投稿元:
レビューを見る
つい先日、著者の講演を聴きに行ったばかりで印象が強かったのもあり、たまたま図書館で目に付いたので読んでみた。
いや~、これは…。
著者の考えは、やや偏りすぎてはいないか?ほんの2年ほど前の連載であるのに、「親は親だから大事にしないと、という人ばかり」「親は子どもに謝らない」「しつけであり虐待ではないと言い張る人ばかり」など、私に言わせれば、そんな親は限られた少数派の認識の低い一部だけだと思うのだが、それがあたかも大多数の親がそうだと言わんばかりの表現。著者がそういう親と対峙する仕事をしているから、そう思うだけなのか?
いやいやいや、現実はもっと、しっかり認識できている親はたくさんいるでしょうよ。
もちろん、著者の言うような、疑問を呈したくなる親も一定数いるのは事実。だから私のような仕事をする人が必要になるのだけれど。
ある箇所では「相手を傷つけたら謝るのが当たり前だが、親子関係はその当たり前から除外されていて、日本のマジョリティはそれを支持している」って、してないわ!ちょっと極端すぎ。読んでもらうための大袈裟な表現なのか?
自己犠牲で耐え忍ぶ母はテレビCMにしかいない、って、今時、CMにだってそんな母親は出てこない。むしろそんな母親像を描いたら炎上するくらいでしょう。
なぜ著者がカウンセリングなど自分の身近でみた母だけを、さもステレオタイプのようにいうのか?ほとんどの母がそうでないことを、なぜ言わないのか?まさかそれを知らないなんてことはあるまい。自分の思い込みで全て書いているとしたら、こんな恐ろしいことはない。
第5章第6章はこんなことばかり書かれていて、ちょっとひどい。こんなに声高に、さも正論かのような書き方、ちょっとひく。あまりに世の中の親を馬鹿にしている。こんなにわからずやばかりじゃないよ、もっとたくさんの親が、ちゃんとわかっているってことを、この人はわかってないのでは。
などと、かなりうがった姿勢で読んでいたが、だんだん連載の月日が経つにつれ、少々趣が違ってきた。
日本社会のペドフィリア的状況、という見立てには全く同意だし、オープンダイアローグや、それに伴うネガティブケイパビリティの必要性についてのくだりは大いに納得共感。
著者が、これまで対応してきたケースの象徴的な架空ケースとしてあげていた、くにさんの母親の介護にまつわるくだりについては、くにさんが、仲間との語りを通して幼少期に得られなかった自己肯定感を高めることができた、というまとめになっていて救われた思い。すべてがすべて、世代間連鎖で受け継がれていくわけではないことを書き記してくれてよかった。
講演で、なかなかにクセの強い人だなと思った通りの著作で、なんだかな、という気にもなったが、まあ読んでよかった、たぶん。