきたいと感じました。
便利な世の中になり、更にコロナを経て体感していたことを、この作品で改めて感じました。
そして、ホキ美術館に行って、生の写実絵画を見たいです。
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とても重厚な小説で、読み応えがありました。
20年前の誘拐事件を追う記者と、学生時代の出会いに思いを馳せ行動する画廊の女性の視点で話が展開しますが、登場人物がみな魅力的なので、終始興味をとぎらせることなく読了できました。
やるせない気持ちになる部分もありましたが、最後には人の想いの強さやひたむきさに感動し希望を感じる作品でした。
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空白に描き出されていく事実は
想いが何層にも重なり合って真実を切なく彩る。
そこにある現実を
偽りのない真実を
その存在のすべてを描き切った
胸に迫る社会派ミステリ。
ページを重ねるほどに
塗り重ねた年月が色を変えていき
心眼が切り開く未来が光彩を放ち
心が満ちるようでした。
『罪の声』を読んだ時は衝撃的で
今でも心に残っているけれど
この作品は、胸の奥深く静かなところで
ずっと記憶に熱く焼きついていくだろうと思います。
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面白かった!
ですが、2児同時誘拐の裏に
どんな背景があるのか期待し過ぎた分、
自分には少し物足りなく感じました。
写実画というのが一つキーになっていて
だからこそ真実に近づけたのかなと、、
亮くんと家族との別れのシーンは切なくなりました。
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・写実は目の前の、そこに存在しているものの、ありのままを描く。それは写真ではない。キャンバスの中のものはすべて等価値。
・最後の80ページのためにその前の400ページがある。事件と27年の年月の積み重ねを丁寧に話すのは、この3年のため。
・貴彦のその後がどうなってたかも含め、再読必須(2023/11/25読了)
・立花敦之 誘拐
・ 博之 父
・ 明美 母
・内藤亮 誘拐、如月脩
・ 瞳 母
・吉田悟 瞳の同棲人
・木島茂 祖父、海陽食品社長
・ 塔子 祖母
・三村智也 神奈川県警管理官
・大野 捜査一課長
・中澤洋一
・先崎隆明
・富岡
・真木慎一 警察庁一課長
・門田次郎 大日記者
・下田悦子 大日庶務
・藤島光一
・尾崎康夫 サラ金、吉田悟知人
・野本雅彦 社債事件
・ 貴彦 弟、画家
・ 優美 貴彦妻
・土屋里穂 画商
・ 啓介 父
・三浦奈美 後輩
・磯山恵子 記者、証言者
・岸朔之介 六花
・ 優作 息子
・西尾義明 元福栄社員、証言者
・又吉圭 画家
・黒木充 社債事件
・戸辺敦子 証言者
・橋本孝子 英語塾講師
・中田剛志 里穂ストーカー
・酒井龍男 小樽北星物流社長、絵画コレクター、レインボー土地所有者
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これは塩田さん渾身の1冊だなと、冒頭から鳥肌が立った。
物語は初手からフルスロットル!
横浜で起きた二児同時誘拐事件。
誘拐犯と警察の緊迫した駆け引きに痺れつつ、事件はまさかの思わぬ展開へ…
その後時効を迎えてしまったこの事件の真実を突き止めるため、その事件の担当だった刑事さんと懇意だった新聞記者が事件を振り返って行くのだけれども…
陳腐で内容の無いニュースや情報が溢れる時代に本当に存在した事実は何なのか、上辺だけを撫でて分かった気になっていないか。
誘拐と言う凶悪犯罪。
でもその裏にある人間の物語が1つずつ見えてきて、それぞれの物語が全て繋がった時、泣かずにはいられなかった。
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点と点が結びつき線となる。その線が描くのは人間の罪と悲しみ。
塩田武士、渾身の一冊。慟哭は最後に訪れる。
久しぶりの塩田小説にしびれました。
芸術と犯罪。その線と線を結ぶ人間模様は塩田さんにしか描けない世界。
深みとすごみを増した筆にほれぼれしました。
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いままで読んだ著者の作品の中で一番響いた。
誘拐犯グループの話がもう少し読みたかったかもしれないが、
ラストシーンの余韻も含め、
「もう少し読みたい」と思わせるところで終わるのが巧みなのか。
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圧巻の一言
読み終わったあと、衝撃と感動が一気に押し寄せ、圧倒されました。
様々な情報が簡単に手に入り、ますます便利になる世の中で、本当に大切なものは何か?
そんなことを問いかけられている気がしました。
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未解決の幼児誘拐事件の真犯人に迫る物語と思いきや、人と人が出会い別れても繋がっているような愛に溢れた作品と感じました。
切なくもありますが、心が温まりました。
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「罪の声」以来すごく惹き込まれた作品。
初めは時系列がよくつかめませんでしたが、後半は一気に読了。本屋大賞、とってほしいです。
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前代未聞「二児同時誘拐」の真相に迫る「虚実」の迷宮!真実を追求する記者、現実を描写する画家。
長編でも中だるみせず、複数の視点と時系列から描かれた物語は圧巻でした。
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初めて塩田武士さんの作品を読ませていただきました。
ミステリーや犯人探しをする作品なのかと思っていましたが、読み進めるにつれ、登場人物一人一人の大きな愛を感じました。
自分が目にする情報は、それが全てではなく、たくさんの事実が秘められていて、それは大きな愛に包まれているのかも、と考えさせられました。
とても心に響く作品でした。
ぜひみなさんに読んでほしいです。