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民俗学を「実践する」とはどういうことか、本書を読んで理解する。
佐渡島が舞台となっているが、都市の地域振興としても学べるもの、参考になるものがたくさんあった。どのようにして、いかなる目的があってあのようなイベントをやる意味があるのか…など。
自分の仕事にも活かせることがあるのではないか、また、自分の元いた職場の人にも読んで欲しいとも思った。
宮本常一は静かで牧歌的なイメージがあったが、かなり行動力も政治力もあった熱烈な人だったんだなと思った。
以下感じたことメモ
主体として見ること、墓
イメージを、自ら再定義
地域で生きると言うことはその場所のよい部分だけを得ることではない。
もともと発展の遅れたところだったのではなく、海上交通から陸上交通中心になったため、島がとりのこされ「離島」が生まれた。
道路整備を陳情する背景に、道路が整備されないから車が入れず人力で運ばなければならない。そしてその仕事は副業的な扱いなので、嫁や女性の仕事とされていた。宮本はそういった光景に衝撃を受け道路整備を訴えた。そこに暮らす人の目線に立って行動したということ。そして道路が整備されて危険にさらされる子供と老人についても言及し、歩車分離を訴えた。
大規模資本による観光開発が国内植民地化と言われるのは、観光資本は自然や文化財を観光資源とするが、それは観光客を引き寄せる「無償の借景」であり…とある。地域の外からきた大規模資本が、自分たちが儲けるためにその地域の資源を食い物にしているということ。そして地元のひとが中心となって、例えば柿の生産を向上させればその金は農民の懐にも入り再生産にも振り分けられる→自分たちの力で島を発展させる それをできるようにするための基礎であるインフラは整備するべきというのが宮本の考え方。
価値の転換 これまで島の中でも条件の悪い土地と思われてきた宿根木の景観が観光客が大勢観にくるようになり、喜んだり自信を持ったりした。ただ観光に来て消費されるというのとは違う、自前の文化で自信をもつようになった例。またその中でも観光客や不便さを厭う住民にも目を向け、一面的なものの見方をしていない。